盆施餓鬼

2010年08月14日 | 季節(夏)
(高屋の霊園にお墓参り、曇り空に百日紅の赤い花)


7年前、平成15年夏に、お盆の様子を都会に住む兄、姉たちに便りしました。
気温は違いますが、故郷のお盆の様子は昔も今も変わりません。

「暑い夏はどこに行ってしまったのでしょうか。涼しい夏は名古屋も、大阪も、加古川も同じでしょうか。お兄さん、お姉さん、お盆はいかがお過ごしでしたか、どこかに行きましたか。
但馬のお盆は、暑さなどちっとも感じられません。季節は真夏だと言うのに、雨の降る朝夕など涼しさを通り越して寒ささえも感じられます。どうしたことでしょうか、日本の四季は少しおかしいですね。
六月二十九日は、お母さんの七回忌の法事に来ていただきご苦労様でした。沢山お供えを戴きありがとうございました。いつも遠いところをお参りしていただき、私も〇〇子(家内)も二人して兄さん、姉さんたちに心から感謝をしています。
心配かけました、わき腹から背中に痛みの走ったヘルペスも、あれから松岡の北見医院で薬をもらい一週間ほど飲みました。水泡も少しですが出ました。痛みはその後も少しずつ有りましたが一ヵ月くらいで完治しました。心配した割にはたいしたことも無く収まり有難かったです。〇〇(息子)も帰って仕事を一緒にしてくれることだし、これからは無理をせずに体をいたわって気をつけます。本当に心配をかけ申し訳ありませんでした。

長楽寺は宗教法人です。信徒檀家の長楽寺護持会があります。檀家総代、副総代、会計や常任委員などの役員があるのです。
八月十日は盆施餓鬼の準備です。朝は八時から集まり午前中かかりました。しとしと降る雨のため山のお寺は涼しいこと、例年と大違いでした。
長楽寺は真言宗です。但馬には多くの真言宗の寺院がありますが、豊岡、日高周辺を城南結衆というグループで付き合っていて長楽寺の盆施餓鬼には当寺を含めて六ヶ寺からお坊さんが集まり、全部で六人の読経で進められます。盆施餓鬼の日時はそれぞれの寺で決まっていて、長楽寺は毎年八月十四日午後二時です。
私も役員であるため、お盆の中日の十四日、施餓鬼会に出席しいろいろとお世話をしたり、拝んだり、無事終われば後片付けと一日仕事です。
毎年、暑くて暑くて汗をふきふきですが、今年は涼しいこと、扇風機もいらないし、冷たいジュースより熱いお茶が出されるし、行く夏を急ぐように、鳴くセミの声もジャンジャンと聞こえず、シャンシャンと心細いものでした。
施餓鬼の申し込みは全部の檀家から受付けます。我が家も、〇〇家先祖代々の為として施餓鬼供養をしてもらいました。

施餓鬼とは餓鬼道に落ちて、いつも飢えと渇きに苦しんでいる亡者を救う法要です。
長楽寺の正面に施餓鬼壇を設け、四隅には五如来(仏様)の名を記した五色の施餓鬼幡(旗)を立て、中央には、欲界、色界、無色界の三つの迷いに溢れた世界の霊である、「三界万霊」の位牌を安置して催されます。
六人のお坊さんが詠みあげた読経の中にも出てきましたが、「阿難」というお坊さんが初めて施餓鬼会をしたそうです。
阿難は、お釈迦様の十大弟子の一人で阿難尊者といいます。ある時森の中で真夜中、突然餓鬼に会いました。餓鬼は口から火を吐きながら「三日後、お前の命はなくなり、われわれと同じ餓鬼道に生まれ変わるだろう」と言いました。
驚いた阿難はお釈迦様に相談したところ、「観音菩薩よりさずかった真言を七回唱え、加持すれば少しの食べ物もたくさんになる、これを餓鬼達に与え、腹いっぱいにさせなさい、こうして供養すれば餓鬼は苦身を逃れ、天上に生まれ変わるでしょう、施主は寿命が延び、仏の道を悟るでしょう」と教えられて供養したのが施餓鬼会の始まりだそうです。
供養された施餓鬼塔婆と小さな竹に付けた五色の旗を各檀家に配りそれをお墓にお祀りするのです。

お兄さん、お姉さんたちと皆でお参りした盆施餓鬼は、お母さんが亡くなった次の盆、平成十年でした。お母さんの亡くなった夏も暑かったが、施餓鬼の夏も暑かった、あれから早五年になりました。
だんだん年をとり長楽寺に歩いて上がることができなくなると心配していましたが、今年の法事のとき皆で通った道が出来、本当に助かります。
兄さん、姉さんたちには、ふるさとの夏の思い出たくさんありましょうが、なんといっても盆でしょう。今日はお盆の長楽寺の様子を書きました。
ふっと、ふるさとの情景を思い出してみましょう。懐かしい昔日の国府の夕焼けを思い出してみましょう。
おおぜいの兄弟が肩寄せあって過した、我が家の夏を思い出してみましょう。夏のお父さん、お母さんの姿を思い出してみましょう。
そして、今年もお盆がやってきました、また来年もやってきます。そんな時、みんなで食べたお母さんの盆だんご、なつかしいお母さんの味を思い出してみようではありませんか。」

平成15年8月14日

《セミの声 さびしくひびく長楽寺 涼しき中の 盆施餓鬼(ぼんせがき)》