ディズニーアニメーションの「美女と野獣」(1991) をエマ・ワトソン主演で実写映画化。「ドリームガールズ」のビル・コンドンが監督し、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンスらが共演しています。
アニメーション版は見ていませんが、舞台はブロードウェイと劇団四季と見ている大好きなミュージカル。You Tubeでサウンドトラックを聴きながら公開を心待ちにしていましたが、家族の予定が合わなかったり、予約がなかなか取れなかったりですっかり見るのが遅くなりました。当日ははりきって、ベルのドレスにあわせて黄色を身に付けてでかけました。
おなじみのプロローグに続いてベルが登場し、元気に朝の歌を歌い始めると、一気に物語の世界に引き込まれました。ストーリーも結末も知っているのに、これほどまでに心を奪われてしまうのは、やはりアラン・メンケンの音楽の力。映画を見ながら感動して何度も涙してしまいました。
聡明で進歩的な考えを持つがゆえに、保守的な村の中で疎外感を感じているベルが、その外見ゆえに心を閉ざしてしまっている野獣の孤独を理解して、心を通わせていく...という従来の物語のエッセンスはそのままに、若干のバージョンアップを加えて、多様性を受け入れることの大切さをさらに強調しているように感じました。
美しいだけでなく、自分の世界を持っていて、勇気があって好奇心旺盛のベルは、今の時代にふさわしいヒロイン。そしてこのベルを演じるのはエマ・ワトソンをおいて他にいない!と思うほどぴったりのキャスティングでした。
村で一番のハンサム、ガストンを演じるのがルーク・エヴァンスというのも説得力のあるキャスティング。たしかに自信家で無神経ではあるけれど、意外とお茶目なところもあるガストンですが、途中から野獣への嫉妬と、誇りを傷つけられた怒りから、とんでもないモンスターに変貌します。
でもそれ以上に恐ろしく思ったのは、ガストンの一言で、村びとたちがひとつになって、見たこともない野獣に憎しみを募らせ、戦いを挑むところ。それでいて最後に魔法が解けた時には、何事もなかったかのようにちゃっかりお城のダンスパーティに参加していて(喜ばしいことではあるのだけれど)少々唖然としてしまいました。
ル・フウだけはガストンのやり方に疑問を感じながらも、でも表向き逆らうことはできなくて、お城での戦いの時に小さな抵抗を試みるところがかわいかった。そしてそんなル・フウをちゃんと理解しているポット夫人の包容力にも胸が熱くなってしまいます。
野獣は見慣れてくると、だんだんすてきに思えてきて、最後は、何も王子にもどらなくてもよかったのでは?という気がしてきましたが、それこそがディズニーが言いたかったことなのかもしれません。ベルが王子に「ヒゲはないの?」と、はにかんで言っていたのがおかしかったです。
お城の道具たちも、人間の姿にもどりたいと言いつつ、実はあの不思議な連帯感を楽しんでいたのではないのかしら? 人間にもどるということは、すなわち現実社会にもどることでもあるのですから。
お城の道具たちが人間にもどった時は、初めて声と姿が一致して、あっ!という驚きとともに、ちょっとしたカタルシスが味わえました。イギリスの名優たちがずらり~とそろっていて圧巻。魔法が解けるのが名残惜しくなるほどの、夢のようなひと時でした。
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