中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

受動喫煙の悲惨

2010-08-12 09:34:59 | 身辺雑記
 私自身がそうだったが、概して喫煙常習者は非喫煙者には思いやりがない。禁煙指定の場所でない限り、どのような場であっても喫煙を遠慮しない。それどころか非喫煙者の訴えに暴力的な言葉で対する例もある。

 新聞の記事だが、ある中堅の建築コンサルティング会社に正社員に採用された40代の女性の場合は、職場の社員の多くが喫煙者で、それもかなりのヘビースモーカーが多く、1日3、4箱は当たり前、7箱という者もいたと言う。自席だけでなく歩きながらでも喫煙し、女性は咳や痰が止まらず目も痛くなり、入社1ヶ月で耐え切れなくなって上司に訴えた。しかしそれに対する答えは、「建設業とタバコが切り離せないのが常識。本数が多いのは仕事熱心な証拠だ」であり、廊下に置いてある灰皿は分煙のためではなく「どこでも吸えるようにするためのもの」だということだった。この訴えをした直後にこの女性は部署を変えられ、仕事も与えられなくなったという。その後幹部に呼び出されて「会社の和が乱れるし、仕事も怠けている」として即日解雇を告げられたので会長に電話で訴えると、「たかがたばこのことでごちゃごちゃ言うな」と怒鳴られた。

 まったく呆れかえった下劣な企業で、この会長や幹部、上司達はゴロツキに等しいと思う。女性は労働審判でこの会社と争っているということだが、どのような結果になるのか。しかしこのような会社はたとえ審判で負けたとしても、体質を改めようとはしないと思う。おそらく受動喫煙の防止を謳っている健康増進法の存在などはどこ吹く風ということだろう。

 この会長の「たかがたばこのことでごちゃごちゃ言うな」という考えは、多かれ少なかれ喫煙者の非喫煙者に対する意識の中にあるのではないかと思う。私もかつてはかなり吸っていたから、非喫煙者をおもんばかる気持ちなどはなく、喫煙をたしなめられたりすると、かえって不快に思ったことさえあった。今に思うと傲慢だった。

 喫煙を止めてだいぶたってから、ある職場で左右と前をヘビースモーカーに囲まれて、終日濃い煙の中で仕事をしたことがあったが、やがて咳が出始め、だんだん激しくなった。咳が出始めると止まらなくなり苦しい。あるとき咳をしていると隣の席の1人が「あんたはよく咳をするなあ」と眉をひそめるようにして言った。「あんた達のたばこのせいだよ」と言いたかったが黙っていた。事ほど左様に、喫煙者は自分の行為が他人にどういう影響を与えているのかには無頓着だ。ましてちょっとした煙でも不愉快な思いをする者がいることなどは考えようともしない。

 前に卒業生達と毎月恒例の昼食会をした時に、前に座ったK君が席に着くなりたばこの箱を取り出したので、思わず「食事の前と食事中にはたばこはやめてくれよ。吸わない者の身にもなってくれ」といささかつっけんどんに言った。それでK君は一瞬ためらって手を止めたが、それでもやはり火を点けて吸いだした。彼は温厚な性格で殊更に反抗したり無視するという態度ではなかったが、私はそれ以上は言わなかった。決して元教師風や年長者風を吹かしたつもりはなかったのだが、それだけに、ごく親しくしている関係でも、たばこはどうにもならないものなのかと侘しい思いは残った。

 私が入っている会の事務局で会議したり作業をしたりするときに、たばこを吸う者は吸いたくなると部屋を出て行く。別にそのような取り決めをしているわけではないが、喫煙者の遠慮というよりも、分煙という近頃の常識を心得ているのだと思う。親しい者が集う場、まして飲食の場では、喫煙者はそれくらいの心がけは必要だろう。

 厚生労働省は飲食店や宿泊施設の従業員の受動喫煙を防ぐために、喫煙について規制を法律で義務付ける方針のようだ。十分な換気設備を備えるのが難しい場合には禁煙を迫られることになって、多くの飲食店で喫煙できなくなる可能性もあるようだ。飲食店でのたばこほど嫌なものはないから、従業員の健康を守るだけでなく、客にとっても結構なことだと思う。それでも濃度の具体的な基準は「1立方㍍あたりの浮遊粉塵が0.15㍉グラム以下」のようで、この環境基準は世界保健機構(WHO)や米国の基準よりは4~6倍緩いのだそうだ。受動喫煙防止の道いまだ遠しか。

http://www.hit-1.net/tabako/in.html