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モリーズ・ゲーム

2018年06月19日 | 映画

京都旅行記は一回お休みします。

ジェシカ・チャステインが、トップアスリートから高級ポーカークラブオーナーに転身したモリ―・ブルームを演じる伝記ドラマ。脚本家アーロン・ソーキンの監督デビュー作で、ブルームの自叙伝を映画化。イドリス・エルバ、ケビン・コスナーが共演しています。

モリーズ・ゲーム (Molly's Game)

2002年、モーグルの選手として冬季オリンピック大会の予選を勝ち進んでいたモリ―(ジェシカ・チャステイン)は、試合中に大ケガをし敗退を余儀なくされます。ロースクールに進学する前にロサンゼルスのクラブでアルバイトを始めたモリ―は、実業家のディーンにアシスタントとしてスカウトされ、やがて彼が経営するポーカークラブを手伝うことに。

頭の回転が速く、みるみるうちにビジネスのノウハウを覚え、顧客の心もつかんだ彼女は、ディーンからクビを言い渡されたのを機に、客を引き抜き、ホテルのペントハウスに自らのポーカークラブを開きます...。

大好きなジェシカ・チャステイン主演作ということで楽しみにしていた本作。彼女が演じる役どころは「女神の見えざる手」(Miss Sloane) と同じく、頭がきれて行動力があって、タフでパワフルな女性。さらに一本筋が通っていて、信念のためには自分を曲げない本当の強さをもった女性です。

監督のアーロン・ソーキンは、”ソーシャル・ネットワーク”、”マネーゲーム”、そしてマイケル・ファスベンダーの”スティーブ・ジョブス”を手掛けた名脚本家。緻密にことばを積み重ねる彼の脚本はどれも好きです。本作も冒頭からの畳みかけるようなチャステインのセリフの洪水に、ぞくぞくと引き込まれました。

折しも本作は、少し前に見た「アイ,トーニャ」と同じく、元アスリートの栄光と転落を描いた作品。モリ―はトーニャと違ってインテリの中流家庭の出身ですが、彼女の父親(ケビン・コスナー)の常軌を逸したスパルタぶりは、形は違ってもトーニャの母親に通じるものを感じました。

彼女がカジノの世界に身を投じたのは、強く高圧的な父親への反発があったのでは...とのちに父親は反省とともに語っていますが、私はそれだけではないと思いました。アスリートというのはまぎれもなく自分の体力の限界をかけた勝負師であり、賭け事の世界に似ているような気がします。

しかも彼女のクラブに集うのは、ハリウッドスターやスポーツ選手、各界でトップを極めたその道の一流の人たち。そうした人たちが気前よくお金をかけて遊ぶポーカーの世界を、自分の器量と才覚で切り回していくことは、彼女にとってハーバードのロースクールで学ぶ以上におもしろく、刺激的だったのだと思います。

セクシーでゴージャスなドレスで客たちを気分よくもてなしながらも、自身はお金に溺れず、恋愛に溺れず、彼らの世界を理解するために勉強を怠らず、常に冷徹なまなざしでクラブを仕切る様子は、私の乏しい想像力では、銀座のママさんみたいと思ったりしました。^^;

クラブで繰り広げられる人間模様も興味深かったです。ある富豪はいつも負けてばかりで、なにしに遊びに来るんだろうと思いますが、こういう一流のクラブは人脈作りの場所にもなっているのですね。また誰もが知るハリウッドスターとプレイしてみたいというお客がいても不思議ではありません。

常連客とのトラブルでロサンゼルスのクラブを閉めざるを得なくなっても、すぐにニューヨークで新たなクラブを立ち上げるモリ―のタフさにも感嘆しました。しかし動くお金が莫大になったことで、客たちから違法である手数料を取らざるを得なくなり、またロシアのマフィアにも目をつけられて、ついにはFBIに逮捕されてしまいます。

モリ―の弁護士(イドリス・エルバ)は、司法取引で顧客情報を検察に出せば収監されることはないだろうと説得しますが、モリ―は決して首を縦に振りません。彼女は自叙伝でも、既に明らかになっている4人以外の名前は出していないそうです。判決については映画を見てのお楽しみですが、モリ―が信念を貫く姿がかっこよくてしびれました。

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