「まだ展覧会の準備中なの?終わらないの?ミスペルの実がもう落ちちゃって困っているから採りにおいでよ、いい天気なんだから。」
と友人が電話をかけてきたので、私は仕事の手順を変えて出かけた。
このかなり年上の友人は病気にも負けずいつも明るく元気が良い。
今日も汗だくになって畑仕事をしていた。
私はミスペルの実を大きな袋にいっぱい詰めてもらい、試しにリュックサックを背負って見た。
まあ、これなら20分ほど歩いても問題なさそうだ。
秋景色が美しいから写真を撮りながら帰ろうと小型カメラを取り出してシャッターを落としたのだが、さて家に戻って眺めるとどれもこれもボケている。
設定が悪かった事もあるけれど、背中のミスペルは歩くうちに”子泣き爺”に変身したのか段々重たくなってくるのだ(後で腰が痛いと泣いても、誰も同情してはくれないだろうなぁ)、そんな訳で小型のカメラさえ持つ手が揺れたのかもしれないなぁ、と写真の出来の悪さはミスペルの所為にした。
Mespilus germanicaの実は一度霜にあたらなければ甘くならない。
もらった実はまだ十分に凍えていないだろうから、今から冷凍庫に入れることにしようと思ってもこんなに沢山冷凍庫に入るわけも無い。(ちょっと途方に暮れている。)このまま食べるとタンニンが多く渋柿程では無いとはいえひどく渋くて食べられた物ではない。
実を言うと種ばかり多く食べるところの少ない手間ばかりかかる果物だ。
友人が早く採りにきてよ。。。といったのは彼女はミスペル・マルメラーデを作っている暇が無いから、私に押し付けたわけなのだ。
私も今は暇をもてあましているわけでもないので、参ったなあと言いながらもつい出かけて行って背中に背負ってきてしまう。
卑しい食い意地だな。
実はまだこの果物を料理したことが無い。とくに生食して美味しい果物では無いので味も想像が付かないのだ。やはり一度試さねばならないという気持ちがある。
つまり体よく言えば味への飽くなき好奇心かな。
(そういう風に言うと聞こえは良いのでそういうことにしておく。)
この実は渋みが抜けてから齧ると、ちょっとばかり梨のような味がするのは知っている。昔は霜に当てた実を冬の間保存してすこしずつ食べたそうだ。
酸味と薄い甘みであっても、今のように砂糖に侵された食生活ではなかった時代に於いてはそれでも十分に楽しめたのかもしれない。
。。。そんなわけで、やはりちょっとミスペル・マルメラーデを食べてみたい。
しかしどうしたらいいんだろうか?この量。。。。。