ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

写真の秘密

2018-09-17 19:03:33 | 読書
ロジェ・グルニエ『写真の秘密』

 みすず書房の本は、シンプルな装丁のものが多い。

 ロジェ・グルニエ『写真の秘密』も同じで、本を読むことに集中させてくれる。

 表紙にはモノクロの写真。
 三脚にのったクラシカルなカメラをのぞき込む、くわえタバコの男の横顔。
 フィルムカメラの写真を夢中で撮っていたときの気持ちがよみがえってくる。

 でも、エッセイの中に出てくるカメラはどれもとても古く、名前さえ知らない。
 博物館の中に閉じ込められたような気分。

 本を閉じ、表紙を眺めると、タイトルの山吹色が、ちょっとだけ現代に戻してくれる。(2012)

5

2018-09-17 10:44:27 | 読書
佐藤正午『5』




 佐藤正午の文章が好きなのは、いま語っていることが本当は語りたいのではなくて、実は……といった展開が小気味いいからでもある。

 『5』でも、では、何を目指してこの話は進んでいるのか、というのがさっぱり見えてこない楽しさがある。

 そもそも『5』というタイトルが、どういう意味を含んでいるのか想像を巡らさなくてならない。

 あまりにシンプルなタイトルの本の装丁として、高柳雅人氏のデザインは、謎を提示し、その謎を謎のまま残したような印象を与える。
 きっとどこかにデザインの仕掛けがあるに違いない。
 そう感じて、あちこち見たのだが、特に変わったことはないようだ。
 あとは表紙をバリバリ剥がし、背の奥に隠れているかもしれない何かを探すだけだ。

 といっても、この本はミステリーではない。(2011)




帯をはずすと




表紙をはずすと




フランス装の表紙のこんなところにも