墨汁をつけた筆を持って 今日は文字を書かずに
ただ 思うにまかせて ぐるぐるぐる・・・・・
本人、結構 気にいった作品となりました。
『ひと筆の祈り』 の タイトルネームの元、
水上卓哉さん(21才)という男性を取りあげていました。
卓哉さんは、麻痺の残る手で絵筆を握ります。
小学校の卒業を控えたある日、
夜道を自転車で走っていた所、
スピード違反の車にはねられたそうです。
事故に遭う以前は、
将来は音楽の道へ進もう、という夢があり、
ピアノや太鼓に情熱を傾け、少年少女合唱団では
好きな歌を伸び伸びと歌う活発な少年だったようです。
しかし、高次脳機能障害をおってからの生活は一変し、
苦しい日々を送ったものの、
子供の頃から習っていた絵の世界に
飛び込む決意をしたということでした。
卓哉さんが高校3年生の時にかいた、
『今、私が思うこと』、という作文には、
彼が絵筆を持った理由が記されていました。
それは、
「なぜ私が美術の道へ進もうと思ったかと言うと
貧しい人や、傷ついた人の心を 私の絵の力で
癒したいからです。自分が事故で苦しんでいるので、
同じ様に苦しんでいる人を助けたいと思ったからです」
というものでした。
映像の中で紹介されていた彼の命の証、とも言える
温かなエネルギーが溢れる油絵は、
私の心の奥にある、深いひだに
じんわり染み渡り、感動の涙が溢れました。
卓哉さんはこの夏、彼の心を捉えた一枚の写真、
教会にたたずむ聖母マリア像の姿を見て
「自分には絵をかくことが出来る。だから今、
東日本大震災で傷ついた東北の人達の為に
この絵を書きたいんだ。
命あることの幸せを大切にしてほしい」
という思いに突き動かされ絵筆を持ちました。
『サンクタ・マリア』~復興~ と名づけられた
完成されたマリア像は清らかで温かで穏やかで・・・・
当に祈りそのものでした。
その絵には、技巧などを超越した神々しい
光のようなものだけが ただキラキラと輝きながら
美しい音色を奏でているように見えました。
ナレーションに、
「 傷ついた誰かを救いたいと 祈りを込めて
キャンバスに向います。
ひと筆にこめた祈りは 人々を幸せへと導きます。」
とありましたが、当に彼のえがくものは見る人の心を
ほぐし、幸せな気持ちにしてくれるものだと感じました。
卓哉さん曰く、
「完成するまでは時間がかかりますけど
完成すると嬉しくて幸せな気分になれるんです。」
卓哉さんの言葉が示すのと同じで、
私も完成した作品を見る時、同じように嬉しくて幸せな
気持ちになります。それはもしかしたら、
自分に無理強いをしたり、苦しんだり、
自分の中に元々無いものを絞り出すようにして
描いているからではなく
頂くインスピレーションにのっとって
ただ 自由に、制限のない中で 伸び伸びと
感じさせられるままに描いているから
なのかもしれません。
【祈り】が込められた卓哉さんの作品を拝見した時、
学生時代、キャンバスに向い油絵を描いた日の
懐かしくて、楽しかった 遠い記憶が不思議と
ふうっと蘇ってきました。そして、私も 油絵で
【祈り】や【希望】をテーマにした作品を
時々描いてみようかな、という思いが
自然に ころころっと こぼれました。
卓哉さんの ピュアな祈りの込められた作品が
傷つき、哀しみに涙している、多くの方々の
ハートに届きますように・・・・・・
私も人とは違っていても、
私にとっての心地良い方法で
愛や希望に基づいたものを
ずっと描き続けていきたいなと、また思いました。