
朝、眠くて眠くてベッドから起き上がるのが辛かった。
起きてみると眩暈がしたので、ただ冬眠中の熊のような血行のせいでは無いらしい。お茶を飲みながら少しぼんやりした。
外を眺めて見ると、昨日より暖からしい。
凍って、湯がいたホウレン草のおひたしのようになっていた葉があっという間に立ち直っているのには驚く。
出かけようとしたら電話がなった。
最近私は昼間に家にいる事がないので、電話で摑まらない。
携帯電話という手もあるけれど、私の携帯番号を知る人はそれほど多くないので、それは殆ど沈黙している。
受話器の向こうは隣町に住む友人で、何度も電話をかけていたのだという。ひとしきり話し終えて電話を切った。
次の電車は10分後だから、今から出ると丁度良い。ドアを開けようとするとまた電話がなった。
今度は近所に住む友人からで、良い紙や箱が手に入ったんだけれど見に来ないか?と言う話だった。彼は古本だのストックされていた紙だのを引き取ったり、売ったりする仕事をしている。最も彼の仕事はそれだけではなく、数えれば片手の指は充分必要なほど色々な事をしている不思議な人だ。
とりあえず明日訪ねる約束をして電話を切った。
もう一度電車の時間を確認してから出ようとするとまた電話がなった。
無視して出かけることも出来たが弾みで受話器を上げると、以前ある画廊で私の作品を買ったことのあるという未見の婦人だった。
残念ながらその画廊は去年とうとう店をたたんでしまったので、直接コンタクトを取ってきたという事らしい。他の作品を見たいという嬉しい電話だった。貴重なお客様である。
電話不精の私でも、そういう電話なら毎日だって受けたいとおもう。
電話を終えて、改めて出かけようとドアに手をかけながら思わず電話の呼び出し音に耳を傾けてみたけれどもう掛かってはこないらしかった。
先週の冬らしい気温は湿った温い空気に押し流されたようだ。
天気予報マークは退屈にも毎日灰色の雲と雨が続いている。しばらくの間、外出に傘は携帯必須らしい。