三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

国産木材の価格問題

2010年09月06日 07時28分40秒 | Weblog





日本の官僚機構というのは、本当に優秀なのだろうか?
先日のアース21の帯広例会では、
カラマツの利用促進という現在の流れを受けて
国産木材の問題を徹底討論してみた。
メンバーには木材販売業者もいて、実態のヒアリングにも適していた。

根本的な問題は、価格問題であることは明白。
なぜ日本国産材は、輸入材に比較して2倍以上も高いのか?
この問題の基本にメスを入れることなく
日本の官僚機構は、これまで在来木造・国産材になど見向きもしなかったのに
「長期優良住宅」政策では、
民間からの提案に対して、国産材の普及促進策をほぼ義務づけしていた。
現状の市場構造からは、国産材は輸入材の2倍の価格差があり、
200万円の補助金は、ヘタをすれば、
その価格アップでほぼ消えてなくなる可能性すらある。
官僚機構の考えでは、善意で解釈すると、市場規模が拡大すれば
そういった価格競争が起きて、
国産材の価格が下がるという図式を想定したのだろうか。

しかし、まず、戦後の国家戦略として
輸出主導による産業育成方針があり、
その結果、円の価値が上昇して内外価格差が生まれ、
原料素材は輸入購買力が高まった、という事実がある。
経済の原則でいえば、同じような価値を持って価格に差があれば
市場は一気に雪崩を打つ。
輸出企業・クルマを先頭とする製造業にとっては
そういう循環の中で、売上を拡大するチャンスは大きかったけれど、
そうでない産業にとって、とくに素材提供型産業にとっては
輸入との戦いはきわめて厳しい競争を強いられる結果になった。
農業や林産業などがこれに相当し、
こういう産業構造ギャップを補正するのに、
政府は、こうした産業に対して、補助金を支給して
延命のための延命、という手法で対応してきた。
国のお金の流れでいえば、ドル債権を巨大に保有しながら、
国内的には財政悪化を招くという構造になる。
高コスト構造ということになる。
しかし、たとえば、日本の賃金レベルとそう違いのない
北欧や北米・カナダなどでは、活発に森林木材を輸出していて
その最大購入先はついこの前までは日本だった。
コストの問題でいえば、人件費ではそう違わないのに、
最終価格では、2倍の開きがついた。
これは、国の木材産業政策がまったく無能だったという証明ではないのか。
林産資源の計画的管理、産業政策が、
ひたすら補助金頼みになって、構造改革が意図されてこなかった。
森林資源は日本国内にあるけれど、
それを利用促進するための政策がまったく準備されていなかった。
スウェーデンに出来たことがなぜ、日本に出来なかったのか。

ことは、計画的伐採の基本になる林道整備から、
森林資源の研究、その利用マニュアル、適材適所の研究、
流通促進のための産業育成計画などなど、
北米北欧の国々に研究に行けば、
すぐにでも解決可能なことばかりではないかと思う。
こういうことを巨大な財政規模を持ちながら、実現できてこなかった。
第一、輸出産業に力点を置くのならば、
それ以上に、国内産業の保護育成、競争力維持発展に
巨大な智恵を投入しなければならないことは自明。
それなのに、カラマツ素材の利用方法ひとつ取っても、
町場の工務店レベルに、すべてぶん投げてきているだけなのが実態なのだ。
カラマツはこういう特性があるから
このように利用するといい、というような基礎的な情報すら
なんの研究成果もないのが実態なんだそうです。
カラマツを外壁に使う場合、どういう塗装がいいのか、
あるいは無塗装の方がいいのか、そういった調査研究もない。
いわんや、森林経営のための林道整備は
日本のような急峻斜面の山に対してどうすべきか、
全体として、コストダウンできる林業経営はどうあるべきか、
まともな研究基礎が存在していないと思われる。
こういう実態を放置して、長期優良住宅先導的モデル事業に
突然、ほぼ義務づけるというのは、
無策の責任を回避するに等しいのではないか。
日本では、官僚機構への信任感情が篤いけれど、
こういう行政責任は、やはり問いかける必要があるのではないか。
いろいろこれから調査してみたいのですが、
そう思えてならない。

<写真はカラマツ2×4、2×6だけで構成された屋根トラス。>







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