散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

2015-05-03 14:56:17 | 野草を食べる


草臥れて 宿借る頃や 藤の花 (芭蕉)

友人の庭には大きな藤の木がある。
太くなった何本もの茎はうねり絡み合い巻き込み一体化している。
たおやかでやさしげな花だが木が絡まりあってぎゅっと絞めて行く姿を見るとなかなか逞しくもあるし、少し怖い気もする。
以前我が家のテラスにも割合大きく育った藤があって、花を一房採って三杯酢にしたことがあった。味そのもによりも、藤の花を食べているという事そのものにときめいた。その藤は工事の為に移植したのがきっかけで残念ながら枯れてしまった。てんぷらにして食べるという話も度々聞いて、塗りの器にふんわりと薄ごろもを纏った花を横たえたら美しいだろうなと想像する。
しかし藤の木は毒を持っているらしい。
花も葉も木も根にもアルカロイドが含まれ、豆果にはレクチン、木にはウィスタリンという毒性の配糖体が発見されているという。
ドイツで藤の花を食べるというと危険だからやめなさいと驚かれてしまうのだが、多くの野草には多かれ少なかれ毒性が含まれているものだ、どんなものでも食べ過ぎたらおなかを壊すことになるかもしれないし、ならない人もいるかもしれない。
過ぎたるは及ばざるが如し。過ぎない程度に目覚めた興味を満たしたい。
藤の花はどんな味がするのかといえば、生で食べるとさやえんどうのような味がする。豆目の植物だなあ、と納得する。
美しい花を砂糖漬けにしてみようかと思ったが、青臭さに砂糖が合うのかどうか想像すると、いまひとつという気がした。まあ、すっかり砂糖の味が勝ってしまうのだろうから問題は無いのかもしれない。
いろいろ考えた末、今回は林檎酢を少し加え塩漬けにした。
美味しくて食べることをやめられないと言うようなことにはならないだろうが、花をひとつ白米飯に乗せるとか、卵豆腐に添えるとか、心楽しい想像が花房の様に連なる。。。









細葉オオバコの蕾

2015-05-02 19:00:00 | 野草を食べる





この所散歩をしながら草を摘んでいる。
ラムソン、スイバ、イワミツバ、ミチタネツケバナ、細葉おおばこ、など春になるといろいろ気になってしまう。そして摘んだ葉を齧る。

数週間前のこと、細葉オオバコの蕾をかじるとかすかにキノコのような香りが鼻に上ってくるのに気がついた。
調べると、咳止めのシロップやお茶などの作り方は沢山出てくるし、若葉をサラダに混ぜるという話は沢山見かけたが、蕾に関してはそれほど多くない。数少ない情報の中に、この蕾をオリーブオイルにつけてスパゲッティに和えたという人があって、試してみたくてうずうずした。
探しに行くとライン川の土手で蕾が一面ゆらゆらしている場所をみつけ、一握り摘んで持ち帰り、洗って乾かした蕾をジャムの空き瓶に詰め、美味しいオリーブ油を注いで、窓辺に置き、度々眺めては、どうやって使おうかと思い巡らせて楽しんでいた。
それから二週間ほど経った昨日、友人宅で「細葉オオバコの蕾オリーブオイル漬け」を使う事になった。
おそるおそる瓶の蓋を開けると嬉しくも良い香りが鼻を撫でた。オリーブオイルの香りの間に例のきのこ風な香りがしっかりと同居している。
ニンニクを刻み、赤唐辛子を刻み、少量のベーコンを細かく切って炒め、湯がいたパスタを投入。そしていよいよ細葉オオバコの蕾オリーブオイル漬けを一個二個と恐る恐る入れていたが、いっそのこと味をはっきり確かめたい決心で、大さじに掬って麺の中にばら撒き、オイルをたらりたらりとかけまわした。
そしてこれが予想以上に美味しかった。

庭で摘んだハーブや、藤の花房から少し花を戴いたものを飾りけて目にも楽しい。
友人宅の満開の藤花むせ返る庭という空間も加味されていたのは言うべくもないが、スパゲッティを大きく頬張りながら、明日細葉オオバコの蕾を探しに行き、もう一瓶作っておこうと心に決めていた程に気に入ったのだった。















西洋ブナの芽
森の散歩のスナック。