ブクログより
切ない物語と、団子売りの三島屋変調百物語のシリーズ。
摩訶不思議な力であらゆる火災を鎮めるという神器「火焔太鼓」にまつわる悲しくて娘が語る、両親についてのこれまた悲しい物語「一途の念」
最後は表題の「魂手形」
木賃宿の亭主が昔の泊り客について語る。
その客とは、成仏できずにさまよっている幽霊と、その幽霊をうまく成仏できるように導く水先案内人。
なぜだかふたりと交流のできる宿の息子(語り部)は、最初は恐る恐る仕事として接しているうちに、二人の事情も少しづつわかってきて、同情を通り越して憤怒にかられ、最後には幽霊になり替わり復習を果たし、幽霊は無事成仏をするという、怖いけれどこれまた悲しくて許せない話。
この話は、この語り部についてより深く掘り下げ、生い立ちから子供時代、後妻に入った母親のこと、結婚してからのことなど、不思議な物語とは別に、周辺の事柄が細かく描かれていて、中々読ませる短編になっている。
また今回、装画や挿絵のイラストが何ともかわいく、目が二つちょんちょんと付いただけの丸い物体や、お化けみたいのが暗い水の中に浮いたり漂ったりしています。
復讐の化身となった猿(ましら)も怖いというより愛くるしい。
全編重くて暗い内容なのに、このイラストにほっとしながら読み進められた。
魂手形 / 宮部みゆき