
9月24日
二人展のカタログレイアウトの為に友人のグラフィックデザイナーを訪ねた。
大まかな方向を話し合った後、友人が借りている庭に行くことになった。市が経営している貸し庭システムで、小さく区切られた土地をそれぞれの借主が思い思いに工夫を凝らして庭を作っている。庭小屋が埋もれそうに緑の茂る庭があった。どんな植物でも見つかりそうだ。この庭の主は夜にしか現れない。彼女は暗闇の中で種蒔きをするという。そんな話を聞いてもう一度眺めれば、魔女の庭という景色があった。黒魔女か白魔女かしかと区別はつかない。
欠けた小さな如雨露が傷んだ芝生に放り出されているきりの庭を管理するのは何処かの劇場の役者で最近は滅多に来ないらしい。
その隣の盛り盛りと湧き上がる様な茂みが友人の庭だった。蔓の間に見過ごしてしまいそうな木戸が入り口ですべてが野性的な勢いで繁っている。庭の様子はその持ち主を反映する。マルメロの実がたわわに実っていた。
このような景色は我が家の箱庭では望めない。猫の額ほどの庭で良いから欲しいものだ。(所で、猫の額とはどんな大きさを示すのか?)
豊かな秋のひと時を過ごした後、家路につく。景色が金色の夕陽に染まって眩しかった。このところ珍しく天気が良いのだ。
9月25日
今日も良い天気だ。(おかげで台所側の窓ガラスの汚れが目に付くのは、今日の所見ない振りをする事にした)
昼過ぎに知人のアトリエオープンドアを訪ねた。アトリエハウスは廃校になった校舎だ。いっとき過ごした後、時々歩く森へ行ってみたが、この所雨の少なかったせいでカラカラに乾いた様子だ。キノコも極端に少ないのでちょっと残念だ。
今朝からカズオ・イシグロの「充たされざる者」を読み始めている。
夢の中の様な物語の進行。あちこちにちりばめられた意図的な違和感によって、度々ページを逆に辿って確かめつつ、なかなか先に進めないのだった。