ブクログより
高齢化社会になった今、遅かれ早かれ私たちは親の介護に直面するだろうし、やがて介護される側にもなるだろう。
その親子関係が良好であるとか、険悪であるとかに関わりなく、その事態は避けられない。
主人公は、転んで骨折してしまったのをきっかけに寝たきりになってしまった母親を、姉と交代で介護している。
病院に入っている母をどちらかが毎日訪れる。
その昔、夫の介護をほっぽり出して、若い男と遊び歩いていた母親を、ふたりは快く思っていない、ばかりか嫌っている。が努めとして世話をしているが、わがまま放題の母親にホトホト手を焼いている。
家事、仕事、母の世話と多忙を極め染髪する間もない娘に向かって、「少しは身ぎれいになさい」などと言う母。
「・・・」返す言葉が無い主人公。
そんな母もやがて亡くなって、それで終わりなら単なる介護日記だが、そこから母方の不遇の女達の歴史がひもとかれる。
今や切実になりつつある老人介護や家庭崩壊、暗く重いテーマだけれど、最後に少し希望が見えたかな。
NHKのラジオで「ラジオ深夜便」という番組があって、まさしく深夜放送なのでたまにというかほとんど聴かないのですが、いつだったかふっと夜中に目が覚めて眠れなかったのでこれを聴いていたら、たまたま今月の書評コーナーというのをやっていて、この本が取り上げられていました。
なんだかとてもほめておられたのですが、なにしろ夢うつつで聴いていたので、明くる日ネットで調べて早速手にしたのでした。
水村美苗さん、初めての作家さんでしたが、名前の通り水が流れるような静かな静かな作品でした。
母の遺産 新聞小説 / 水村美苗
★★★★☆