散歩絵 : spazierbilder

記憶箱の中身

花船

2008-03-30 06:38:17 | 植物、平行植物


Camellia japonica 'Duftglöckchen'


水溜りの中に泳ぐ花船。


我テラスの風景を切り取った一枚である。
このように写真に撮ればなかなか風流な風景を想像できる。。。が種を明かせばテラスに放ってあった黒いプラスティックのバットに雨水が溜まっていたのだ。
そこに落ち椿を浮かべて遊んだ。しかし見えない部分については沢山奮発して豪華なイメージを膨らませておいて欲しい。







日曜日。

ネアンデルタールを散歩した。
地名の示すとおり、この地にネアンデルタール人の化石遺跡が発掘されている。
石灰石の採掘場があり、そこから発掘された。今ではすっかり特徴のない景色になってしまったが、おそらくかつては鬱蒼として、入り組んだ谷だったのだろう。ネアンデルタール人が闊歩していた頃にはどんな森が広がっていたことか。
花屋に行った帰りだったのでちょっと一回りするだけのつもりが、結局2時間ほどで10キロ歩いた。16,7度に気温が上がって着ていたコートが邪魔になり汗をかいたが気持ちの良い散歩になった。
散歩をしていて小道で向かいから歩き来る人あれば、ちらりと目を合わせて挨拶をする人もあり、こちらが挨拶をしても気づかぬものか黙って通り過ぎる人あり色々だが昔に比べて挨拶を交わすひとがかなり減ったように思う。明らかに取り付く島もないというバリアを張って歩く人達もいて、こんな場合は声かけ難しだ。
笑顔で挨拶を交わし合えば一層楽しい気分になること間違いなしなのだけれど。
出来れば忘れたくないことだと思う。
気配に首を上げるとゴジュウガラが木の幹にさかさまになって止まっていた。かわいらしい小さな鳥だ。
視線を下に向けるとAnemone nemorosa L(ヤブイチゲ)が群れを成してまるで満点の星空のようだった。ヤブイチゲはProtoanemoninを含むので、花を手折って汁が肌につくと場合によっては炎症を起こすが、使いようで薬として利用され、たとえば関節病などにこれを外用したようだ。今でもホメオパシーの世界では使うこともあるらしい。
春一番に咲く花の一つで見つけると嬉しくなる。

Sauerklee(Oxalis acetosella)が小さな岩の根元に一群れ固まって咲いていた。
丁度そこを通りがかったとき三脚やカメラを担いだ御仁が一心にカメラアングルを検討していたので邪魔せず通りすぎた。
Oxalis acetosellaの葉は齧ると酸い。シュウ酸を含むため多く摂取すれば毒ではあるが、この葉を山ほど食う人はいないだろう。昔はこれで鏡や金属を磨いたという。地味で見過ごされてしまいがちな花だがよく見ればその葉も花も完璧な美しさを持っている。

散歩から帰ってソファーで本を読んでいたら、久しぶりの散歩疲れでいつの間にか眠ってしまい気がつくと背中や首が固まってほぐすのに苦労した。


一昨日から夏時間に突入。それなのに又寒くなるだの雪が降るだのという予報もあり。予報が外れればいいけれど。。。






覚え書き

2008-03-25 08:06:00 | 映画の話




★映画メモ

Swimming with Sharks「THE BUDDY FACTOR」 1994年

知人のお勧め映画DVDを見た。
これは意見が両極端に分かれる映画かもしれないが、私にはなかなか面白かった。
こいつは酷い奴だなと思ってみていると、そこに至る裏付けが見えてくる。こいつは弱そうでいい奴だと思っていたら、案外辛抱足りぬ、しかししたたかな奴か。。とこちらの見方を変えさせて行くのも面白い。
『君が本当に一番したいことは一体何?』と突き詰められて若者が最後に
選択したものは。。。
ケヴィン・スペーシーは上手いね。私の好きな俳優の一人だ。


★展覧会メモ

ベルリンから来た友人らと共にNeuss Raketenstationで現在開催中のカール・ラーガフェルド写真展を見てきた。
版画用の上質な紙に解像度の低い写真の部分がシルクスクリーンで刷られている。おしゃれな写真だ。
何かもう少ししゃっきりとした感想を述べて見たいと思ったが何も出てこない。
一度あんなふうに自分の写真を大きくシルクスクリーンで刷らせて見たいなあ、とかこの額装はあまり綺麗じゃないな、とかそんなことや美術館内の空調が上手くいっていないのか黴くさいし、空気が悪いのが気になってしまった。

安藤忠雄の手になるこの美術館の前庭には桜(ソメイヨシノではないのが残念だけれど)が数本並んでいる。
淡いピンク色の花の塊が雨雲の広がる灰色の空の下で溶け合って雨風に打たれる花も風情がある。
そしてそれを映す水面。
風が水面に施す紋は見ていて飽きない。



今日の色:橙色

2008-03-21 21:15:01 | 思考錯誤


ミカンがいくつも入った袋を買った。
ひとつひとつ食べ進むうちに、まるでお尻の様な形のミカンが現れた。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


3月19日NASAの衛星Swiftが75億光年彼方のバーストを撮影。
肉眼でも見えたと言う。

ガンマ線バースト「GRB 080319B」
Pi of the Sky 

75億光年です。約46億年経過していると推定される地球が生まれる前に起こった現象が今われわれの眼の前に現れていることを考えたら気が遠くなる。
見たかったものだ。


今日の色:ピンク

2008-03-20 19:43:21 | 思考錯誤


植えっぱなしのヒヤシンスが律儀に花を咲かせるが、ちょうど見えにくい位置に咲いているので切ってコップに活けてみた。

今日は作業場でガラスを丸く切るという作業をしていて、どうやら細かい粉のような破片が私の手に無数に刺さっているに違いない。ちくちくと痒い。
作業中時々破片が飛ぶ。
もともと眼鏡人間だから多少目の防御はできているが、大量に切る折には防御用ゴーグルをかけるべきかもしれない。
このゴーグルだがぴったり顔に張り付くのはいいが、長いことかけたままにしていると顔にその後がつくので困る事がある。

もう随分以前の話で、あるギャラリーの展覧会に参加したときの事だ。
いきなり見知らぬ人が訪ねてきたことがあった。カタログに各人の住所が出ていたわけでもなかった筈だから、画廊で聞いてきたようだった。
その当時はアトリエと住居兼用だった。作業中であったこともあって、ぼんやりと何も考えずにドアを開け、見知らぬ訪問客の顔を見てから大慌てにあわててしまった。何しろその日私はかなりいい加減な格好をしていて、そのうえゴーグルをかけてマスクもかけていた。かなり怪しげである。
私の頭の中は部屋の中の状況を瞬間思い浮かべて冷や汗をかいたが、折角来てくれたのだからと平然と招き入れた。
ここで、いきなり来るなんてどういう了見だ!まったく失礼な。。。なんてことは言わない。最近では時々見知らぬお客が来ることもあるけれど、当時そんな事は初めてだったのでちょっと嬉しく思ったことでもあったのだ。
部屋の中には朝のうちに終えた洗濯物が干してあったが『たかが洗濯物』とすまして隣の部屋に押し込んだ。
客人が帰ってホッと鏡を覗くとまだゴーグルの跡がくっきり残っていた。
アトリエを想定してきたのであろうから彼らも多分決まりが悪かったはずだ。
その所為だかどうだか小さな作品ひとつ買っていったと言う顛末。

そうそう、ガラスの細かい破片がいらいらすると言う話だったっけ。。。

いや、ピンクのヒヤシンスが健気だと言う話だった。。。

今日の色はピンク。

ところが今日は"緑の木曜”だ。
復活祭の始まりである。
なぜ緑の木曜日と言うかについては多説あって本当の所はわからない。イエス・キリストが最後の晩餐をおこなった日だ。
明日は『聖なる金曜日』
キリストが磔刑を受けた日であると言うことになっている。


Duisburg

2008-03-16 21:47:27 | 製作記録


- 先日次の2人展を行うギャラリーを見にいった。Duisburgという街だ。
  その日のオープニングは写真家と絵描きの2人展だった。
  ちょっと面白い絵が幾
  つかあった。その作家の視線はマクロ的だった。
  たとえば葉脈のクローズアップであったりする。

- 今回の私と一緒に展示する作家は紙を使う仕事をする。
  やはり重なりにこだわっているところが共通点か? 
  どんなことになるか? 不安で楽しみだ。
4月11日がオープニング。

- 今日は久しぶりに何もしない日曜日だった。
  しかし一日雨は降り続けて薄暗いそらが鬱々と頭の上に乗っていたので
  花屋に散歩に行った。
  何故かと言ったら、花屋に行けば気が晴れるからなのだ。
  少しだけ香草や小さな花の鉢を抱えて帰宅。
  やはり手ぶらでは帰れなかった。

- 明日は雨が上がる予報。











今日の色:もう一度赤

2008-03-14 10:39:34 | 写真
 


3月13日木曜日

友人達とアーヘンに出かけた。友人の一人は近く日本に帰国してしまうので、記念にアーヘンを散歩しようと言うことになったのだ。

アーヘンは古い街であるから、いたるところに秘密が隠れているようで魅力的である。

紀元前から人が住み着くような住み良い場所だったのだろう。何しろ温泉が出たのでローマ人が住みついたくらいだ。
と言うわけで、街はローマ遺跡の上に建っているといえる。

ユネスコ世界遺産であるアーヘンの大聖堂のビザンチン様式のモザイクが施された内部は圧巻である。現在煤けて黒ずんでしまったモザイク画を洗う作業が行われており光が取り戻されようとしているが、アク洗いがすめば目の眩むような美しい聖堂になることだろう。(モザイク50x50cmに付き75ユーロの寄付金を募っている。)
(写真↑)
市庁舎の前広場にはいつも市が立つ。どうと言うことのない普通の市場だ。クリスマス前にはクリスマスマーケットが出現する。数年前アーヘンで展覧会があった時がちょうどその頃で、氷のように冷たくなった手を擦り合わせ足踏みしながら白ワインと生牡蠣を食べた思い出がある。

この妙な馬の像は広場の脇に立っていたが素性がわからない。唐突である。
通りがかる人も気になるようで、つくづく眺めたり、触ったり、並んで写真を撮ったりしているのを見かけた。コックの帽子を頭に乗せて鼻眼鏡までかけている。(壊れていたけれどね)場所が場所だけにレストランの看板と言うわけでもなさそうだった。

たまに雨が降る程度で有難かったとは言え、風が冷たく震えながら街を一回りする。各人夕刻に用事があると言うこともあり、早々に引き上げたのだが楽しいひと時だった。











おまけ

 この古いカフェで  このライスプディングケーキを注文すると、なんとタルトの4分の一が皿の上にデンと座ってフォークを脇腹に突き刺されて登場した。(こちらではケーキにフォークを突き立てて出てくることがある)日本では見かけないだろうサイズに慣れている私もこの大きさに一瞬おののいたが、気を取り直して食べ始めると、甘みを抑えたやさしい味がとても美味しいのだった。
 イースター飾りで菓子屋の窓辺は賑やか華やかである。アーヘンの名物菓子はプリンテンと言う菓子だが私は少し苦手だ。



彼女等と過ごしたモザイクの欠片の欠片のような数時間がいずれそれそれの胸中に築かれるモザイク画の一部を担ってゆくのだろうとかと思えば、こういうひと時もいとおしくなろうと言うものだね。





プロヴィデンスの眼がアーヘン大聖堂の脇にあった。


ドーム内部360度 
其の1
其の2

今日の色:赤

2008-03-13 00:27:33 | 写真


写真整理をしていたら現れた一枚。

一昨年日本で撮った写真である。


こういう小さい鳥居をいくつか見かけた。
立ちション防止を呼びかけているのであろうが、犬に呼びかけているのか?と思うような場所に立てかけられていた。
それとも。。。。
神聖な鳥居に悪さをしたら罰があたるぞ!と言う脅かしなのだそうだが、効き目の方はいかがなものか?




●今日は春の嵐と言った感じの空模様で、風が酷く吹いた。
 


春花

2008-03-11 17:47:06 | 植物、平行植物




へレボルスが沢山咲いたので切花にしてあちらこちらに活けてみた。
部屋の中に一枝でも植物を持ち込むと空気が変わる。






菫も葉の間にうずくまるようにして咲いているのを見つけて、小さな壜に活けた。








ドイツ名:青い星。 
Scilla bifolia 我箱庭には毎年Scillaが咲くがこの写真の花とは少し形が違うので入手。


Dogumenta

2008-03-09 10:13:26 | 製作記録
そう、読み間違いではない、書き間違いではない。
DocumentaではなくDogumentaである。
知人の入っているアトリエハウスにはギャラリーがあって、年に何度か展覧会を企画する。
そのアトリエハウスはかつて犬の美容室だったことがあるので、犬をテーマに何かしてやろうということになったらしい。
それでDog-umentaである。
私も作品ひとつ参加することになっているが、Duisburgの2人展のオープニングと重なっているのでパーティーには出られない。ちょっと面白そうなのに出席できず残念だ。
大体その週末は3つも重なってしまった。
Dogumentaには私は可動型小キャビネットに引き出しが3つ、引き出しには犬の肖像と犬関係のオブジェが恭しく内蔵されているというもの。ついでに犬用手綱が付いている。企画自体がお祭り騒ぎなので遊びに徹した。

ちなみにドイツでは机の脇に置く、キャスターの付いた小型可動式キャビネットを称してHUND(犬)と言う。







今日は黄色が買った白灰色の空の日曜日。今から仕事場へ。。。
昨日は買い物であちこち出かけて、本屋で古びた活字の本を数冊購入。
一昨日の展覧会の所為かくたびれた。

Dogumenta

独り言

2008-03-07 10:31:57 | 思考錯誤


3月5日

今日は風が氷のように冷たく寒かったが、太陽の恵みがあった。
太陽に誘われて街に出かけたかったのだが(仕入れなければいけない材料がある)、ストライキで公共交通機関はほとんど動かなかった。
今回統一サービス産業労働組合(Ver.di)は強硬手段に出た。
DB(ドイツ鉄道)は今回ストライキを中止したが近距離交通機関や幼稚園、病院でのストライキは行われた。皆案外冷静に受け止めて、労働者が労働条件改善を求めるのは当然の権利であると言う答えだ。私もそうは思うが、しかし不便だというのが本音だ。
タクシー会社はこういう時には稼ぎ時でホクホク笑顔である。



3月7日

。。。。と一昨日書いたところで電話攻めにあいすっかり放り投げたままの日誌が残っていた。こういう話は生もののようなものだから、時間が経ったら気の抜けたコカコーラ様なもので捨てるしかない。。。がこのまま独り言を続ける


今日の午後はまた小さい展示をしに出かける。
パーティーもあるので、何か作らなければいけないのだが、何を作ったらいいかちっとも思い浮かばない。。。と思いながらも手は海苔巻きが出来上がる方向に動いている。中に玉子焼きだの、煮た人参だの、チーズだの(チーズこれがなかなか美味しい)ルッコ-ラだの入れて巻き込んでしまう。

私の料理熱はかなりむらがある。その気になったら一日でも料理するが、その気にならなければゆで卵一つゆでるのも嫌だ。
その気にならない日の方が最近多いように思う。今日はあまり気が進まない。
とはいえ約束は守らねばいけない。

。。。とぶつぶついいながら海苔巻きを数本作るうちに勢いが付いて来た。
黒ずんでいたバナナが右目の視線に入る。よおし、バナナケーキにしてしまえ! セロリが一株転がっているのが左方視界にキャッチされた。刻んだゆで卵とツナ缶の残りにマヨネーズを少しだけ混ぜてテラスに顔を出しているハーブも入れて、二口ほどに切ったセロリのくぼみに盛り上げてオーブンで焼いてみようか?
この際冷蔵庫の中や棚に残っている物を使って何が出来るかチャレンジしようか?などという気分になってきた。

坂の上の漬物石みたいな私は押されて走り始めると、いきなり弾みがついて暴走する傾向にあり。




夢遊:沼

2008-03-05 16:28:02 | 夢遊
ブログの記事一覧に未投稿のまま埋もれていた話を見つけた。
もう一年以上前に書いたものだ。
見た夢の部分をイメージ膨らませていたずらに書いてみたけれど、
面白くもなくまとまらず放っておいた。
消してしまおうとも思ったが折角なので投稿しておくことにした。
退屈している方だけ読んでください。








『妙なもの』を見たと語りながら彼の指差す先にはうっそうとした森がゆったりと、金色の衣をまだ纏っている。そして"沼”がその森のなかにあった。その沼は私をどこか落ち着かぬ気にさせる雰囲気を持っていた。『妙なもの』がどんな形と色をしているかとか、音やにおいがあったか、とかを問うてもまともな返事が返ってこない。散歩中に昼寝をして夢でも見ていたのだろうと笑えば、気を悪くして黙りこんでいる。
冬夜中にたたき起こされて1時間半ばかりドライブに付き合わされたことがあった。吐く息が粉雪になって足元に積もるほど寒い野原の吹きさらしで 待ちぼうけを喰った。
何を待っていたか私には未だわからないままである。前の晩に見た夢のおかげだったらしい。それに付き合う私もどうかしているが夢想家を見張っておかねばと言う建て前の裏に何かを期待していた私がいるのだろうか。
いづれにせよ、その晩『何か』が降臨するはずだったがそれはこなかったし、おかげで翌日から我々はひどい熱に見舞われた。
すっかり固まった体をウォッカで溶かしながら(私はそんなときいつも用意がいい。ウォッカの大瓶は冬の冒険に必需品である) 何とか人心地ついて帰ろうとしたとき、野原の中央で何かが強く光ったがウォッカの所為だと思っている。
多分。。。
そういうわけで、彼の言うことを本気で聞いていては私が馬鹿を見るのだ。
夢を見ながら散歩なんて器用な真似は出来ない、と不満げに後ろ手を振って彼は帰っていった。



あの後、音沙汰がなかった。私は暇つぶしに図書館へ出向いた。この図書館には街の歴史資料室がある。ということに初めて気がついた。今まで何故気がつかなかったのだろうか? もっとも私はこの図書館を滅多に利用していない。この街に関する資料は全てここに積まれているのだろうがたいした量ではない。面白半分に眺めていると一冊の本をみつけた。一度も開かれた様子のない本の頁はきっちりと貝のように口を閉ざしている。裏表紙の一文から、作家はこの街に住んでいたらしいことがわかった。『売れずの山』に深くうずもれてしまった口である。ぱらぱらめくって見る感じではラヴクラフト風味のジャンクフードといった感じが酷く胸焼けしそうだった。それでも少し読み進むと、思いがけないものにぶつかった。 
例の沼だ。
ごく大雑把に言えば、あの沼には何か不思議なことが起こる。ふうん。。。ありきたりだ。
かび臭い図書館でかびの生えそうな話を読んでいるのにも飽きて外に出た。街路樹の下のベンチに座ると、木漏れ日は空から降り落ちてくる小さな金貨のようだ。日向を見ると陽射しは極細の金糸で、滑らかに織られた布はたなびいてゆれる。美しい調べが聞こえるような景色だ。
彼は一体、こんなに気持ちの良い土曜日に何をしているのだろう?



私が部屋に戻ると留守番電話の赤いランプがいつもよりあわただしい感じに点滅しているのに気がついた。雑音が多くて良く聞き取れない伝言は例の沼が開くので今夜行く、と終わっていた。もちろんそれは夢想家の伝言だった。まあ、いい。今日はこの時期としては気味の悪いほどに暖かであるし、沼に散歩のつもりで出掛けて見てもいい。 一人で行くのはそれほど気が進まないが、あいにく私が思いつく相手はみな留守なのだ。私は袋に必要になりそうなものをこまごま放り込んでから、
自転車に乗って沼に向かった。幸い今夜は満月で思ったより明るい。ぼんやり浮かんだ森のシルエットがこちらにのしかかるように近づいてくる。色づいた葉が何かの刺激を受けるたびにパラリパラリと降り落ちてくるのが自転車のヘッドライトに照らされ、自転車の車輪に踏まれる枯葉の乾いた音が聞こえるばかりで、あたりは静寂を守っている。
沼が見えたそのとき、沼の周りに人影がいくつも見えたように思ったが木立が邪魔をしてはっきりとはわからなかった。
気が付くとあたりが急に明るくなり始めたように感じられた。
それは月明かりではなく、地面から競りあがってくるような光だ。驚いた私があわてて自転車を放り出して沼に駆け寄ろうとしたとき、何かにつまづき、転倒して小さな岩に頭を打ちつけた。頭の後ろあたりでとてもいやな音がして目の前に墨がゆるりと流れ視界を満たし、そして間もなく真っ白になった。



気がつくと
いつの間にか私は
沼の中に
立っていた。




続く。。。。

●●●

と言っても、まだ出来上がっていないのでいつになるかわからない。

ここまで読んで、なあんだつまらない物読ませて、と思った方(ここまで読んでしまった全員様へというべきか)。。。お疲れ様でした。と慰めるしか手がない。

続きはどなたか書いてくださる方がいないものか?
いかがでしょう?

箱の中から

2008-03-04 03:31:30 | 製作記録


箱の中には何がある?
古い話(歴史)の中から芽を出す新しい話がぽつぽつ展開している。




今日も忙しい空模様だった。
某画廊主が来るというので、仕事場に出向いた。。。というより今、4月初旬まではぼんやりしていちゃまずい。
画廊主は若い女性で意欲的にがんばっている気持ちのよい人だ。
雑談しているうちに映画の話に熱が入ってしまい、気が付けば彼女は次のアポイントメントの時刻に迫られて帰らねばならない時間となっていた。何のために来たのだっけ?作品選んで持ってゆくということになってたんだっけ?
結局明日の午前中また立ち寄ってもらうことにした。
私も映画の話になると結構熱が入ってくるので、盛り上げたのは私の仕業。。。だったかもしれない。
今日は木箱を3個ほど作り始めた。仕事場は埃だらけだ。陽が雲間から顔を出して窓からすっと差し込むと、部屋中がうっすらと埃の衣を纏っているのがわかる。


微粒の埃舞う様子を追いながら、なぜか"時間”を思う。