Helmut Eisendleの"Tod & Flora"を読んだ。
毒草の紹介とその毒草がらみの事件を一つ上げている。
面白いのは集められた全ての事件はほとんどの犯人が弱者である事で彼らはそれぞれに追い詰められて毒草を利用し復讐をするのだった。
虐げられた者達の反乱だ。
それぞれの植物に添えられた短い”事件簿”は悲惨なのだが、皮肉なユーモアが流れている。
この事件簿は事実現実に起こったことなのだろうか?
私の知る限りではここにあげられた薬草の効果は大袈裟過ぎて信じられないのだけれど、場合によってはありうるのかもしれない。
すると私のテラスにも恐ろしい毒草がはえていることになる。
たとえばBryonia Albaだ。
この本では少量の草汁でも効果がある。大匙3~4杯で死を招くとある。
その事例としてある話はこうだ。
ある男は来る日も来る紐見るに耐えない洗剤の宣伝を見せられる事に辟易していた。
彼はBryonia Albaの汁入りのボンボンを社の広報部に手紙を添えて送った。
手紙には製品を称え、毎日テレビコマーシャルを見ていると言うほめ言葉が長々としたためられていた。
喜んだ宣伝担当者はボンボンを部署の仲間に配り、自分も早速食べた。
すると恐ろしい咳の発作、のどの痛みに襲われ、あるものは体を痙攣させて苦しみ始めたのだ。
担当者は力を振り絞り電話で助けを呼んだが
助けが到着したときにはすでに遅く皆こと切れていた。
というような具合だ。
Bryonia Alba:”Bryo" はギリシャ語から出て”育つ”の意で昔から体を”浄化、掃除”し、皺取り効果があるとされているらしい。Bryoniaを油、またはワインに漬けて腫れ物や傷にまた、蛇にかまれたときに塗布する。"事件簿"では咳の発作が始まって大事になるが、実は咳止めの効果もあるらしい。
中世では更にレプラも直ると信じられていたそうだ。
Hildegard von BingenはBryoniaを煮詰めて脚の腫れた患部に塗布するとよしとし、煮詰める匂いは蛇やかえるを追い払うと書いている。また便通を促すにも良いとある。
面白いのは魔法薬としても利用されたという話で、この植物を靴の中に忍ばせてまじないを唱えながら踊りに行くと恋人が見つかると言われていたらしい。
華奢な上靴に足を閉じ込めて踊り続ける時には、Bryoniaの薬効で腫れ癒えたかもしれない。
更に媚薬としても力を持っている毒草(薬草)なのだという。
また現在でもホメオパシーの薬としてつかわれているわけで、やたらに死を招く毒草というわけではない。素人がやたらに手を出さないほうが良いだろうとは言えむしろ色々に役立って来た薬草のように見える。
そういうわけで、書かれている”事件簿”が単に創作なのか事実なのかわからないのだが、本作は一点ものとして制作され、オーストリアの個人図書館に収蔵されていたもので、後にこれを見つけた人が出版したという話だった。
いずれにせよ、植物と怪しい事件簿の組み合わせはどこか心くすぐるものがあってニヤニヤしながら面白く読んだ。
Bryonia Albaは非常に強い植物で私のテラスでも蔓延り始めるとすごい勢いだ。むしっても根を掘り出しても、ほんの少し残っているとまた茂って根を太らせる。
恐ろしいほどに根の成長は早い。
葉も花も実もなかなか優雅な風情で私は嫌いではないのだが、何しろの植物を覆い隠す勢いなので戦うことになってしまうのだ。
こういう本は私が作ってみたかったなあ、と思う。