電車の中で重そうな手提げの中から彼女は、おもむろに雑誌を取り出してパラパラと頁をめくり始めた。
目当ての頁が見つかると既に右手にはボールペンが待機中で、スルスルと頁に文字を書き込み始める。
クロスワードパズルである。
スルスルスルスルと文字が箱の中に埋まってゆくのがこちらから見えている。
電車の中での暇つぶしにはクロスワードパズルは悪くない。
私も自分でパズルを作ったりしながら電車の中を過ごしていることもある。
パタッ。雑誌が閉じられる。
表紙を見ると面白くもなさそうな極薄い女性雑誌だ。
もう完成したらしい。
ガサゴソ。手提げの中に用済みの雑誌を戻し、何か物色している。
するとまた別の雑誌が現れてパラパラと目当ての頁を開きスルスルと書き込みが始まる。
たまに、ほんのたまに窓の外に視線を投げるが、彼女の頭の中ではある言葉を捜すのにいそがしいという様子が明らかに見て取れた。
スルスルスル。
パタ。
ガサゴソ。
彼女の手提げの中には一体何冊の雑誌が詰め込んであるのだろう。
再び現れる雑誌。
まるでサッサッとやらねばならない仕事を片付けるが如く、きっぱりとした感じに次々に雑誌を取り出してはスルスルと書き込んでゆくのだ。
その早い事といったらなかった。
電車の中の暇つぶしには色々あるものだ。
例えば私の場合、このクロスワード女性が一体何故こんなに沢山の雑誌を手提げの中に一杯に詰めているのか?と言う話を頭の中ででっち上げるのに暇な時間を費やしていた。
話が出来上がる前に下車しなければならなくなって、それは尻切れトンボですぐさま粉々に消えてしまったけれども。。。
ところで何で尻切れトンボというのだろう。
尻の切れたトンボがどうしたというのだ?
誰かご存知の方いらっしゃいませんか?
上の写真とは全く関係ない話だった。