三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【集合住宅の性能向上にどう手を付けるのか?】

2017年11月03日 08時08分36秒 | Weblog
きのうは北海道の建設部・建築指導課が推進する「きた住まいる」の諮問会議。
ことしも数回の会議に参加することになりました。
わたしはNPO住宅110番というインターネット上での住宅相談サイトを
運営しているので、その立場で、いわばユーザー視線で意見を述べる立場。
昨年までで戸建て住宅についての施策の方向は決まってきたので、
今年度についてはさらに、既存住宅の性能向上その他の問題がテーマ。
とくにそのなかでも「集合住宅・共同住宅」が大テーマで浮かび上がっています。
世界的にも、パッシブハウス運動なども主に戸建て住宅がテーマ。
ドイツでも、既存のレンガ造の集合住宅が圧倒的多数であるけれど
その「高断熱高気密化」は、非常に難しい問題だと、
ドイツの国交省のような省庁の人間からも証言を聞いたことがあります。
ちなみにドイツは圧倒的多数が石造集合住宅であり、木造戸建ては
ごく少数派の金持ちのためのものという市場実態。
既存石造ではそもそも断熱を付加する方法がなかなか開発できない。
ことし初めに高性能な繊維系断熱材が北洲さんから紹介されていましたが、
それもドイツでのレンガ造建築への外断熱というニーズをにらんだもの。
ただし、ドイツでも普及にはまだまだ時間がかかるということでした。
また、集合住宅では「気密測定」がそもそも大変難しいと言われます。
室蘭工大で鎌田紀彦先生の助手を務められていた鈴木大隆氏の
経験談を聞く機会がありましたが、その難しさを述べられていました。
気密確保ができなければ、断熱性向上作戦も得に描いた餅。
また耐震や断熱の性能要件にしても、棟単位での性能なので、
戸建てとは、かなりの相違があって基準の共通仕様化はしにくい現実。
また業界構造として、デベロッパー・設計者・建築業者のどこを対応主体とするか。
まことに数多くの難題が伏魔殿のように立ちはだかっている。

国の住宅施策でも、こういう難しさは同様であり、
たいへん立ち後れているのが現実なのですね。しかし誰もがわかるように、
共同住宅が住性能向上の本丸であることは間違いない。
そういった市場構造に一石を投じる役割が北海道から振られた次第。
なんですが、これまでの諮問会議では以下のような例もあった。
住宅リフォーム、リノベについて国の諮問会議などでは
あまりにも市場の利益代表が多すぎて、会議を開いても
「規制改革」ではないけれど、一歩もその岩盤が破砕できなかったものを
風通しのいい地方政府・北海道では着地点を見出し「北海道R住宅」を生んだ。
いま全国のリノベーション施策の好例としてこの「北海道R住宅」は機能している。
その論議の様子を見学していた国交省の役人さんたちが、
「どうしたら、こういう論議に発展できるのか驚きました」という感想を語っていた。
想像するに、国レベルの諮問会議などでは
論点整理すらしにくいように各利益代表主張が提起されるのだろうと。
改革されないことでの利益があり、それを擁護する岩盤規制固定派がいる。
それに対して地方である北海道ではそういう利益代表がきわめて少数。
一方では産学官の距離感が相対的に近しい関係にある。
それこそユーザー利益ファーストでの論議構築がしやすいし、
また、地方なので現場感覚が論議者相互で共有化されやすい。
きのうも、難題なりに論点が整理・整頓されてもいっていた。
北海道地域は住宅についての「世論」が比較的に深く共感されやすい。
なんといっても、寒冷地としての共通体験に根ざした現実的な解決策を
みんなで論議しやすいという「地域性」がある。
そう、これは寒冷地なりの「資産」であるといえるのではないでしょうか。
コメント
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