ペーター・シュタム『誰もいないホテルで』
表紙の絵を見ていると、とても穏やかで静かな世界を想像する。
牧草地に、ところどころ茂る木々、かすかに見える湖、遥か先に連なる山。
人々が散歩している。
親子、恋人、仲間たち、犬を連れている人や、乳母車を押す母親。
この平和な絵に描かれた人たちが、物語を読み進めるうちに、ささやき出す。
10の短編は、書き手が異なっているのではと思うほど、雰囲気を変える。
似ているのは、どれも危うい縁に立たされている感じがすること。
異質な世界に手を引かれながらも、なんとか現実の世界に踏みとどまる。
言ってはいけなかったひとこと、持たなければ良かった感情。
意識せず、うっかり足を踏み入れてしまう場所はある。
緑豊かな心和む風景の中で、表紙の恋人たちは口論をしているのかもしれない。
イラストは矢吹申彦氏。(2018)
表紙の絵を見ていると、とても穏やかで静かな世界を想像する。
牧草地に、ところどころ茂る木々、かすかに見える湖、遥か先に連なる山。
人々が散歩している。
親子、恋人、仲間たち、犬を連れている人や、乳母車を押す母親。
この平和な絵に描かれた人たちが、物語を読み進めるうちに、ささやき出す。
10の短編は、書き手が異なっているのではと思うほど、雰囲気を変える。
似ているのは、どれも危うい縁に立たされている感じがすること。
異質な世界に手を引かれながらも、なんとか現実の世界に踏みとどまる。
言ってはいけなかったひとこと、持たなければ良かった感情。
意識せず、うっかり足を踏み入れてしまう場所はある。
緑豊かな心和む風景の中で、表紙の恋人たちは口論をしているのかもしれない。
イラストは矢吹申彦氏。(2018)