できることを、できる人が、できるかたちで

京都精華大学教員・住友剛のブログ。
関西圏中心に、教育や子ども・若者に関する情報発信を主に行います。

市政改革プラン(素案)の中身のひどさ

2012-05-28 09:15:28 | 受験・学校

http://www.city.osaka.lg.jp/shiseikaikakushitsu/page/0000166819.html

昨日に引き続き、この大阪市の「市政改革プラン素案」のパブリックコメントの件です。

私は一応、昨日、下記の項目について、「これは撤回してほしい」「これは見直してほしい」という趣旨でコメントをつけて、メールで送信しました。主に子どもに関わる施策、社会教育・生涯学習に関する施策、文化施策や人権施策に関するものが中心です。

幼稚園・保育所の民営化、子どもたちの野外活動施設、公営プール、スポーツセンター、生涯学習センター、市音楽団、市民交流センター、識字教室、1歳児保育への補助、教育相談事業のサテライト(=かつてのほっとスペース事業)、男女共同参画センター(クレオ大阪)、子どもたちの体験活動、子育て支援(子育ていろいろ相談センターの廃止など)、障害者スポーツセンター、環境学習センター、キッズプラザ運営補助、文楽協会・大阪フィルハーモニーへの補助、区民利用施設(区民センターなど)、放課後事業(子どもの家など)、ファミリーサポートセンター、学校元気アップ地域本部、学校の一般維持運営費、保育料軽減、学校給食協会交付金。(追記:あとで人権博物館と、朝鮮学校を含む学校法人への補助金も追加してパブリックコメントを送信しました)

ひととおり並べてみて、「まあ、こんだけ、よくも予算削減・統廃合の対象にリストアップしてくれたものだな」と、率直に思いました。ある意味、大阪市の子ども施策や社会教育・生涯学習施策、あるいは人権施策や文化施策などで「重要」とおぼしきものの多くを「切る」姿勢を示した、といえばいいでしょうか。これが「ゼロ・ベースでのグレート・リセット」なるものの内実です。

と同時に、まだ「基本方針編」を読んでいないのですが、これらの施策を打ち切るとか、施設統廃合や予算削減などを提案してくるページを見ていると、だいたいこの素案作成者が、次のような方針で大阪市の改革を考えているのではないか、ということがすけて見えました。

(1)まだ具体的な区割り案も、都構想の全容も判明していないのに、「将来的に8~9の特別区に移行」することや「新しい基礎自治単位」ができあがることを前提にして、「その8~9の特別区に1つ」という形で施設の統廃合を検討している面があること。また、誰が就任するかわかっていない「公募区長」就任を前提にして、「各区で」という形で議論を投げている面もあること。

(2)学校選択制の導入を一方ですすめようとしているなかで、なにか地域コミュニティ単位で施策を考えるときには「校区等」「中学校区」などの言葉で説明をしていること。学校選択制の導入は地域社会における子どもどうしのつながりを解体し、子どもを仲立ちにした保護者や地域住民の関係を崩すにもかかわらず、一方で「校区等」のコミュニティ単位を維持させようというのは、どう考えても無理があるのですが。

(3)施策の検討において「比較他市」というのが繰り返しでてくるのだが、その他市の低い方向に大阪市の施策をあわせようとしている。つまり、子ども施策などの「低位平準化」を目指す方向で大阪市の今後の施策を提案していること。(しかし、どうしてより条件の悪い都市に合わせなきゃいけないのか?)

(4)素案で提案されている内容と、関係法令の趣旨との整合性があまり考慮されていない。たとえば、先日可決成立した大阪市教育行政基本条例の第8条3項の趣旨からすれば、子どもや成人の学校外の学習施設(=社会教育・生涯学習施設)の維持・運営は、これからの大阪市の行政の大きな仕事であり、市教委・市長双方の協力によって実施すべきことです。にもかかわらず、上記のとおり、数々の施設が統廃合の対象になっているのは、いかがなものか。また、「音楽文化の振興のための学習環境の整備等に関する法律」や「文化芸術振興基本法」などの法律の趣旨からすれば、国との連携・協力のもとで、文楽や音楽などに関する施策を大阪市として実施すべきところだと思うのですが。

(5)さまざまな施策を打ち切ったり、あるいは公的施設の統廃合をすすめることは、ある意味で行政が担ってきた公的なサービスの後退をすすめるわけですが、そういうことをしても、そのすきまに民間が簡単に参入してくれるとか、住民がその公的な取り組みを担ってくれると、安易に考えているのではないかと思われること。民間企業であれNPOであれ、あるいは住民の自治組織であれ、参入のためのしくみや参入を促進する何らかの枠組みがなければ、入りたくても入れないのではないかと思うのですが。

(6)また、ここに参入する民間企業やNPOにどういう条件を課すのかについても、何も考えがなさそうだと思われること。たとえは保育所を民営化していくことを仮に是としても(私はあまりおすすめしませんが)、その民間委託する相手先である保育所にどういう条件を求めるのか。子どもの成長や生活の保障という観点から、あるいは保護者の就労等の支援という観点から、さらには、そこで働く保育労働者の権利保障という観点から、いろんな条件をつけて民間委託を行う必要があると思われるのですが、そういうことについては何もこの素案では触れられていませんね。

というような次第で、「どうしてこんな素案がいいものだと思えるのか? 私はぜんぜん、いいものだとは思えない」と感じて、昨日は一日かかって、パブリックコメントを送ったのでした。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« このパブリック・コメント募... | トップ | 悲しい出来事に向き合う知的... »
最新の画像もっと見る

受験・学校」カテゴリの最新記事