ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

バイ貝

2018-09-23 21:44:14 | 読書
町田康『バイ貝』

 町田康の小説は、その場の思いつきとリズムで、へらへらと書いているような空気がいい。

 『バイ貝』は、どうでもいいような話だが、なんとなく引き込まれる。
 並べられた言葉は、実は丁寧に選ばれていて、一見破天荒だが、繊細。

 表紙には、筆で描かれたイラストとタイトルが、和綴じの本を模した体裁の中に収まっている。
 丁寧に書かれた文字は読みやすいが、イラストは上手なのかそうでもないのか判断がつかない。

 よく見ると、これは実際に和綴じの本を制作し、それを写真に撮ったようだ。
 全体にとても細かく、手間のかかる作業だろうが、それを感じさせない。
 あえてセンスよくまとめない、その微妙なセンスが、町田康の文章と重なる感じがする。

 装丁は石川絢士氏。(2012)