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美女と野獣(アニメ版・フランス版)

2017年05月24日 | 映画

公開中の「美女と野獣」に関連して、1991年のディズニーアニメ版、2014年のフランス実写版を見ました。

美女と野獣 (Beauty and the Beast・1991)

実写版とはほぼ同じロマンティックなファンタジーですが、今回見て一番驚いたのは、女性が本を読むとロクなことはないという価値観や、ガストンが女性をモノとしか見ていない言動が平然と描かれていたこと。1991年はこうした考えがごくふつうに受け入れられていたのですね。

2017年版はストーリーやキャラクターはそのままに、細かいセリフなどにおいてジェンダーへの配慮がかなりなされていると感じました。(ベルが読書好き、ガストンが横暴というキャラクターはそのままですが、性別と関連づけていない)今回の映画化は、単なる実写化という以上に、ディズニーにとって必要なリメイクだったのだと理解しました。

2017年版は「見た目はどうあれ、おばかで戦争好きのガストンより、知的で心の痛みを知っている野獣の方がずっと魅力的」とごく自然に受け止められましたが、これは私たち自身の意識の変化でもあるのでしょうね。

それから、”ベルが、自由な生き方を求めて歌いながら丘の上へと駆け上がっていく”シーンは1991年にもありましたが、2017年の実写版では映像の広がりがすばらしく、自由への渇望がよりみごとに表現されていると感じました。大好きな「サウンド・オブ・ミュージック」の冒頭の場面を思い出しました。

美女と野獣 (La Belle et la Bete / Beauty and the Beast・2014)

1740年に書かれたヴィルヌーヴ夫人による物語をフランスで実写映画化。ベルをレア・セドゥ、野獣をヴァンサン・カッセルが演じています。

ディズニー版ととても同じ原作とは思えないダークなファンタジーですが、きっとこちらの方が原作に近いのでしょうね。映画では子どもに読み聞かせしていましたが、恐ろしくて夜中にうなされそう...。ベルと野獣が間近で見つめ合うシーンなど、ただそれだけで官能的で、びりびりとした緊張感が伝わってきました。

映像では特に水を使った表現が印象的でした。ベルが泉に浮かぶシーンは「オフィーリア」を思い出しましたし、鹿が水辺にたたずむ風景は、その後に続く悲劇と相まって心に残りました。ストーリーでは、王子が野獣に変えられた経緯や、お城が襲われた理由など、より人間くさいドラマになっていると感じました。

私の好みからいうと断然ディズニーなのですが、ここまで違うともはや別物で、本家のフランス人たちは複雑な思いを抱いているかもしれませんね。

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