@「かわせみ」シリーズの1作目。最後の章にある「岸和田の姫」。早くから母を亡くし、健康を害し、屋敷の外も知らずの閉じこもりの姫が、この主人公東吾と知り合い、東吾の世間話から屋敷の外の暮らしと江戸の風景に好奇心と興味を持つ。嫁に行く前に是非とお願いする。それから健康に注意を払い、待つことの楽しみを知る。 人は人生の先に希望と夢があれば、何とか実現させるために努力し、健康上にも気を使うようになる。 人はこの「好奇心」を湧き上がらせることができれば病気から、悩みから立ち直ることが可能かもしれない。ましてや未知の世界を知る、行ける、人と出会える楽しみはその本人にしか分からないだろう。 希望を捨てず前に向かって思い切って進みたい。
『初春の客』平岩弓枝
- 江戸の大川端にある小さな旅籠「かわせみ」を舞台に繰り広げられる、大人気「人情捕物帳」。主人公は南町奉行の与力の兄、道之進をもつ次男坊神林東吾、その恋仲にある宿主のるい、老番頭の嘉助、八丁堀の同心畝源三郎などが展開する町に起こる捕物と町内騒動と出会いだ。
- 「初春の客」
- 阿蘭陀からの黒人と「合いの子」娘の駆け落ちは、世の中で生き場を失う。なんとか助けたいと思ったが二人の選んだ道は身を投じることだった。
- 「江戸の子守唄」
- 子持ちの夫婦が宿に泊まるが、夫婦が戻らず子の世話をすることになる。実は母親は江戸に連れ去られた子供を探すため奉公し始め、偶然にも着物屋での下着の色から子供に会うことができた。
- 「美男の医者」
- 借金で苦しい下請け染め屋の病気の娘を看病する、たまたま宿にいた長崎帰りの医者が治療する。借金は計画的に不払いが原因だとわかりその計画的黒字倒産を仕掛けた発注先に罠をかけ、借金を取り戻す。
- 「白萩屋敷の月」
- この屋敷の後家さんとなったのは元兄との恋仲であった。見受けをした当時主人との年の差は倍以上あったが、その理由に兄が絡んでいた。妻として嫁いだ家が火事となり顔半分が火傷を負ってからは家から出ることもなく、主人が亡くなった。その後兄はあいさつで何度か訪れていたが、後家になってから東吾が。その過去を知ることになる。
- 「源三郎祝言」
- 畝源三郎は恋仲にいた娘を諦め与力等からの推薦の娘と祝儀を上げることになった。だが祝儀の当日その紹介された娘が他の男と駆け落ちをしたため、代理花嫁となった恋仲と祝儀を上げる。その後二人は幸せを噛み締め本当の夫婦になる。
- 「虫の音」
- 夜中に徘徊する娘を発見、屋敷に戻る道を一緒に戻る。途中娘が「鈴虫」の音に興味を示した。それは娘の名前が「お鈴」だった。その後鈴虫を持って、るいの宿に持ち帰るが昔から鈴虫がに宿の庭におり泣いていたことを言われ自分の無さを知る。
- 「岸和田の姫」
- 橋の上に武家の娘が立ち往生しており、喘息が激しく近くの老師の家に運びこむ。長崎帰りの医者に治療させ、お守りから娘は大名の姫と判り、治療後屋敷に送る。何度か訪問で姫は東吾の生活ぶりに興味を持ち、江戸の街を見たいと連れ出す。姫は早くから母を亡くし、屋敷からも出ることが無く、健康状態も悪かったが江戸を散策する為、健康に努力し、東吾の訪問を楽しみに遂に江戸散歩に東吾と長崎帰りの医者に同伴させ、今までにない表情で豊かになりとても喜んでくれた。その後姫は地方の大名に嫁ぐことになった。