カウボーイがやってくる。牛がのそのそ歩いている。
天を突くように大きな尼僧がやってきて牛の隣に並ぶ。
ミニチュア・スーパーマンが父親に手を引かれて赤いマントをたなびかせる。
ビール瓶を持った蛙が二匹がキオスクから出てくる。
ライオンやウサギ、ソンブレロを被ってポンチョを着たメキシコ人、ミツバチに悪魔、ドラキュラ。フランチェスカーナーの僧。。。。魔術師?
あれはビートルズ?
あれは何処の星から来た人たち?
。。。その他不明な人たち。
大きくてにぎやかな街へ向かう電車は不思議な人たちで一杯で、その上電車は次から次へやってきた。
小さな町へ向かう電車は電車時刻表に穴が開いたのかなかなかやってこない。回送車が2台も続いて走り去る。
私は小さな街方面に向かっていたのでこちら側の停留所には私のほか普通の人間が2人で、30分も待ちぼうけする間に、向かいの停留所の魑魅魍魎達は次々に街へと運ばれて行くのだった。
ガラガラの電車に乗ると隣の席にはドラキュラの親子が青白い顔をして外を眺めていた。
私の前にミツバチがやってきて座り、間もなく赤頭巾ちゃんもやってきた。
ミツバチ娘は寒いのに半袖で足元も寒そうだ。黒い点々が頬っぺたに20個くらい描いてあるが、幾つかはすでに消えかけていた。
二人の会話を聞いていると黄色い運動靴が2サイズも小さいらしく痛いようだった。
無理して黄色にしなくても良かったのに。
「私がコスチュームを着たら、お父さんが”おっ、水兵か!”なんていうのよ、縞々だからって色が違うのに色盲かしら?
それから外に出たら隣のおじさんが”オッ、今年は囚人か?”っていうのよ。やっぱりあれは色盲ね」と悔しそうに話していた。
赤頭巾ちゃんは美味しい物がつまった籠の代わりに白い皮バックを持っており、その中には晩御飯とかケーキとかが入っている様子は無く、出てくるのは携帯電話とMP3プレーヤーみたいに食べられそうも無いものばかりなのだった。
晴れてはいるけれど、私はまだ長めのダウンコートを羽織っている。彼女らは風邪を引かないのかと気になりながら見送った。