先週末の事。
今週からマーストリヒトで始まるグループ展に出す作品を企画人に届けるためにオランダのロールモントと言う街に行った。
展覧会を企画をしたのはスペインはマラガに17年住んでいるオランダ人。
ロールモントには作家でありながら小さな画廊を企画している人物がすんでいる。
住処を訪ねると中々良い住まいで、丁寧に自分たちで手を入れた家はうらやましいほどに隅々が生きている。
ロールモントはリンブルク州にあって、この地方の方言はかなり難しい。
我々の話しているのはオランダ語じゃないからね、なんていう始末だ。
どちらかといえばドイツはケルンの方言に近いらしく、ケルン人とリンブルグ人がお互いそれそれの言葉を話しても通じるのだと、だからドイツ語を話すのは楽だとも知人は言った。知人は独特ななユーモアを持って話すひとだから、時々信じていいのかどうか至極単純な私は判断不能に陥る事がある。しかし確かに
複雑な歴史を持っている場所なのである。
詳しいことはよく知らないので、この件においてはとりあえず棚上げしておこう。
さて、知人の行きつけの飲み屋に向った。
燦燦と明るい外のテーブルはすっかり満員で仕方なく暗い店の中に席を見つけて落ち着いた。
知人が店の給仕にオランダ語で注意を促してみるのだが中々来ない。
リンブルク語で声をかけるとたちまち気付いてくれたというのは偶然だったのだかどうだか?
しばらくしてふと気がつくと、70x50cm厚みが10cmほどの棚のような物が店の隅の壁に掛かっていて、分厚いビニールが前を覆っている。見ていると時々常連らしき人がビニールの覆いを開けては何かして帰ってゆく。
覆いの向うにはどうやら煙草箱ほどの小箱がぎっしり並んでいて、それを本棚から本をとるときのようにちょいと人差し指で引っ掛けて半分だし、何かを放り込んでは仕舞って帰ってゆくのだ。2度程その一連の行為を目撃してとうとう我慢できずあれはなんだと聞くと
「貯金箱だよ。」と言う答えが返ってきた。
つまり常連達がお釣や残った小銭を箱に入れて帰る。ある日思い出して貯金箱を覗くと飲み代が入っていたりするわけなのである。
ちょっと面白いシステムだ。
これってオランダの飲み屋では常識なのか?と聞くと〝リンブルク人”は「そうだ。」とうなずき〝オランダ人”は「今まで見た事が無かったよ。」といって笑った。
でもこういうのって楽しい。店と常連客のコントクトがちゃんと成立している場所でなければありえないことだ。
別れ際に頬に挨拶のキスをリンブルク・オランダ人は右左右と3度し、オランダ・マラガ人は右左の2回だ。
「オランダでは挨拶のキスは3回だからね。」
「スペインでは2回だよ。」
国によって回数が違ったり、それほど親しくないから1回だの親しいから3回だの、ややこしいものだな、と時々思う。
オマケ その1
白アスパラガスとジャガイモのパイ。
オランダの農家で白アスパラガスが安かったので買わない手は無い。
かなりいい加減に作ったので見栄えは悪いけれど美味しかったのは素材の所為だろうね。暖かいよりも冷えた時が又美味しいように思う。
最近アスパラガス収獲時期に出稼ぎに来る労働者達が給金が安いとドイツに背を向けているそうだ。アスパラガス農家は困って途方に暮れる場合もあるらしい。来年はもうアスパラガス畑はやめてジャガイモにするしかないなどとさえいっている人もいる。
そんなものなのか?
いずれにせよアスパラガスはこれから値上がりこそしても安くはならないのかもしれないなあ。
オマケ その2

我が家の藤も咲き始めた。白い花はメキシカン・オレンジ、そしてナルコユリも花の蕾が愛らしい。