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君の名前で僕を呼んで

2018年06月05日 | 映画

ティモシー・シャラメ&アーミー・ハマー主演、1980年代の北イタリアを舞台にひと夏の恋を描いた青春ラブストーリーです。アンドレ・アシマンの同名小説を、イタリアのルカ・グァダニーノ監督が映画化。ジェームズ・アイヴォリーが脚本を手掛けています。

君の名前で僕を呼んで (Call Me By Your Name)

1983年夏、17歳のエリオ(ティモシー・シャラメ)は、今年も家族と北イタリアの別荘で避暑をすごしていました。アメリカの大学で考古学を教える父は、毎夏教え子をひとり別荘にアシスタントとして招待するのが習わしで、今年は24歳の大学院生オリヴァー(アーミー・ハマー)がやってきました。

非の打ちどころなく自信にあふれたオリヴァーを最初のうちは敬遠しつつも、気になってしかたがないエリオ。一方、そんなエリオの気持ちを知ってか知らずか、オリヴァーも彼を何かと気に掛けるようになります。毎日をいっしょにすごしていく中で、2人は少しずつ互いの距離を縮めていきますが...。

スチールやトレイラーを何度も見て楽しみにしていた作品です。美しい風景、美しい人々、美しい音楽。夏の北イタリアは楽園のようで、本を読み、音楽を奏で、水を浴び、戯れる人々、知的な会話や木陰のブランチ、それらすべてがまぶしく感じられました。一方、きらめく夏の光の陰で、それらは時に残酷に心にひりひりとした痛みを感じさせました。

ふと気がついたのですが、エリオくんは私とちょうど同世代なのですよね。野外パーティで流れる80年代の懐かしい音楽を聴きながら、私が窮屈な日本でくすぶっていた頃、彼らはこんな風に青春を謳歌していたんだなーと、憧れと嫉妬がない交ぜになったような気持ちを味わいました。

同じ気持ちを以前どこかで味わったことがある...と思い出したのが、サガンの「悲しみよこんにちは」。あの洗練された早熟な才能に当時の私は衝撃を受けたのでした。日本だと昔読んだ倉橋由美子さんの小説に、こういう世界が描かれていた記憶があります。

男性同士の初恋を描いた青春映画としては、先日見たブラジル映画の「彼の見つめる先に」(The Way He Looks)が記憶に新しい。あの作品では、彼らのときめきと戸惑いがとても自然に受け止められましたが、本作ではなぜか私の中にひっかかるものを感じました。

それはこのアートのような美しい恋愛に対して、作為的なものを感じてしまったかもしれません。思えばオリヴァーは最初からエリオにボディタッチしていたし、両親はすべてを知った上で2人を旅行に行かせたのでした。

そして終盤、父親のエリオへの告白を聞いた時に、なるほどと腑に落ちるものがありました。ひょっとして、だから父はアシスタントにオリヴァーを選んだのでは?とちょっと勘繰ってしまいました。

とちょっと厳しめに書いていますが、全体的にはとても好きな作品です。何より、知的で繊細なティモシー・シャラメくんが魅力的でした。いつもはエンドロールをくまなくチェックするのですが、今回ばかりはエリオくんから目が離せなかった...。きゅ~っと胸が締め付けられました。

音楽もとっても好み。ラヴェルやサティのピアノ曲と、坂本龍一さんの(BTTB風の)ピアノ曲がよく調和していますが、80年代のナンバーとスフィアン・スティーヴンスのセンチメンタルなメロディも不思議とマッチしています。今一番お気に入りのBGMです。

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