土曜日にはアイフェル地方のへ絵描きのDを訪ねる。
農家をコツコツ改装したアトリエ付きの家に人間二人と犬猫一匹ずつがなかなかに良い生活をしている。
築200年の農家
以前厩舎だった小屋の一部
やけに広い庭
ハーブの一角。自前のハーブをたっぷり使ってピザを焼いてくれたD。
自然の造形美。かなわないね。
二階にはなかなか素敵なアトリエ兼展示室がある。(残念ながらアトリエ兼展示室の写真は撮ってこなかった)
この秋10月にはこの付近一帯アトリエオープンドアーで、今回誘われた私は彼のアトリエで参加することになった。祭りだ。
趣のある部屋なので、面白いインスタレーションができそうだ。
良い感じに崩れそうな壁や、使い込んで黒光りしているゆがんだ床の小部屋に、品良く本のオブジェなどが数多くなく点在しなかなか瞑想的空間だった。楽しみだ。
本といえば先週木曜日の話になるのだけれど、妙な事があった。
友人Bの展覧会が近所であったので見に行った帰り、私達はアトリエでしばし休憩することになった。
のんびり雑談しているとドアをノックする音が聞こえたので見れば家主のRである。
『君のね、本があるんだけれど。。。こっちに』という。
話が全く読めない。つかめない。本?って一体何のことなのか?
彼の背中について事務所に行くと玄関のテーブルに数冊の本が積んであるのが見えた。
全て日本語だ。誰が持ってきたのかわからないし誰のものかもわからない。
『僕は日本語読めないから、これは君のでしょ。。。。この近所で日本語読めるのは君一人だし』といって渡された。
伝える言葉プラス/大江健三郎
日本語と私/大野 晋
人称詞と敬語/三輪 正
意識の形而上学/井筒 俊彦
日本語の成立証明/パク ビョング シク
ヨーロッパを見る視覚/阿部 謹也
なかなか面白そうな本だが私の本ではないし注文したわけでもない。本の間に一枚の名刺が挟まっているのだがその名前に覚えは全く無い。その名刺が差出人のものなら未知のドイツ人の仕業だ。
日本語の本を偶然入手したドイツ人がいたのかもしれない。売り払うにも誰も買ってくれそうも無い。そういえばあの辺鄙なところでアトリエにこもっている日本人が居るらしいから進呈して喜んでもらおう。。。と、思いついたということなのだろうか?
たまたま留守中に立ち寄って黙って本を置いていったということか?
何か一言メモをつけてくれたらいいものを、挟まった名刺が本を持ってきてくれた当事者かどうかわからない。中古の本には色々な物が挟まっている事があるものだ。(手紙なども挟まっているのを見かけたこともある)
名刺を眺めながら首をかしげている。
とりあえず名刺の主に短い便りをしたためた。ただいま返事を待っている。
来週は又少し気温が上がるらしい。
この数日ジャケット無しには外に出られなかった。15度からの気温差が短期間に上下するのはなかなか疲れる。