大分の私立中、遺族の卒業式参加を拒否 体育の授業中に倒れ死亡 (東京新聞2017年4月17日 朝刊)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017041702000116.html
東京新聞のこの記事に、私のコメントがでていますので、ご紹介します。
共同通信(大阪)の記者さんに先週金曜日の夕方、取材を受けました。
なので、共同通信からの配信記事を東京新聞が紙面に載せたものと思われます。
それにしても、この記事、記者さんがかなりトーンをおさえて文章にしてくださってますが、私は取材のときに「論外」とバッサリ、この私立学校の対応を切ったんですよね。
あわせて、文科省や弁護士らの専門職の対応についてもダメだししています。
取材ではだいたい、以下の4つのことを言いました。
(1)まず、「指針」(=文部科学省「学校事故対応に関する指針」のこと。以下同じ)の趣旨からすると、この私立学校の対応は「論外」。こういう事態にならないようにするための「指針」なんだから、法的拘束力があろうがなかろうが、それを参考にすべき。法的に責められなくても道義的にずっとこの私立学校は「あれはダメだ」と言われ続けるが、それでいいのか?
(2)今回、大分県の私学行政は一定「指針」の趣旨に即した対応をするように、この学校に働きかけている。にもかかわらずこういう対応を取るのであれば、今後、私学に対しては何か強制力のある対応をしなければならなくなる。「私学自治」の原則からすると、そういう対応を避けなければいけないが、それを避けるためにも、実は「指針」に即して当該の私立学校自体が自ら襟を正さなければいけないはずである。私学の自治、私学の自主性は、「法的に責められなければなにをやってもいい」というものではないはずである。ここでも、私学の道義的な責任が問われている。
(3)さらに、やはりいくらいい制度や「指針」をつくっても、それを現場で運用する人間の発想が切り替わらなければ、その趣旨はなかなか実現しない。今後は学校や教育行政の関係者、研究者や専門職を含め、「従来の事後対応ではダメなんだ」ということを理解し、別の対応に置き換えていけるよう、「人を育てる」ことに力を入れなければいけない。
(4)そして、この件でも、当該の私立学校の弁護士がこういう対応を「よし」としているのであれば・・・。今後「スクールロイヤー制度」導入についても「再考」が必要。少なくとも、学校側の顧問弁護士が事後対応を混乱させている面もある以上、自分たちの身から出たさびを落とすことなく、スクールロイヤーを導入するのはやめてくれといいたい。
最後に、「卒業式を混乱させない」とか「学校の評判を落とさない」とか、そういうことを意図して私立学校側がこういう対応をしたのかもしれませんが、このような記事が出ることで、かえって問題を後々まで残してしまいました。そう考えたら、こういう従来型の事後対応、つまり被害者家族を「黙らせる」形で「沈静化」するタイプの事後対応は、もはや「効果なし」なんですよね。
こういう従来型の事後対応を転換するために「指針」ができたわけだし、私の書いた『新しい学校事故・事件学』という本も、その「指針」の趣旨やその背景について論じたものです。
そこがわかってないのであれば・・・。やはり、私は「論外」な対応と言わざるをえません。
<追記>
あと、このくらいのことは、私以外の学校事故・事件研究をやっている研究者・専門職も言えないと、今後おそらくダメ。調査委員会の報告書まとめて学校や教育行政に改善を求めないといけないとき等々、肝心なときに役にたたない。だって、ダメだしできる度胸がないんだもの・・・。
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