日曜日。
先週から始まっている展覧会(Grosse Dujardin)の写真を撮ろうと出かけるとなかなかの賑わいで驚いた。
オープニングから一週間で3000人ほどの人出があったということだった。
ホール自身の魅力も吸引力の一つなのだろう。
Krefeld市の美術館で行なわれている平行展より客足は多そうだ。
写真撮影を終えて、友人のエリッヒが仲間と面白いことをしているというので物見遊山に出かけた。
彼 は"物理学者"のいでたちで不思議な講演会を行なう。
量子力学の世界とアートを融合して煙に巻くようなはなしを延々と語り続けるので、聞いている人は何処までが真実で何処が作り事だかわからなくなってゆく。彼が"物理学者"に化けるときは牛乳瓶底様眼鏡と白衣を着て現れオーストリア訛りで語り始める。(エリッヒは生まれも育ちもドイツ人のアーティスト兼グラッフィック・デザイナー)
彼と話していると(ほとんど99パーセント聞き役だが)面白いのだけれど、彼の披露するパラドックスの世界を長いこと聞き続けると頭が痛くなる。皺の少ない私の脳味噌が異常加熱してしまうからに違いない。これ以上皺が増えることは無ので辛いところだ。
兎に角、プライベートな空間で類似系のアーティスト達と一緒に展示をするというので久しぶりに彼の顔を見に行くことにしたのだった。
Essenという街はルール工業地帯にある。工業地帯というと殺風景なすっかり乾いた景色を思い浮かべることかもしれないが、割り合い緑が豊かだ。まるで秘境に向かうが如く起伏ある地形を昇り降りしながら緑の中を走る一角もあるし牧歌的な景色が延々と続く美しい一角もある。
途中道がわからなくなって
「こんにちは。XX通りを探しているんですが、知ってますか?」と道端でのんびり立ち話をしている三人のオジサン達に道をきいた。
「うん、知っているよ」しばし沈黙。
「。。。でも教えない」といってこちらの顔をじっと眺めて反応をうかがっている。目を丸くすると大笑いしてから丁寧にその先の道筋を教えてくれた。日曜日の昼下がり珍しくもこんなところに東洋人がやってきて道に迷っているのだ、からかう餌食にしない手はないということか。。。。
急いでいなかったから良いもののやれやれ。。だ。
目的地に到着すると一件の家があった。此処で良いのか、と多少の不安を持ちつつ玄関のベルを鳴らして待っていると、一寸ふくよかな女性がドアを開け私達を招き入れ、一枚の展示回路を示した印刷物を手渡してくれる。正しい場所に到着したということである。
家中に不思議な小物や本が積まれていてなかなか居心地の良さそうな空間だ。
一階二階の書斎(どの部屋も書斎風)の中に
作品が隠れているのを見つけ出すのはなかなか楽しい。ちょっとした宝探しゲームだ。
案の定エリッヒは彼の論理を淀みない口調で披露している。毎度ながら驚いてしまう。
庭にでると、もうすっかり秋模様で立ち枯れ初めてはいたが、野性的で古典的な百姓屋風庭造りの風情は楽しいのだった。


彼らの試行錯誤、思考錯誤から生まれてくる"科学的”あるいは"非科学的”なオブジェはアリスの迷い込んだ不思議の国へ、滑り込む鍵だったかもしれない。