6月7日(日)、今月の学術研修会は、金沢大学附属病院 総合診療科の尾山先生の講演のご予定でしたが、親戚にご不幸があり、急遽、内容が変更になりました。
本当にその週に入ってからの変更でしたので、会の運営に携わっている、中田先生と私の症例報告を2題行うことになったのでした~
備えあれば憂いなし、という言葉があるように、何かがあった時、すぐに対応できる体制を整えておかないと
と思うのでした。
◎内 容
・症例報告①:脊柱管狭窄症と思われた両下肢痛の一症例
鍼灸なかだ治療院 中田和宏
・症例報告②:心に残った一症例
~肺塞栓症が原因で亡くなられた症例~
二葉鍼灸療院 田中良和
・鍼灸・医療最新ニュース
症例①は、71歳、男性、職業は農業。2年まえ農作業中に左下肢痛発症。放置しておく。1年前、夏旅行中痛みが両側に出現。10m歩行で突っ張るような痛みが出て、休息(立位で約1分)すると痛みが寛解するという症状出現。整形外科では脊柱管狭窄症との診断を受けました。後屈時軽度腰殿部痛、ケンプ兆候両側陽性。現病歴や症状などから、病院の診断通り脊柱管狭窄症(馬尾型)であろうということでした。しかし鍼灸治療では不適応とされていますが、患者の筋肉を丹念に診ていくと、トリガーポイントが検出され、そのトリガーポイントの不活性化を目的に治療を行った結果、症状が改善、消失していったということでした。鍼灸不適応疾患でも、体表所見を丹念に診ると、実はトリガーポイントなどが痛みの原因であり、鍼灸の適応であったりする。病院の診断を鵜呑みにせず、患者を診る力を養う必要があります。
症例②は、51歳、男性、建設業勤務。主訴は「右足足関節内側が歩行時や体重をかけると痛い」。この患者さんは年間5~6回ほど健康管理に通院されていた患者様。上記のような主訴で来院。痛みと腫脹があり、原因は昔やっていたサッカーでの捻挫の古傷だろうと整形外科でも診断された。その頃から、体が疲れやすい、時々息切れがする症状が存在していた。総合病院で検査するが異常なし。週末は単身赴任先からバスで4時間ほどの距離を金沢と往復する生活が長く続いていた。たいへん能力がある頑張り屋の人であった。当院での治療は1回だけとなったが、その後、お会いするたびに状態を聴き、「まだ痛いけど大丈夫」ということであった。1ヵ月後に病態が急変し肺塞栓症にて死去した。肺塞栓症の多くは下肢や鼠径部での血栓が原因となることが多いようです。もしかしたら足関節の痛みと腫脹は深部の血栓性静脈炎(血栓症)から来るものではなかったか、その疾患を理解していれば何か患者様に違う人生を歩んで頂けたかもしれない、自分は知らないことが多いのだという謙虚な姿勢をもって、常に臨床に臨むことを命をもって教えて頂いた、心に刻んだ一症例でした。
向上心も、自分の成長も、人間力をアップさせるのも、患者様のため、ひいては社会の幸せのため、世界の幸せのためです。そこに自分の幸せが見出せれば、この仕事が天命(使命)であり、「今ここにある幸せ」を体感できます。
常に勉強、勉強ですな
二葉鍼灸療院 田中良和