散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

The Illusionist

2008-12-05 07:52:10 | 映画の話



The Illusionist、2006年、Neil Burger監督を見た。
Edward NortonとPaul Giamattiは結構気に入っている役者だし、1900年代が舞台でマジシャンの出てくる話とあらば見ないわけには行かない。
Edward Nortonは少し普通でない(異常で怖い。。。)人間の役を演じると上手いな、と思う。
”Primal Fear”でAaron Stampler役を演じた彼は迫力だったっけ。。 (あの極端な垂れ目が実に怖い目になるんだよね。)
今回Nortonの演技に気が入っていないようだの、Jessica Bielは美人だがステレオタイプの演技で役不足だの、Rufus Sewellはそつなく役をこなしたが取り立てて光らずという批評も読んだけれど、私は結構面白かった。
(Rufus SewellはDark Cityで見てから、彼の出ている映画はあまり見たこと無いけれどもちょっと気になる俳優の一人だ。。これもまた怖い顔だな。)
ハリウッドとしては低予算の制作費15ミリオン$という事だけれど衣装、舞台それぞれしっかり作ってあるところに好感が持てる。
話の最後のどんでん返しは、途中から予想が付いてしまったけれども、見事してやられたと気が付いたときのPaul Giamattiの表情がとてもよい。
ちょっとでミステリアスなラブストーリーという感じに幕下りる映画だったけれど、最後まで一体これはどんな結末か?と引っ張る。
スティーヴン・ミルハウザーの短編が原作だそうで、この人の本はまだ読んだことが無かったが、読んで見たくなった。







秋深

2008-11-10 09:06:48 | 映画の話




一週間前の写真。
葉はこの半分方舞い落ちた。




週末はDVDで映画を2本観た。
一本はスティーブンキング原作の映画化 "The Mist”
ある日謎の霧が町中を覆ってしまう。そして霧の中には何かが潜んでいた。
(この辺もっと見る側の想像力を使わせて欲しかった。モンスターの姿などそれほど必要じゃない。)
スーパーマーケットの中に非難して閉じ込められた人々が、徐々に進行してゆく状況の変化のなかで微妙な変化を起こして行くあたりが興味深かった。
しかし最後に疑問符がいくつも飛んでしまった。

もう一本はウェス・アンダーソンの"The Darjeeling Limited ”
なんという話ではない。ロードムービー。ボタン一個掛け違えたみたいなユーモアのセンスが可笑しい。

(面白かったけれども観終わって大満足!という部類じゃなかったかな。二本とも。。。)

ほんとは映画館に映画を観に行きたかったのだが、咳の発作が出るのであきらめたのだ。
今回の風邪は妙な事に咳が出る切りで、他の症状は無い。
しかし咳はしつこく、昨夜も咳で目が覚めた。腹筋背筋が痛くなってくるくらい咳が出る。







クリスタル・スカルの王国

2008-06-28 11:25:17 | 映画の話
娯楽映画の最高峰シリーズ。
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 を観にいこうと思いながらなかなかタイミングがつかめずにいたが、昨夕近所の映画館のスケジュールをチェックしていたら30分後上映があるではないか。。。と言うことでドタバタと出かけた。例の客の少ない倒産寸前でいまだなんとか持ちこたえているらしい映画館だ。

当然以前の作品と比べたらテンポもアクションも穏やかでインディの年相応、息を呑むのも忘れるようなスピード感と次から次へコレでもかとビックリ箱をあけて驚き楽しむ感じは減っている。
けれどそれが何なのだ。。いいではないか。
話はかなりめちゃくちゃだ。。。けれど、それもいいではないか。
コレはちょっとなあ。。。と首を傾げる話や場面もたくさんあるのだけれど、まあ、いいでしょう。

誰もが思うことだろうが、もうすっかり関係者自身が楽しんで同窓会的、『あの時はね~』的な映画だ。でもこればかりは大画面で先ず見ておかないとね。観客も同窓会に参加させていただいている気分でね。
兎に角そこここにちりばめられたスピルバーグとルーカス映画のパロディを見つけながら十分楽しめるのだった。

米ソ冷戦時代
エリア51
ナスカ地上絵
マヤ
秘宝クリスタル・スカル
なぞの円盤






ジョン・ウィリアムズのこのテーマ曲、スターウォーズもだけれど良くできているのだなあ。。。
昨日から頭について離れない。



21

2008-04-17 09:37:44 | 映画の話


久しぶりになんだか急に映画が観たくなって近所の映画館に出かけた。
特に私が見たいと思っていた映画はかかっていない映画館なのだが何しろ近いというのが特大の利点である。とにかく急に映画を観たくなった時には便利なのだ。
電車2分の隣の駅、自転車なら10分、歩いても20分弱。。。
昨日は丁度電車が来たので飛び乗った。
映画館内にあったレストランはつぶれてしまったらしく真っ暗でがらんとしている。映画館の向かいのレストランもつぶれている。要するに人がちっとも集まらない場所で、せいぜい映画館と裏手のスポーツセンターにポツリポツリと人が集まるほかは事務所が集まっているくらいのさびしい場所なのだ。よくこの映画館はつぶれないで持ちこたえているものだと通りがかるたびに思う。映画館の中に入ると誰もいない。切符を売る窓口がいくつも並んでいるが誰もいないので、奥を覗くと片付け物をしていた女性がやってきて、あらこんな時間にお客だなんて珍しいわ、という表情で切符を打ち出してくれた。
いつもなら切符切りが立っているあたりにも誰もいないので、入ってゆくと売店がある。一応ポップコーンやタコスがムンムンと匂っているし、飲み物やお菓子が並んでもいる。そこでおしゃべりしている係員に切符を見せると、お!お客だ!という表情で
『こんにちは、こんにちは!楽しみくださ~い!』といいながら大げさなジェスチャーで切符を切ってくれる。
『ひょっとして、私一人?』と聞くと『その通り!』と目をくりくりさせて答えるのだった。やっぱりね。街外れの午後一番(14時15分)の映画館は実にさびしい。
私一人で映画館のど真ん中に陣取っているのはなんだか酷く贅沢な感じもするけれどさびしいものだ。いいような悪いような妙なものだ。
しかし、始まる直前になって若者二人と中年のおじさんが一人やってきた。

ところで観た映画は『21

内容はあまり調べずに決めたのだった。
数学の天才が主人公か、面白そうかな。。。
ケヴィン・スペーシーが出ているのだったら観てもいいか。。
おまけにローレンス・フィッシュボーンが出ているしね。。
先ずこの3点で決定したのだった。結果から言って私にはあまり面白くはなかった。
兎に角映画館で映画を観たいという趣旨で出かけたのであるから甘い点をつけるとしても、忙しいときに時間を割いて観にいったりしたのだったらかなり不満だったかもしれない。アメリカでは駆け出しの興行収入は良かったらしい。 後でレヴューを観ても結構点数が良い。 原作の本„Bringing Down The House“を映画化したもので実話なのだそうだ。
MITの天才的な頭脳は持っているがお金が足りない苦学生が、ラスヴェガスで生徒を使って稼ぐ数学教授(ディケンズのオリバー・ツイストに出てくるフェイギンみたいな人物)に目をつけられ、引きずり込まれてブラックジャックをカード・カウンティングで荒稼ぎをするようになる。始めは純情な若者も次第にラスヴェガスの空気に染まっていくあたりテンポもあってそれなりに見せるが、話の展開は今ひとつ面白くない。最後はとって付けたようなハッピーエンドで気が抜けた。青春物語だと思ってみればいいかもしれない。
話は先き先きが読めてしまうし、映画としてはありがちな内容だけれども実話だったというところがポイントか?
日本題名は『ラスベガスをぶっつぶせ』だそうである。そんな題名だったらいくら暇であってもこの映画を観ようとは思わなかったろうね。
原題もドイツ版の題名も『21』。
この数字に何の意味が隠されているのか?きっと数学的難題がかかわってくるのに違いない、なんて勝手に想像してしまって釣られた。話は主人公が21歳の誕生日を迎えた頃から始まる。頭は抜群に良いけれども女の子には全くもてない、お金もない親友達2人が主人公の誕生祝い場面で"21=八番目のフィボナッチ数”だ、などと喜ぶシーンがあったけれど、それ以外に意味はなかったのだろう。。。ね?

ドイツ映画Doris Dörrie 監督のKirschbluete-Hanamiは、なかなかよさそうな映画だ。
加えて日本が舞台に出てくる映画は幾つか観たことがあるけれども、日本人のものではない色々な視線で日本を観るのも面白い。






(ちなみに写真は映画館とは何の関係もない)

覚え書き

2008-03-25 08:06:00 | 映画の話




★映画メモ

Swimming with Sharks「THE BUDDY FACTOR」 1994年

知人のお勧め映画DVDを見た。
これは意見が両極端に分かれる映画かもしれないが、私にはなかなか面白かった。
こいつは酷い奴だなと思ってみていると、そこに至る裏付けが見えてくる。こいつは弱そうでいい奴だと思っていたら、案外辛抱足りぬ、しかししたたかな奴か。。とこちらの見方を変えさせて行くのも面白い。
『君が本当に一番したいことは一体何?』と突き詰められて若者が最後に
選択したものは。。。
ケヴィン・スペーシーは上手いね。私の好きな俳優の一人だ。


★展覧会メモ

ベルリンから来た友人らと共にNeuss Raketenstationで現在開催中のカール・ラーガフェルド写真展を見てきた。
版画用の上質な紙に解像度の低い写真の部分がシルクスクリーンで刷られている。おしゃれな写真だ。
何かもう少ししゃっきりとした感想を述べて見たいと思ったが何も出てこない。
一度あんなふうに自分の写真を大きくシルクスクリーンで刷らせて見たいなあ、とかこの額装はあまり綺麗じゃないな、とかそんなことや美術館内の空調が上手くいっていないのか黴くさいし、空気が悪いのが気になってしまった。

安藤忠雄の手になるこの美術館の前庭には桜(ソメイヨシノではないのが残念だけれど)が数本並んでいる。
淡いピンク色の花の塊が雨雲の広がる灰色の空の下で溶け合って雨風に打たれる花も風情がある。
そしてそれを映す水面。
風が水面に施す紋は見ていて飽きない。



映画

2008-02-04 11:46:00 | 映画の話
 


ピンクフロイドのThe Wall(1982年)を久しぶりに見た。
ドイツに来て間もなくの頃にこの映画は観ていたけれど、結構忘れている。
(そりゃ当然か。。。ずいぶん昔の事だ)
ピンクフロイドはなんといってもセンスがいい。シド・バレットが元気な頃のサイケデリックで目を引く天才的感覚は素敵だし、アルバム『ウマグマ』の頃はメンバーがそれぞれにアイディアを持ち寄って音楽を作り上げていたようでこの頃の音楽も好き。ロジャー・ウォーターズが引っ張っていた頃のコンセプトがはっきり構築された音楽も好きだ。


失礼な言い方だが、シド・バレットが2006年まで生きていたとは知らなかった。
最後まで理想の絵を求めて一心に絵を描き続けていたらしい。どんな絵を描いていたのか観てみたい。






他に最近見て良くも悪くも印象に残った映画

"The nine live of Thomas Katz”
英/独映画
という映画を録画してあったので観た。話はわけのわからない世界だがなかなか面白い。皆既日食が近づくある日マンホールの中から不思議な人物が這い出してくる。"トーマス・カッツ”だ。アンチ・メシアである彼は世界を破壊すべくマンホールの中からやってきた。ブラックユーモアとなかなか面白い映像のセンスで見せてくれる。

"Babel"
ブラッド・ピットがそれほど好きじゃないというのも理由のひとつかもしれないんだけれどまだ観ていなかった。
観終わってからしばらくの間、散々文句たらたら流しまくった私だが、それだけ引っかかるものがあったということなのか。。。この映画について書き始めるときっと長くなりそうなので、今日のところは止めておく。
"事件”を起こした猟銃の素性を確認しようとしている刑事に日本人の父親が開口一番『私にもお咎めがあるんでしょうか?』という台詞。なんだかありそうな話だなと印象に残る。

”Hotel"
オーストリア映画
怖いぞ怖いぞという雰囲気をそこここに仕込んで、見るものに『ほらほら怖いよ』と迫ってくるのはいいけれど、短編ならともかく、どうもしまりが無く雰囲気だけで終わってしまった。途中から『これはまずいなあ』と思い始め、それでもちっぽけな期待を抱いて最後まで見てしまい、力が抜けてしまった。。。
キーワードは、鬱蒼とした森、ホテル、洞窟、魔女、失踪、未解決、無表情、迷路のようなホテルの通路、闇、眼鏡。。。
。。。と書いてみたら面白そうだと思うけれど?


I am Legend

2008-01-11 09:36:48 | 映画の話
昨日は友人とひさしぶりに劇場で映画を見た。このごろ映画館で観ようと思いながらなんとなく見そびれてDVDを借りてくることが多い。さすがに映画館で観る映像はそれだけで迫力だ。我家のポータブルな14インチ画面では細部が見えていないことが多い。

特に何を見たいという希望があったわけではなかったので、ちょうど昨日始まったばかりの『I am Legend』を観てみようということになった。
この映画の予告で廃墟化したマンハッタンに鹿の群れが風のように走り抜けるシーンがあって、そのおかげで私はこの映画を観る気になった。あの一場面だけでなんだか想像が勝手に膨らんでしまったのだ。
この映画は1954年にリチャード・マチスンが書いたSF小説が原作で、この原作からこれまで2本映画化されている。最近リメイクがやたら多いのはハリウッドもネタ切れなのか?
それはともかくこの映画書き込みが足りない。映像も隅々まで丁寧に作りこんでいない、脚本も今ひとつペラペラだ。勢いで見せられてしまって後に何も残らず。勢いで見せるだけでも、まあ、すごいことではあるけれどね。
余談だが主人公が連れて歩いていた犬は賢そうで可愛かった。
とはいえ大きな画面で映像を見るということ自体が快感でストレス解消でもあるのでまた何か観に行きたいものだ。



ところで春はちゃんとやってくる。
鳥の囀り方も少し変わってきたようだし、地中は春の準備に忙しいらしい。
あちこちに球根の芽が出始めている。クリスマスローズ(オリエンタリス)の花の蕾がいくつか少し寒そうに身を寄せ合ってうずくまっている。
早く春にならないかな。





イングマール・ベルイマン

2007-08-02 17:51:48 | 映画の話
7月30日イングマール・ベルイマン監督の訃報をニュースで聴いて、もう20数年前(うわっ、古い話だ。)に「処女の泉」を見た日の事を思い出した。
思い出したといっても特別な事があったわけではなく、その日は天気が汗ばむような良い天気だったなとか、叔母に誘われて出かけたのだったなとか、映画館を出てからアイスコーヒーを飲んだのだったな、とか他愛も無い事だけだ。それでもそういう事までを覚えているというのは「この映画を見た日」と言う引き出しが頭の中に作られたからに違いない。
新橋辺りの名画座だったか、2本立てのうちの一本だった。
空っぽな私の頭の中は、理解が始まる以前に殴られて思考不能に陥ったような感じだった。。。などと言ったら大げさかな。
美しい残像に残酷な残像にしばらくの間悩まされた。空っぽなわりに繊細な所もあったのだ。
その後もう一度見たいと思いながら見る機会に恵れずにいたが幾つかのシーンは鮮明に思い出せる。(記憶違いもあるかもしれないけれど。)
森の風景。
教会に蝋燭を奉納するために日曜日の装いに着飾った豪農の娘が馬に乗って進む森が美しかった。
北欧土着の神を信仰する下働きの娘が、無垢ではあるが無邪気な残酷さが憎い豪農の娘の弁当である丸い平たいパンに蛙を一匹挟む場面があった。話の本筋とは関係なけれども蛙が気の毒でよく覚えている場面の一つだ。
信仰心の厚い父が娘を殺された事を知って復讐に身を焦がす。(マックス・フォン・シドーが熱演していたなあ。。)
そして少女の骸を母が抱き上げると泉が湧き出す場面は印象的だ。
この話は13世紀頃中世のスカンディナヴィアと言う設定なわけだけれども、北欧原始信仰はまだキリスト教よりも強く残っていた時代だろう。話をこの時代に持っていったのは面白い。
人間が奥に秘めている暴力性や、それぞれに原罪を背負っているような人間像は切ない。
私には難しい事はわからないけれども、しかしそれよりも何よりも美しい映像は文句なしに素晴らしかった。

「野いちご」「ペルソナ」も気に入っていた作品だけれど実はベルイマンの作品をそれほど沢山は観ていない。

ところで今気がついたが、どういうわけだがその時見た2本立てのもう一本が何だったかはっきり思い出せない。変なものだ。名画だったんだけれどな。






今日も雨だれの音が朝からずっと聞こえている。

コーンフレークの生まれたわけ

2006-11-07 00:15:57 | 映画の話
先日肩の痛みがひどいので医者に行ったら、要するに筋肉や筋の炎症だといわれ、マッサージと泥パックの処方箋をもらったので予約をしておいた。
今日がその予約日だった。
Fango(泥)パックは初めてだったので何をされるかとおもえば、熱い黒いプラスティック粘土のようなものがシートに貼ってあり、痛いところを包み込んで暖めるものだ。
熱いけれど我慢できるならタオルをはさまずこのままやりましょうといわれて、そのほうがいいのならそうしてくれと言ったものの、かなり熱かった。
しばらくは背中が熱くてカチカチ山の狸みたいな気分で、20分くらいそのままじっとしているんだけれど、その間どういうわけだか映画-The Road to Wellville-を思い出してしまった。
別にあの映画の中のように大変妙な事を強いられているわけではないのだけれど、そんな連想が起こってしまった。
The Road to Wellville はアラン・パーカー監督の作品で、ケロッグ博士というのは実在の人物である。
例のケロッグ・コーンフレークのね。
健康産業の先駆者とも言うべきケロッグ博士の療養施設はかなり怪しい。下ネタも多くてかなり困った映画だ。
だけれど、アンソニー・ホプキンスが困ったケロッグ博士を演じているので、ホプキンス ファンとしては思わず見てしまったのだ。
この人はこういう役も引き受けてしまうのだなあ、と妙に感心してしまったのだった。

アラン・パーカー監督といえばミシシッピィー・バーニングが印象的だったんだけれど、もうひとつミッドナイト・エクスプレスという映画もあった。
もうずいぶん昔のこと、高田の馬場の駅近くの映画館で夜2本立てでこれを観た。
「真夜中のカウボーイ」と「ミッドナイト・エクスプレス」という組あわせでかなりきつかった。この2本を見たことのある人ならうなずいてくれる事と思う。
映画が終わって外に出るともう夜中も近い時刻で、ミッドナイトの重石を背中に乗っけて帰った。
ところで「小さな恋のメロディ」もアラン・パーカーだったね。

あっ、映画の話が真実なら"コーンフレーク"は失敗は成功の元、ひょうたんから独楽という感じに焼きそこないから生まれのだった。

ゴビ砂漠の風

2006-02-05 10:58:15 | 映画の話
『らくだの涙』(Die Geschichte vom weinenden Kamel)を観た。
当時ミュンヘン映像大学の学生ビャンバスレン・ダバーとルイジ・ファロルニの共同卒業制作である。
モンゴル生まれのダバー監督が子供の頃に聞いたという話に仲間達が感銘を受け、それを主題にこの半ドキュメンタリー映画はできた。
ゴビ砂漠に生きる或る遊牧民家族の日常生活を描いている。
彼らが連れているのは駱駝と羊。
ある日一頭の若い駱駝が難産の末に白毛の駱駝を産み落とすが、彼女は子駱駝を受け入れない。
世話をする家族達の努力もむなしく、どうしても子供を受け入れない駱駝に、最後の手段は昔からの風習で駱駝に音楽を聞かせる事だった。
駱駝親子についての結果から言うと『音楽治療』は見事に成功するのだ。
街から駆けつけた馬頭琴奏者の奏でる音の響きと歌、風の音が母駱駝の体のを包む。まるで奇跡のような話だけれど、遊牧民達はそれを当然の成り行きといった感じで淡々と受け止めている。
出演者達は当然役者ではなく、街からかなり離れたところにテントを張っている遊牧民家族である。彼等は演技をせず、カメラの前で普段の生活をすることを受け入れていると言う感じだ。
監督等は幾つかの話のポイントを挿入しながら実際の遊牧民の日常をカメラに収めていくわけだがその幾つかは難問である。
例えば
1)実際の遊牧民で沢山の駱駝を持つ家族を捜す事。
2)中に身篭った駱駝がいること。
3)生まれた子駱駝をその母駱駝が受け入れない事。
4)音楽のセレモニーを終えて駱駝が涙を流す事。

1)と2)については何とかなりそうな条件に思える。(それでもひとしきり捜して大変だったらしいけれど。)しかし3)、4)に関しては奇跡を待つしかないというものだ。
監督等、製作者はインタヴューに答えて
「我々は、いくつもの晴らしい贈り物を貰った。」と語っている。
その上、子らくだは珍しい白毛と来ているのだから、駱駝ばかりか彼等も涙を流して喜んだに違いない。

フィルムの中でラマ僧が、我々はこの自然を守る使命を、子孫にそのままの形で引き渡す使命を負って生きるのだよ、と語り、祈った。

話の最後におまけのように一シーンが付け加えられている。それはその遊牧民の生活の中にテレビが入って来た場面である。
このシーンを入れるか入れまいかについて監督等は随分悩んだようだったが、この変化を地球の何処にあっても止めることは出来ないのだ、と言うことで挿入したそうだ。
昔からの遊牧民達はそのうちに消えて行くのだろうか?
変化受け入れ、形をかえながらも彼等の文化は引き継がれて行くのだろうか?

この監督等は社会的、政治的問題をあえて強調する事はしない。
自然の中に生きる人間の姿を通して問うて来る物は国境を越えている。

モンゴルの草原に行って見たい。

2005-12-13 18:42:10 | 映画の話
読書の冬ではあるけれど、映画の冬でもある。 レンタルDVDを借りてきたり、TVで放映された映画の録画などをせっせと見る。 

監督スパイク・ジョーンズの映画"マルコヴィッチの穴”(1999年製作)は不思議な映画である。
意外な発想の展開だけでどんどん押してゆく話が面白い。 思いつきを振り回しているだけじゃないと言う意見も多いけど、あまり硬い事は言わないで楽しく見るたら良い映画だ。 私は結構楽しんだ。
失業中のさえない男(人形遣い)がある会社に就職する。事務所はビルの7階半に存在して、天井が低いので皆体を折り曲げているのが可笑しい。半階分の空間ではまっすぐに立って歩けないのだ。(想像しただけでも狭い穴倉で背筋を伸ばしては働けないと言うのは拷問と同じだ。)
ある日の事。彼は不思議な"穴”を棚の後ろに発見した。その穴に入ると“ジョン・マルコヴィッチ“の体の中にぶち込まれるのを知って、彼と彼の片思い相手の女同僚は、200ドルで15分間のマルコヴィッチ体験という裏商売を思いつく。(まあ、このくらいしか穴の利用法は無いわけだけど。)
そこから私生活が急変、転落してゆくのを彼には支える力が無いのが悲劇の始まり。

15分間他人になれる事が魅力なのか、15分間有名人になれるのが魅力なのか、それとも"マルコヴィッチ”を体験する事が魅力なのか? (問:私なら200ドル持って15分マルコヴィッチ穴に入りたいかどうか? "穴"自体の存在が不思議すぎるから、一度体験してみるかもしれない。)
穴に入る=マルコヴィッチ化する事は、200ドルを握り締めていそいそと集まる人々にとって、単に未知の世界(セレブの世界、異なる階級)を覗き見するだけのことである。 そのほかには何も起こらないのだ。 
まあ、結局のところ他人の皮を着るのは苦しい事かもしれないから適合しない、異物は15分もすると汚物の如くポイと排泄される。 
主人公の妻はこの"穴"体験に魅了され、やがてマルコビッチとしてで出会った女性(ちなみに主人公の片思いの相手)に惚れ、マルコヴィッチの体を利用して15分の逢引を重ねた結果子供まで作ってしまう。 彼女の場合、他人になる事で新たな自己発見をするという展開があったわけだけど、他の人間は15分間遊園地で遊ぶ気分で満足して帰るのだろう。
やがて主人公はマルコヴィッチを操る術を習得し体を横取りしてしまう。
結局彼はマルコヴィッチを乗っ取るポテンシャルを秘めた人物であり、チャンスを掴む才能があれば活躍する名人形遣いとなる可能性を秘めていたのに、欠けている物がある。その"外側”の大きな変化に対して"内側”の変化は大して起こらなかったのに違いない、当然破綻はやってくる。。。
この破天荒なストーリーは一体何を言いたいのかと突っ込むより、面白い夢でも見ているつもりになって展開を楽しみ、それぞれが適当に気になるポイントを引き揚げながら勝手に解釈して楽しんだらそれでいいんじゃないかと思う。 
しかし、穴がジョン・マルコヴィッチのものであるところは、実にうまい選択だと思う。 私は割合この人の存在感が好きだ。 
ちなみにマルコヴィッチ本人が自分の穴に入ると、かなり困った世界になる。 
脚本家チャーリー・カウフマンは"マルコヴィッチ”と言う名前の響きが面白くて選んだといっているらしいけれどね。 
この脚本家の書く話はいつも滅茶苦茶でかなり可笑しい。

だけど自分の穴があっても決して自分で入りたくないものだ。 大体そんな穴があったら何をおいてもつぶしに行くよね。 他人に非常に個人的な部分を覗かれるなんてとんでも無い事だ。 

それともどこかに"穴"は存在して時には誰かが乗っ取っていたりしてね。
そういえば自分が自分でないような気分の時がたまにあるとか、気がつくと15分ほどのブラックアウトがたびたびある方はお気をつけください。


映画とホウズキの関係?
。。。。。。。。全く無い。


映画リスト

2005-05-29 23:06:57 | 映画の話
映画。
私は多分かなり映画を観ている方なのだと思う。それも何でも見てしまう雑食的映画鑑賞型。
B級フイルムもそれなりの見方をすると楽しいのだ。
最近では映画館で観るばかりではなく、ぼんやりしているともうDVDが出てしまうので、その手段で見ることも多くなった。
どういうわけだか、ドイツのTVは映画がとても多い。一つにはドイツのTV放送局が自社番組を作る気がないらしくて、すぐ映画やアメリカのシリーズ物を買い込んでしまう。それだからドイツのドラマや映画は育たない。それに最近つまらないリアリティーTV物や、クイズ番組などで、一つあたるとどちらの局も殆ど見分けのつかない番組しか作らない。何でもアメリカの真似をするのだけど、それがどうにもいただけない。
まあ、兎に角、だからTVでもよく映画を観る事になる。
このところ、いくつかのブログで”好きな映画リストを見かけて私も書き出して見ようと思いたったのだが、しかしあんまり多すぎて、大変で、くじけた。10作選ぶとか、そんな事はとても出来ない。例の、もしも無人島に。。。。という状況設定で選択するには、もともとDVDやヴィデオなんて、電気のないところで無理な話なんで、そんなことは考える必要はない。
とはいえ、何しろもう長い事、殆どの映画をドイツ語で見ているので、という事は題名もドイツ向けに変わっていたりする。日本でも原題からかけ離れた題名に変更されている事が多いが、それはドイツでも同様なのだ。う~んこれは大変な作業だな。
これは殆ど、30秒以内に一つ思いつく映画、今もう一度見たい映画を書き出して見なさい、というゲームになった。

Big Game : アメリカ。50年代イタリアからレストランを開業する夢を持ってやってきた2人の兄弟が、”アメリカ人の味覚の違い”という障害にぶつかる。兄弟それぞれの思惑絡んで話がよじれてゆくがハッピーエンド。主役2人はアメリカの名門レストラン2件で料理の修業をしたのだそうだ。

The Cider House Rules : アメリカ。マイケル ケインがいい味を出している。

バベットの晩餐会 : 料理するシーンが良い。食は人をつなぐ。映画の中に出てくる料理はかの有名なオーギュスト エスコフィエのメニューだという事を聞いた。食べてみたい。

デリカテッセン : フランス人だなあこの感じ。この空気が好きだ。世紀末SF的異次元空間。

アメリ : フランス映画で最近大ヒットだったこの映画。映像のセンスが良い。捨てられた写真を集める青年役の彼は監督業もしていて“クリムゾン リバー”なんていう映画を撮っている。"クリムゾン リバー”にはJ.レノが出ているけれど、この人は”Leon” が一番好きだ。

アントニアの世界: オランダ映画。4代にわたるの強い女たちへのオマージュ。体験的人生哲学。
気持ちが良い。映像も良い。オランダの映画の中にも幾つか面白いと思うものがあるので注目している。

Pi : ローバジェットで、よくまとめたなあ。コンピューターの形態が面白い。

2001年オデッセイ 宇宙の旅 : 道標のような映画!何度も拝むように見たものだ。

スターウォーズ : 特に最初の3巻がよい。ヨダ仙人に弟子入りしたかった。エピソードⅢはもう始まったが、まだ見ていない。初日は仮装したファンが大勢詰め掛けたようだ。

ブレードランナー : P.K.ディック ファンとしては、彼の原作映画化は全て観ているが、これが一番。トータルリコールもマイノリティ リポートも私には今ひとつ。暗闇のスキャナーがそのうちに来るらしいが、残念ながら期待はしていない。観に行くだろうけれど。

リズム イズ イット! : 実に良く出来たドキュメンタリー映画。テーマに興味があったので興味深かったし、感動もしたので過去の記事にも登場した。まじめにじっくり撮っている。

ロッキーホラーピクチャーショウ : やっぱりこれは楽しいでしょう。

Cube : 意表をつく展開が面白かった。”サイバーキューブ”の方は”残念でした。”

ブエナヴィスタ ソーシャルクラブ : 何てことない内容なのだけど感激する。音楽イコール生きる事、呼吸。

薔薇の名前 : 難しいながらも何とか気合で読んだ原作、この映画もよく出来ている。私が観た時、豚のシーンでどういうわけか映画技師が音のボリュームをいきなり上げてしまって、観客が皆一斉に飛び上がり ”もっと音を小さく!”と一斉に叫んだ。ベルリンの映画館だった。技師は居眠りでもしていたのか?

指輪物語 : 昔のトールキンファンとしてはこれも数に入れなければいけない。

マトリックス : 新映像方法を編み出したのはすごい。 でも後の2作はちょっと余分。

ストーカー : 原作は好きだから言う事はないとして、タルコフスキーの世界もいい。

惑星ソラリス : タルコフスキーの旧バージョン。アメリカ焼直し版も見たけれど、全く面白くなかった。

サクリファイス : やはりタルコフスキー。もうそれだけ。

ノスタルジア : 美しい。詩的なラストシーン。もう一度見なければ。

The General : イギリス、アイルランド合作。実在の名泥棒Martin Cahillの話。

Living in Oblivion : スティーブ ブセミが面白い。神経の参ってしまった映画監督に振り回されるクルー。。。

トリフィドの日 : 原作はジョン ウィンダム。宇宙から飛来した未知の生物が植物と融合(?)モンスター映画。ちょっとねえ。。。という話の展開も許せる60年代SFの代表。

パン と チューリップ : かわいい大人達。日本題はなんと”ベニスで恋して”この題名をみたら私は映画館に入らなかっただろう。

スモーク : 毎日同じ街角風景を、自分が盗んだかカメラで写真を撮る、その写真のアルバムをみながら2人の男がしみじみしているシーンはいい。(あのアルバム欲しいなあ)ラストも泣かせる。

ダウン バイ ロー : 3人の会話がなんともいえない。森の中でロベルトが何故牢屋に入れられたかの過程を語るところがなぜか印象的で記憶に残っている。

カリガリ博士 : 舞台美術が気に入ったのだけど、ラングの映画では”怪人Dr.マブセ”が面白い。2重映しに撮った映像が実に怖かった。もちろんメトロポリスも好きだ。

The Dish: 羊の群れに囲まれた、天文台が、月面着陸の中継を引き受けたが、嵐が起こって大騒ぎ。どういうわけか、好きな映画の中に沢山オーストラリア映画がある。

Priscilla : これもオーストラリア。焼き直しをしたアメリカ版も見たのだが、やはりこちらが私としてはこちらに賞杯を。ドラッグクイーンたちの珍道中。人情物。

Die Bruecke 橋:ドイツ映画。戦争映画は腐るほどある中で、これはなかなか戦争の悲惨さがよく描かれていた。戦争の意味が完全に把握できていない少年兵達が、現実に当面にする。戦争映画ではあるがシーンとしたイメージだった記憶がある。遠くから戦車の音が地被いて来る音が印象的で鳥肌たった。

WaterWorld : 主人公が乗っている”ボートの仕組み”をみるのが好きだ。あれを見るたびに拍手したくなる。乗ってみたい。

An Angel At My Table : ニュージーランド。J.Campion なんでなのか何度も見てしまう。個人的には話題になった”ピアノ レッスン”より気に入っている。

Dark Star : 胸を張ってB級映画!哲学的になってしまう爆弾がいい。

Yamakasi : フランス。高層ビルをよじ登って制覇する若者たちが主人公。ロビンフッド的趣向。
リズム感が合って、楽しい。よじ登りシーンもなかなか良い。しかし、題名の意味がいまだによく解らない。

困ったなあ、まだまだある。忘れているものも沢山ある筈だ。でもこの辺で打ち切らないといつまでも連ねてしまうのでお終い。


ここ2,3日夏日が続いた。スペイン方面から暑い空気が押し寄せた。
金曜日、土曜日とオランダの小さな町での展覧会があって会場につめていたのだが、ホールの中で陽に焼けてしまった(!)くらいだ。
暑くて客の出足は悪かった。
今日も良い天気だが下り初めている。来週は平常に戻って曇天雨天の予報。
そうしたら、”エピソードIII”を見に行こうか。

ドキュメンタリー映画、リズム イズ イット!はお勧め!

2005-04-18 14:54:02 | 映画の話
Rhythm is it! というドキュメンタリー映画を見た。
久しぶりに感動。
若手の2人の監督は、ストラヴィンスキーの春の祭典のような音楽を生き生きとした映像にするには、どうしたら良いか?そしてこの音楽を始めて聞く若者たちがこの作品に触れたとき、何が起こるかが見たくて、ベルリンフィルの常任指揮者サー サイモン ラットルとベルリンフィル、30年間世界中を回りながら、特にストーリートチルドレンを集めてダンスプロジェクトを続けているダンサーのRoyston Maldoonに話を持ちかけて出来上がったプロジェクトだという。
進むうちにこれは文化的、社会的に意味の重い仕事であり責任のあるプロジェクトだという輪郭があらわれてくる。
最初は懐疑的で、興味を示さない若者たちは、何度も同じ事を練習するのに飽きてしまう。あまり面倒な辛い事はしない、拒否する世代か? 何度も曲折があるが、少しずつ彼らの態度や顔つきに変化があらわれてくる。
体で表現する事が自分にどんな意味があるかを掴み取るのだが、その過程を追うのはとても感動的ですらある。
250人の子供、若者の中から、幾人かの若者をピックアップしてインタヴューを重ね、
他サイモン ラットル、ロイストン マルドーン、その他関係者とのインタヴューで、彼らの人物像が浮き彫りになってゆくと、映画を観る者はより、登場人物への親近感を得て、さらに引き込まれてゆく構成だ。
それほど将来に希望も持たぬ若者たち、両親をなくしアフリカから仕方なく亡命で一人ベルリンに生きる若者。心にわだかまりを持って、それをどうしたら良いかわからないまま内向する若者、それら一人一人が、様々な心理的葛藤を克服しながら、自分のために踊ること、そこにやり遂げることへの意味を発見してゆく。
自分自身が何かを成し遂げたという自信は彼らの将来を今、変えているかもしれない。

最後にサー サイモン ラットルいわく、”多くの人に知ってもらいたい事がある。それは、このプロジェクトは決して贅沢な試みではなく必然である事だ。”

同感!私もそう思いました。

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