福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110327k0000m040036000c.html
東京電力福島第1原発の深刻な事故の原因となった大津波を伴う巨大地震について、09年の経済産業省の審議会で、約1100年前に起きた地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことが26日、分かった。東電側は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。専門家の指摘を軽んじたことが前例のない事故の引き金になった可能性があるほか、東電の主張を事実上追認した国の姿勢も問われそうだ。
09年6月、25年ぶりの原発の耐震指針の改定を受け電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告書案を検討する審議会が開催された。取り上げられたのが869年に宮城県沖で発生したマグニチュード8以上とみられる「貞観地震」だ。
報告書案にはこの地震に触れられておらず、委員の岡村行信・産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長は「非常にでかいもの(地震)が来ているのが分かっている」と問いただした。東電側は「被害はそれほど見当たらない」と答えたが、岡村センター長は、海岸線から数キロ内陸まで浸水したという最新の研究から「納得できない」と指摘した。その後の会合で、東電は、貞観地震で予想される揺れは原発の耐震構造の想定内との見方を示した。
◇専門家「貞観の再来」
多くの専門家は、貞観地震は、東日本大震災を「貞観地震の再来」とみている。また、450~800年程度の間隔で同規模の津波が起きた可能性も浮かび、論文でも報告されている。
東電によると、現地で測定された地震動は、ほぼ想定内に収まり、地震によるトラブルは少なかった。一方、非常用電源の喪失など津波による被害によって、炉心の冷却ができなくなり、水素爆発をはじめとする前例のない事故を引き起こした。毎日新聞の調査でも、東電を除く9電力会社が所有する14原発で、津波による浸水を想定していなかった。
◇「『想定外』は言い訳」
東電の武藤栄副社長は25日の会見で「連動した地震による津波は想定していなかった」「(貞観地震の見解が)地震や津波の共通見解を出すには至っていない状況にあった。学会として定まったものがなかった」と釈明した。東電の対応に対し、岡村センター長は「原発であればどんなリスクも当然考慮すべき。あれだけ指摘したが、東電から新たな調査結果は出てこなかった。『想定外』とするのは言い訳に過ぎない」と話す。
毎日新聞 2011年3月26日 18時46分(最終更新 3月26日 23時27分)
「『想定外』言い訳に使うな」 土木など3学会、声明で苦言
http://www.j-cast.com/2011/03/26091397.html?p=all
想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」。土木学会など3学会は、こうした内容を盛り込んだ共同緊急声明を発表した。東北関東大震災や福島第1原発事故について「想定外」を繰り返す東京電力や菅直人首相らに対し、専門家らが苦言を呈したようだ。
声明を発表したのは、社団法人の土木学会をはじめ、地盤工学会、日本都市計画学会の3学会だ。2011年3月23日、阪田憲次・土木学会会長らが会見を開き、声明文は同学会サイトなどでも公表した。阪田会長は「安全に対して想定外はない」と指摘した。
ワイドショーも「想定が甘かったのでは」
「(福島第1原発を襲った)津波の規模は、これまでの想定を超えるものだった」(清水正孝・東電社長、3月13日会見)、「今回の地震が、従来想定された津波の上限をはるかに超えるような大きな津波が(略)」(菅首相、3月12日会見)――このほかにも、テレビなどに出演する「専門家」らが、連日のように「想定外」という言葉を使っている。
専門家はともかく、東電など「当事者」が使う「想定外」には、いらだちを募らせる被災者らも少なくない。マスコミも「東日本大震災:福島第1原発 東電『想定外』に批判の声も」(毎日新聞ネット版、3月12日)、「不安 憤り 諦め…2度目の爆発『想定外と言うばかり 対応が甘い』」(スポーツニッポン・ネット版、3月14日)などと報じている。
3学会の声明文では、「われわれが想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」と指摘している。その上で、「自然の脅威に恐れの念を持ち、ハード(防災施設)のみならずソフトも組み合わせた対応という視点」の重要性をあらためて確認すべきだと訴えている。
声明文では名指しはしていないが、東電や政府関係者が使う「想定外」という言葉に「言い訳」のニュアンスをかぎとっている、と読めなくもない。テレビのワイドショーでは、TBS系「みのもんたの朝ズバッ!」(3月14日放送)で、TBS解説室長の杉尾秀哉氏が「地震の規模が想定外というが、想定が甘かったのでは」と指摘するなどしている。
鳩山前首相「想定外だから仕方ないという話ではない」
また、前首相の鳩山由紀夫氏は3月19日、菅首相と民主党代表経験者との会談の際、東電に対し「想定外のときにどうするかという発想が足りなかったのではないか」「想定外だから仕方ないという話ではない」と批判している。
本当に「想定外」だったのか、「想定したくなかった」のではないか、との疑念を持ちたくなるような報道も出ている。東京新聞の3月23日配信記事「『大津波やM9 想定却下』 福島原発 設計者ら証言」では、福島第1原発の「設計や安全性の検証を担った東芝の元社員二人」が取材に対して答えている。
同記事によると、元技術社員は「M9の地震や航空機が墜落して原子炉を直撃する可能性まで想定するよう上司に進言」したが、上司は「千年に一度とか、そんなことを想定してどうなる」と「一笑に付した」という。元社員は「起こる可能性の低い事故は想定からどんどん外された。計算の前提を変えれば結果はどうとでもなる」とも話している。
2011/3/26 13:37
http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110327k0000m040036000c.html
東京電力福島第1原発の深刻な事故の原因となった大津波を伴う巨大地震について、09年の経済産業省の審議会で、約1100年前に起きた地震の解析から再来の可能性を指摘されていたことが26日、分かった。東電側は「十分な情報がない」と対策を先送りし、今回の事故も「想定外の津波」と釈明している。専門家の指摘を軽んじたことが前例のない事故の引き金になった可能性があるほか、東電の主張を事実上追認した国の姿勢も問われそうだ。
09年6月、25年ぶりの原発の耐震指針の改定を受け電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告書案を検討する審議会が開催された。取り上げられたのが869年に宮城県沖で発生したマグニチュード8以上とみられる「貞観地震」だ。
報告書案にはこの地震に触れられておらず、委員の岡村行信・産業技術総合研究所活断層・地震研究センター長は「非常にでかいもの(地震)が来ているのが分かっている」と問いただした。東電側は「被害はそれほど見当たらない」と答えたが、岡村センター長は、海岸線から数キロ内陸まで浸水したという最新の研究から「納得できない」と指摘した。その後の会合で、東電は、貞観地震で予想される揺れは原発の耐震構造の想定内との見方を示した。
◇専門家「貞観の再来」
多くの専門家は、貞観地震は、東日本大震災を「貞観地震の再来」とみている。また、450~800年程度の間隔で同規模の津波が起きた可能性も浮かび、論文でも報告されている。
東電によると、現地で測定された地震動は、ほぼ想定内に収まり、地震によるトラブルは少なかった。一方、非常用電源の喪失など津波による被害によって、炉心の冷却ができなくなり、水素爆発をはじめとする前例のない事故を引き起こした。毎日新聞の調査でも、東電を除く9電力会社が所有する14原発で、津波による浸水を想定していなかった。
◇「『想定外』は言い訳」
東電の武藤栄副社長は25日の会見で「連動した地震による津波は想定していなかった」「(貞観地震の見解が)地震や津波の共通見解を出すには至っていない状況にあった。学会として定まったものがなかった」と釈明した。東電の対応に対し、岡村センター長は「原発であればどんなリスクも当然考慮すべき。あれだけ指摘したが、東電から新たな調査結果は出てこなかった。『想定外』とするのは言い訳に過ぎない」と話す。
毎日新聞 2011年3月26日 18時46分(最終更新 3月26日 23時27分)
「『想定外』言い訳に使うな」 土木など3学会、声明で苦言
http://www.j-cast.com/2011/03/26091397.html?p=all
想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」。土木学会など3学会は、こうした内容を盛り込んだ共同緊急声明を発表した。東北関東大震災や福島第1原発事故について「想定外」を繰り返す東京電力や菅直人首相らに対し、専門家らが苦言を呈したようだ。
声明を発表したのは、社団法人の土木学会をはじめ、地盤工学会、日本都市計画学会の3学会だ。2011年3月23日、阪田憲次・土木学会会長らが会見を開き、声明文は同学会サイトなどでも公表した。阪田会長は「安全に対して想定外はない」と指摘した。
ワイドショーも「想定が甘かったのでは」
「(福島第1原発を襲った)津波の規模は、これまでの想定を超えるものだった」(清水正孝・東電社長、3月13日会見)、「今回の地震が、従来想定された津波の上限をはるかに超えるような大きな津波が(略)」(菅首相、3月12日会見)――このほかにも、テレビなどに出演する「専門家」らが、連日のように「想定外」という言葉を使っている。
専門家はともかく、東電など「当事者」が使う「想定外」には、いらだちを募らせる被災者らも少なくない。マスコミも「東日本大震災:福島第1原発 東電『想定外』に批判の声も」(毎日新聞ネット版、3月12日)、「不安 憤り 諦め…2度目の爆発『想定外と言うばかり 対応が甘い』」(スポーツニッポン・ネット版、3月14日)などと報じている。
3学会の声明文では、「われわれが想定外という言葉を使うとき、専門家としての言い訳や弁解であってはならない」と指摘している。その上で、「自然の脅威に恐れの念を持ち、ハード(防災施設)のみならずソフトも組み合わせた対応という視点」の重要性をあらためて確認すべきだと訴えている。
声明文では名指しはしていないが、東電や政府関係者が使う「想定外」という言葉に「言い訳」のニュアンスをかぎとっている、と読めなくもない。テレビのワイドショーでは、TBS系「みのもんたの朝ズバッ!」(3月14日放送)で、TBS解説室長の杉尾秀哉氏が「地震の規模が想定外というが、想定が甘かったのでは」と指摘するなどしている。
鳩山前首相「想定外だから仕方ないという話ではない」
また、前首相の鳩山由紀夫氏は3月19日、菅首相と民主党代表経験者との会談の際、東電に対し「想定外のときにどうするかという発想が足りなかったのではないか」「想定外だから仕方ないという話ではない」と批判している。
本当に「想定外」だったのか、「想定したくなかった」のではないか、との疑念を持ちたくなるような報道も出ている。東京新聞の3月23日配信記事「『大津波やM9 想定却下』 福島原発 設計者ら証言」では、福島第1原発の「設計や安全性の検証を担った東芝の元社員二人」が取材に対して答えている。
同記事によると、元技術社員は「M9の地震や航空機が墜落して原子炉を直撃する可能性まで想定するよう上司に進言」したが、上司は「千年に一度とか、そんなことを想定してどうなる」と「一笑に付した」という。元社員は「起こる可能性の低い事故は想定からどんどん外された。計算の前提を変えれば結果はどうとでもなる」とも話している。
2011/3/26 13:37