中国民間航空に乗って日本から中国に行くと、中国語、英語、日本語のアナウンスがある。その中国語の最初に何か言うのだが、その最初にいう言葉が初めのうちは判らなかった。
知人に何を言っているのか尋ねたら、「女士們(ニュイシメン)、先生們(シェンションメン)」と言っているのだと教えられた。なるほどと思って、それ以後は聞いても確かにそのように聞こえている。「女士」は女性への敬称、先生は男性への敬称(教師の意味ではない)、「們」は複数を示すから、要するに、英語の「レディース アンド ジェントルメン」の直訳だ。機内の中国語に続く英語のアナウンスの最初は「レディース アンド ジェントルメン」だから対応している。
前に紹介した『漢語いろいろ』(岩波書店)によると「女士」の来歴は非常に古いそうで、孔子の「詩経」に見えていて「女でありながら、学徳すぐれた男性ごときふるまいあるもの」とされているそうだ。「女でありながら・・・男性ごときふるまい」と言うのがいかにも差別的だが、儒教の大御所のことだから仕方がないのか。今では教養ある女性に対する敬称として広く使われているようで「女史」と同義だろう。実際にはもっと広く「ミセス」程度の意味でも使われていて、手紙の宛名には既婚婦人に対しては例えば「李真女士」などと書く。「様」くらいのことだ。中国の女性は結婚しても普通は姓を変えないから、結婚前は「李真小姐(シャオチェ)」で結婚したら「女士」に変えればよいから簡単だ。
女性の社会的地位が低かった中国では、もともと「女士們」というような、まして「先生們」より前に置くような呼びかけはあったのかどうか。おそらく比較的新しい用法ではないだろうか。日本語の直訳は「紳士淑女諸君」か「紳士淑女の皆様」というところだろうが、明治の雰囲気が漂う、いかにも古めかしく肩肘張った表現だし、男性の方を先に置いている。今時このような言い方をすることはないだろう。機内で中国語と英語に整合させようとして「紳士淑女の皆様」などと呼びかけられてはのけ反ってしまう。さすがに「皆様。当機はただいま・・・」のように「皆様」で済ませている。
英語ではもう定型になっているからともかくとして、中国語でももっと簡単に、「皆さん」に相当する「大家(ダアジャ)」でも使えばいいのにとは思うが、それが適当なのかどうかは中国語の知識が貧弱だし、中国の風習にも疎いから何とも言えない。
知人に何を言っているのか尋ねたら、「女士們(ニュイシメン)、先生們(シェンションメン)」と言っているのだと教えられた。なるほどと思って、それ以後は聞いても確かにそのように聞こえている。「女士」は女性への敬称、先生は男性への敬称(教師の意味ではない)、「們」は複数を示すから、要するに、英語の「レディース アンド ジェントルメン」の直訳だ。機内の中国語に続く英語のアナウンスの最初は「レディース アンド ジェントルメン」だから対応している。
前に紹介した『漢語いろいろ』(岩波書店)によると「女士」の来歴は非常に古いそうで、孔子の「詩経」に見えていて「女でありながら、学徳すぐれた男性ごときふるまいあるもの」とされているそうだ。「女でありながら・・・男性ごときふるまい」と言うのがいかにも差別的だが、儒教の大御所のことだから仕方がないのか。今では教養ある女性に対する敬称として広く使われているようで「女史」と同義だろう。実際にはもっと広く「ミセス」程度の意味でも使われていて、手紙の宛名には既婚婦人に対しては例えば「李真女士」などと書く。「様」くらいのことだ。中国の女性は結婚しても普通は姓を変えないから、結婚前は「李真小姐(シャオチェ)」で結婚したら「女士」に変えればよいから簡単だ。
女性の社会的地位が低かった中国では、もともと「女士們」というような、まして「先生們」より前に置くような呼びかけはあったのかどうか。おそらく比較的新しい用法ではないだろうか。日本語の直訳は「紳士淑女諸君」か「紳士淑女の皆様」というところだろうが、明治の雰囲気が漂う、いかにも古めかしく肩肘張った表現だし、男性の方を先に置いている。今時このような言い方をすることはないだろう。機内で中国語と英語に整合させようとして「紳士淑女の皆様」などと呼びかけられてはのけ反ってしまう。さすがに「皆様。当機はただいま・・・」のように「皆様」で済ませている。
英語ではもう定型になっているからともかくとして、中国語でももっと簡単に、「皆さん」に相当する「大家(ダアジャ)」でも使えばいいのにとは思うが、それが適当なのかどうかは中国語の知識が貧弱だし、中国の風習にも疎いから何とも言えない。