三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【前真之氏講演より 住宅問題認識の日独比較】

2017年11月22日 06時58分18秒 | Weblog


きのうは東京から前真之東大准教授が来札され、
夕方からTDKショールームで増改築産業の団体であるJERCO主催の講演会。
ちょうど、Replan本誌での連載記事の進行校正もあって、
事前には当社事務所に来ていただいて情報交換もさせていただけました。
前回の記事から、インターネット上での拡散も始めていますが、
今後とも全国的な発信も心がけて行きたいと考えています。
講演の内容は骨格的には断熱改修のススメというものでしたが、
いつものようにさまざまなデータを活用して気付きを与えていただきました。

わたし的には最近、世界のパッシブハウスの状況について
さまざまな動向や変化が見られるようになっているので、
とくに先生が開示された日独の住宅マーケット比較に強い興味を持ちました。
その開示された情報が上の2点の画像。
人口規模は日本が約1.2億人に対しドイツは8267万人。
おおまかに3:2というくらいの経済規模といえるでしょう。
日本の住宅マーケットは総額で52.3兆円の経済規模。
新築37.4兆円・改修14.9兆円。71%:29%という割合。
一方ドイツでは総額で35.2兆円の経済規模。
そのうち新築は10.7兆円。30%。
改修の方は2つのカテゴリーに分けられ、
・省エネ7.4兆円21%。・改修17.2兆円49%とされていた。
住宅建築総体の経済サイズは52:35と、おおむね人口比に比例する。
日本は、新築偏重の住宅政策であると長年指摘されてきましたが、
ドイツでは政策的誘導処置で、既存住宅改修へのシフトが
強力に働きかけられているということだそうです。
そのプロセスでは新築事業者の倒産といった事態すら進行したとされた。
そういった状況がグラフとしても巨視的に把握できた次第。
このような政策誘導は、住宅への社会的認識の差であるのかも知れません。
日本では「景気対策」として住宅投資が繰り返し活用された結果、
既存住宅の「空き家」が急増を招いている。
空き家率比較では、ドイツは4.5%なのに対して日本は13.5%にも上る。
ドイツでは住宅は社会資産という価値感が強く存在しているので、
「空き家」というものに対する危機意識が非常に強いのだという。
こうした「資産意識」は、「賃貸住宅比率」の差となっても見て取れる。
ドイツが5割を超える率なのに、日本は35%にしかすぎない。
空き家を社会的なムダと強く認識する社会であるということですね。
たしかに賃貸住宅が「空き家」になっていれば、社会としても効率はよくない。
一方で日本は基本的に「使い捨て」文化を許容する社会であるかのよう。
また、とくに「省エネ改修」が一般的改修と区分けして統計されていることも
ドイツの住宅政策のありようを明瞭に伝えてくれる。

こういった流れを踏まえて、集合住宅の省エネ化が
大きなテーマとして浮かび上がってきている状況が見えてきますね。
先生の講演でも、北海道でのマンション断熱改修が取り上げられていました。
いろいろと気付かされる点の大きな講演だったと思います。
あ、いつものようにわたしの画像が「悪の象徴」として紹介されてもおりました(泣)。
先生の例の「電気蓄熱暖房器」撲滅キャンペーン。近々対応予定なんですが、
う〜む、であります(笑)。ま、事実だし、しょがないなぁ・・・。
コメント
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