草臥れて 宿借る頃や 藤の花 (芭蕉)
友人の庭には大きな藤の木がある。
太くなった何本もの茎はうねり絡み合い巻き込み一体化している。
たおやかでやさしげな花だが木が絡まりあってぎゅっと絞めて行く姿を見るとなかなか逞しくもあるし、少し怖い気もする。
以前我が家のテラスにも割合大きく育った藤があって、花を一房採って三杯酢にしたことがあった。味そのもによりも、藤の花を食べているという事そのものにときめいた。その藤は工事の為に移植したのがきっかけで残念ながら枯れてしまった。てんぷらにして食べるという話も度々聞いて、塗りの器にふんわりと薄ごろもを纏った花を横たえたら美しいだろうなと想像する。
しかし藤の木は毒を持っているらしい。
花も葉も木も根にもアルカロイドが含まれ、豆果にはレクチン、木にはウィスタリンという毒性の配糖体が発見されているという。
ドイツで藤の花を食べるというと危険だからやめなさいと驚かれてしまうのだが、多くの野草には多かれ少なかれ毒性が含まれているものだ、どんなものでも食べ過ぎたらおなかを壊すことになるかもしれないし、ならない人もいるかもしれない。
過ぎたるは及ばざるが如し。過ぎない程度に目覚めた興味を満たしたい。
藤の花はどんな味がするのかといえば、生で食べるとさやえんどうのような味がする。豆目の植物だなあ、と納得する。
美しい花を砂糖漬けにしてみようかと思ったが、青臭さに砂糖が合うのかどうか想像すると、いまひとつという気がした。まあ、すっかり砂糖の味が勝ってしまうのだろうから問題は無いのかもしれない。
いろいろ考えた末、今回は林檎酢を少し加え塩漬けにした。
美味しくて食べることをやめられないと言うようなことにはならないだろうが、花をひとつ白米飯に乗せるとか、卵豆腐に添えるとか、心楽しい想像が花房の様に連なる。。。