映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は物語を彩る音楽もすばらしく、心に残りました。
Manchester by the Sea Soundtrack (Warner Music)
メサイアなどのバロック音楽が多かったですが、物語の舞台となる小さな海辺の町の、どことなく寂しげな詩情あふれる風景、そして贖罪や鎮魂といった物語のテーマにもふさわしいと感じました。
特にクライマックスの場面で最初から最後までたっぷりと聴かせてくれる「アルビノーニのアダージョ」は圧巻のひとこと。映画のシーンと相まって、胸がしめつけられるような衝撃と感動を味わいました。
Albinoni: Adagio in G minor
(映画のシーンは含まれていません)
オルガンと弦楽器で演奏されるこの曲。ピアノ用に編曲された楽譜が欲しくなってヤマハのサイトをのぞいたのですが、アレンジが今ひとつ気に入らなくて今回はやめにしました。やはりこれはクラシックでしょう、と全音のピアノピースも当たってみたのですが、なんとこの曲が廃版になっていたのです...残念。
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映画やテレビでもおなじみで、誰もが一度は耳にしたことがある名曲ですが、以前NHKの「ららら♪クラシック」という番組で、おもしろいエピソードをやっていました。
偽作?傑作?誰の策? ~アルビノーニのアダージョ~ (2016/10/01放送)
アルビノーニは、バッハと同時代に活躍したバロック音楽の作曲家。この曲は、イタリアの音楽学者レーモ・ジャゾットが、第2次世界大戦で破壊されたドイツ・ドレスデンの図書館でアルビノーニの自筆譜の断片を発見し、それをもとに編曲したとされていました。
楽譜が出版されたのは1958年。当時のバロック音楽ブームと相まって話題をよび、大人気曲となりました。しかしその後の研究によって、今ではこの曲が、アルビノーニではなくジャゾット自身が作曲した作品であることが判明しています。
批判も浴びたジャゾットですが、この曲が名曲であることには変わりありません。これまでにも、オーソン・ウェルズ監督の「審判」(1962)、メル・ギブソン主演の「誓い」(1981)など、さまざまな映画音楽として使われています。