金曜日のオープニングが終わってから黒い雨雲のような気分を引きずっていた。疲れたのかもしれない。
いつも切り替えの早いのが唯一の私の取り柄なのだがどうもいけない。
そんなわけで気分転換をしたくて、昨日の日曜日は相棒とWuppertalにあるTony Cragg Foundationによる
Sklupturpark-Waldfrieden(彫刻公園)を訪ねることにした。
なかなか気持ちのよい山の中にあって散歩も楽しめる。
Tony Craggの作品を好きで追っているわけではないけれども、森の中で観るCraggの作品は思いがけなく悪くないなと思った。
ところが山の中に散在する彫刻を見ながら私の視線は彫刻から茸探しモードに切り替わっていった。
芸術の秋という看板が味覚の秋に架け替えられてしまう瞬間である。
。。。ということで美術鑑賞の話は今回あえて省略したい。
とにかく一回り見学し、彫刻公園の脇にあるカフェで珈琲とケーキを戴き休憩してから、Remscheidの森に散歩に行くことになった。
目当ては”茸”の状況観察だ。
日曜の午後、昼食の後の散歩時間だからか人出も多く賑やかだった。
褶曲の様子が見える岩を横目に登る。
山道に入ってまもなく茸の匂いが辺りに充満しているのに気がついた。
灰色シメジの匂いに似ている。
。。。と思えば、
Clitocybe nebularis=ハイイロシメジが菌輪(きんりん)を作っているのが見えた。
大きく息を吸い込んでわき道急斜面をあがってゆくと針葉樹の固まる一角があり、オニナラタケが山ほど出ている。
もう半分ほど収穫された後だったが、その残りの一部をいただいた。
アメリカで発見されたオニナラタケの菌床はとてつもなく大きなものだったようだが、このオニナラタケの菌床もひょっとしてこの山一つ包んでいるのかもしれない。
Armillaria ostoyaeオニナラタケ
その脇で見つけたのは
薄青いSpongiporus caesius=アオゾメタケ
鮮やかな黄色のCalocera viscosa=ニカワホウキタケ
毒キノコなのにかわいさで得をしているAmanita muscaria var. muscaria=紅テングダケ
Boletus badius, syn. Xerocomus badius=ニセイロガワリもみつけた。これもかなりよい食菌。
Helvella crispa=ノボリリュウも幾つか収穫。これは茸自体の味が無い所為かそれほど騒がれない茸だが、きくらげのような食感が良い。
その他いろ見かけたが、そんなものはどうでもよくなって踊ってしまうものを発見したのだ。
Boletus edulis L.=ヤマドリタケだ。まだ幼菌だったが4つほど収穫できた。嬉しい。
私の頭の上に漂っていた黒い雨雲が吹き飛んで消えた。食い意地に助けられたというべきか?
ゲンキンだね。
早速帰宅して、オニナラタケを茹でこぼしして豚肉と一緒に炒め、ライム、胡椒、唐辛子、塩に日とたらしの醤油で一品を作り、ポルチーニ茸(ヤマドリダケ)は少量なのでさっとバターで炒めてご飯と和え、ニセイロガワリとノボリリュウはオリーブオイル炒めにしてみた。
おかげで思わずおいしい秋の味覚を楽しむことになった。