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ニッポンのゆる~い日常

中国の核恫喝と拡大抑止の不備

2011-01-24 09:47:22 | 正論より
1月24日付     産経新聞【正論】より



中国の核恫喝と拡大抑止の不備    平和安全保障研究所理事長・西原正氏


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110124/plc11012403040023-n1.htm




 ◆核の先制不使用は名目だけ


 中国人民解放軍の内部文書で、核保有国(米国を想定)との戦争で危機的状況に置かれて有効な防衛策がない場合、核先制使用を検討するという立場をとっていることが判明した、と報道された。

 中国はこれまで、胡錦濤国家主席をはじめ、「中国はいかなる状況下でも核先制使用はしない」と公言してきた。報道通りなら、実情は全く異なることになり、中国がこれまで、「非核国には核攻撃は絶対にしない」と言ってきた立場も信用できなくなる。おそらく中国は、日本が非核国であっても米国の核の傘に入っていることを理由に、有事には日本を非核国として認めないのではないか。

 加えて北朝鮮も先制使用を否定したことはない。先制使用する国だと想定しておくべきである。

 このように東アジアの核環境は日本にとって一層、厳しくなっていることに注目すべきである。にもかかわらず、昨年12月に策定された新しい防衛大綱は、核問題をどう位置付けるのかという点には明確な方針を示さなかった。

 新しい防衛大綱によれば、日本の核政策は、(1)非核三原則を堅持する(2)核軍縮・不拡散のために積極的に取り組む(3)米国の拡大抑止能力を支持する(4)弾道ミサイル防衛などによる努力を進める-という4本柱から成っている。これは全体的には妥当な政策に見えるが、実際はそうではない。





 ◆米の核抑止力弱めるな


 たとえば、非核三原則(核を作らない、持たない、持ち込ませない)の3番目の原則は、岡田克也外相当時の密約解明作業で、「持ち込ませない」とは「陸上の配備は認めないが領海、領空の通過、立ち寄りは認める」という従来の「密約」を暴きながら、「今後はこれも認めない」となった。そのことで、米国の核に関する行動のオプションを狭めてしまった。

 そうした中で、今回の大綱は「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止は不可欠であり、その信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していく」としている。非核三原則を以前より厳しいものにしておいて、米国の拡大抑止の「信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していく」とはどういうことをするのかとの疑問を抱かざるを得ない。米国に対し、一方で非核三原則を厳守せよと言い、他方では日本を核の脅威から守れと求めているからである。

 さらに、米国の核抑止力に依存するのであれば、核保有国に囲まれた日本としては、米国による核の先制使用の原則を支持することが、「核抑止の信頼性の維持・強化のために米国と緊密に協力していく」方策である。岡田外相はしかし、米国は核の先制使用を断念すべきだとする立場を取って、米国や外務省を困らせた。核先制不使用の立場は核抑止力を弱めるだけである。菅直人政権は早急に、米国の核先制使用方針に対する支持を明確に表明すべきである。

 大綱はまた、米国の拡大抑止に関して、「核抑止力を中心とする米国の拡大抑止」という表現を用いている。米国の抑止力には、核以外の、通常兵力による抑止もあり得るという理解である。

 事実、米国は冷戦末期ごろから、核攻撃への報復として通常兵器を用いる利点を論じていた。精密誘導可能な通常兵器は精密に攻撃目標を狙うことで、核兵器のような大量破壊の衝撃を避けながら、同じ目的を達成できるとしていた。それにより、核兵器の非道徳性も避けられるとする。核兵器は実際には、「使用できない兵器」であるのに対し、通常兵器は使用し得る兵器である。北大西洋条約機構(NATO)の最近の防衛政策も、「核と通常能力の適切な混合に基づく抑止は全体的戦略の中核をなす」としている。

 通常抑止力の導入により、敵の核攻撃に対する米国の抑止力の信頼性は高まったといっていい。





 ◆脅威にさらされる米艦船


だが、もっと大きな問題は、西太平洋において中国が米軍事力への接近拒否能力を持った場合、米国は日本や韓国に対して効果的な拡大抑止を保持できるだろうかという点である。中国は中距離弾道ミサイル(DF21)を改造した対艦弾道ミサイル(ASBM)を間もなく完成させ配備するといわれている。これが実戦配備されると、中国沿岸から約2000キロの距離内にある米艦船は脅威にさらされてしまうという。

 西太平洋で米空母など米軍が自由に行動できなくなれば、日米同盟の機能が怪しくなる。そして、その軍事的空白を突いて、中国は日本に対し核による恫喝(どうかつ)ができるようになる。そうなれば、日本は予想以上に早い時期に米国の拡大抑止に依存することができなくなる事態が生じるかもしれない。

 大綱の予想を超えた米中軍事バランスの変化が生じるとなると、日本国内でも一方で独自核保有論が台頭し、他方では対中友好強化論(媚中(びちゅう)論)が勢力を持ってくるであろう。現在の日米同盟深化の議論は、こうした事態を克服するものでなければならない。(にしはら まさし)
















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国会議員講演会に防諜部隊投入、自衛隊員監視、防衛相直轄部隊が「不当調査」

2011-01-24 09:42:40 | 民主党
国会議員講演会に防諜部隊投入、自衛隊員監視、防衛相直轄部隊が「不当調査」


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110124/plc11012401310015-n1.htm



 北沢俊美防衛相直轄の防諜部隊「自衛隊情報保全隊」が、陸上自衛隊OBの佐藤正久自民党参院議員や田母神俊雄元航空幕僚長の講演に潜入し、現職自衛官の参加状況を監視していることが23日、分かった。複数の防衛省・自衛隊幹部が明らかにした。本来任務とは乖離(かいり)した不当調査の疑いがあり、憲法で保障された思想・信条の自由を侵害する監視活動との指摘も出ている。


 自民党は24日召集の通常国会で、自衛隊行事での民間人による政権批判を封じる昨年11月の「事務次官通達」問題と合わせ、保全隊の監視活動についても政府を追及する方針。


 保全隊は佐藤、田母神両氏の講演のほか、田母神氏が会長を務める保守系民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」の集会にも隊員を派遣。また、陸上自衛隊唯一の特殊部隊「特殊作戦群」の初代群長を務めた陸自OBの会合なども監視対象にしている。


 監視目的は現職自衛官の参加の有無を確認し、参加している場合は氏名も特定する。佐藤、田母神両氏の発言内容もチェックし、報告書の形でまとめ、提出させている。

 陸自朝霞駐屯地(東京都など)に本部を置く東部情報保全隊の隊員が投入されるケースが多いとされる。保全隊は陸海空3自衛隊の統合部隊で、監視実態が発覚しないよう、空自隊員の参加が想定される田母神氏の講演には隊員同士の面識がない陸自の保全隊員を派遣することもあるという。



 保全隊は外国情報機関によるスパイ活動などから自衛隊の保有情報を防護するのが主任務。自民党政権時代には「日本赤軍」や「オウム真理教」のほか、「暴力革命の方針」(警察庁公表文書)を掲げた共産党が自衛隊を侵食するのを防ぐため、それらの監視活動も行っていた。ただ、保守系の議員や自衛隊OBを監視対象にしたことはない。

 防衛相経験者の石破茂自民党政調会長は「保全隊は自衛隊の安全を守る組織で在任中は恣(し)意(い)的に運用しないよう徹底させていた。何を目的にした監視活動か追及する」と話している。

 監視対象とされていた佐藤氏は「自衛隊への破壊活動とそれを目的とした浸透活動をはかる団体の情報収集は必要だが、対象を際限なく拡大するのは問題だ。自衛隊員は国家に忠誠を尽くすことは求められるが、政党や政治家の私兵ではない」と指摘している。
 
2011.1.24 01:30

                          ◇



 自衛隊情報保全隊 平成21年8月、陸海空3自衛隊の情報保全隊を統合し、大臣直轄部隊として新編。ネット上での情報流出やイージス艦情報漏(ろう)洩(えい)事件を受け、機密保全強化と自衛隊へのスパイ活動に関する情報収集の効率化のための措置。実動部隊は中央情報保全隊と北部、東北、東部、中部、西部の地域ごとの保全隊で構成する。駐屯地や基地ごとに派遣隊も置き、隊員は約1千人。






狙いは「反民主OBと現職遮断」政治主導で部隊利用の疑い、防諜部隊の不当調査


http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110124/plc11012401300014-n1.htm



 自衛隊行事での民間人による政権批判を封じる事務次官通達問題に続き、「自衛隊情報保全隊」の不当調査が明らかになった。調査の実態は、民主党政権に批判的な自衛隊OBの言動から現職自衛官を遮断するものだ。防衛相直轄の防諜部隊を政治主導で恣意(しい)的に利用している疑いもあり、民主党政権が進める「秘密国家」化は加速している。


 「自衛隊各種行事における国会議員の招待について」。そう題され、右上に「注意」「平成21年12月」「大臣官房文書課」と書かれた防衛省の内部文書がある。自衛隊の駐屯地や基地がある都道府県が選挙区だったり、議員事務所を置いていたりする国会議員以外は、行事への代理出席などを認めない「統一基準」を設けるためのものだ。


 文書は起案どまりで発出されることはなかったが、同年9月の政権交代直後から基準策定が検討された形跡を示している。自民党幹部は「比例選出の佐藤正久参院議員の関係者を自衛隊行事から締め出すことを狙ったのでは」と指摘する。政権に批判的な野党議員の主張に現職自衛官を触れさせない意図があるという。


 昨年11月に事務次官名で出された「隊員の政治的中立性の確保について」と題する通達にも、同じ意図がみえる。通達は民間人に自衛隊行事での「言論統制」を強いる一方、自衛官が部外の行事に参加することについても、政権批判が予想される場合は参加を控えるよう求めている。

 この規定は、現職自衛官が佐藤氏や田母神俊雄元航空幕僚長の講演会に参加することを監視する「根拠」とも位置づけられる。

 通達後、保全隊による監視も強化された。昨年12月、田母神氏が会長の保守系民間団体「頑張れ日本! 全国行動委員会」が都内で開いた政府・民主党に対する抗議集会について「自衛官の参加を厳重に確認するよう改めて指示が出された」(防衛省幹部)という。自衛官の間にも保全隊が調査に入っているとの情報は拡散しつつある。


 通達は防衛省政務三役が主導したとされる。保全隊による監視も「官僚の判断で部隊を動かすとは考えにくい」(自衛隊幹部)との見方が大勢だ。


 田母神氏は「国家と国民のことを考えて発言し、行動しているのを監視するのは不当極まりない。通達と同様、民主党政権はひたすら自分たちへの批判を封じ込めようとしているだけだ」と話している。

2011.1.24 01:30










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