二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

日本鍼灸師会青年部北陸ブロック合同学術研修会 参加①

2010年03月27日 | 鍼灸
3月21日(日 春分の日)、富山県で学術研修会が開催されましたので参加してきました。

朝目覚めると、ここは中国の都市か 砂漠の街か というくらい黄砂が舞っておりビックリしました。近くの山も霞んで見えるし、車は砂模様がついておりました。

この時期、花粉、花粉と言われますが、花粉より小さな黄砂、それに付着している大気汚染物質のほうが実は気をつけなければいけません。喉の弱い人はマスクをし、外出から帰宅した際には、頻繁にうがいをしたほうがいいでしょう。
喉は免疫細胞が集まっているところであり重要ですからね

話を本題に戻しまして…

◎日本鍼灸師会青年部北陸ブロック学術研修会
 日 時:平成21年3月21日(日) 午後1時時30分~5時
 場 所:(社)富山県鍼灸マッサージ師会会館 3Fホール
 主 催:(社)日本鍼灸師会組織局青年部北陸ブロック(担当:富山県師会青年部)
 共 催:(社)全日本鍼灸学会中部支部
 対 象:富山・石川・福井・新潟の開業鍼灸師、全日本鍼灸学会会員 約100名
 参加費:会員 3000円・一般 4000円
 ■講演1
  演 題 (教育講演)『新しい標準経穴部位-主な変更部位とその意義-』 
  講 師 明治国際医療大学 伝統鍼灸学 教授  篠原昭二先生
 ■講演2
  演 題 (特別講演)『今、何を為すべきか』
  講 師 杉山鍼療院 院長  杉山 勲先生



 開会のあいさつをする富山の津田先生


 講演1 講師の篠原先生

講演1では、第二次経穴委員会の副委員長をされている篠原昭二 先生のお話があり、私たちが日々の臨床で患者さまに使用している経穴(ツボ)に関し、新たに国際的に共通した基準(部位)が決められたという話でした。その決定までの会議の流れ、中国、韓国、日本での経穴部位をめぐる議論、その経穴を探す方法、経穴決定のための指標など、会議での裏話などを交えながらのお話でした。

この第二次経穴委員会の合意は2007年、つくば会議において日本、中国、韓国によってなされ、2008年5月には京都にて「WHO/WPRO標準経穴部位公式版発刊記念講演会」において世界に向けて公表されました。その後、2009年4月に「WHO/WPRO標準経穴部位」日本語公式版が医道の日本社より発刊されました。これを元にして、現在、鍼灸専門学校や大学において使用されている教科書が作成されています。



この話を聴き、この話がどれだけ日本の鍼灸師に浸透しているのだろうかと思いました。新たに鍼灸学校を卒業して経穴を教育されてくる鍼灸師と、現在、臨床の現場にいる鍼灸師との経穴に対する知識が違ってくるわけです。これを意識しながら臨床を行えということになると、まったく無視する先生もいるだろうし、この部位が浸透し、自然に意識せずに使えるまでは時間がかかるだろうと思います。

話の中では、ある経絡治療を行っている大家の先生に、この新しい経穴について質問したところ「私は新たな基準は使わない。だって今のほうが効果があるから」ということを言われたというものがありました。
また、私が先生に直接質問に行った際は、「臨床の現場が混乱するんではないか」ということを聞いたのですが、「しばらくの間でしょう」ということでした。本当にそうかと思いましたね。また鍼灸の団体には古典や経絡治療、中医学など多くの団体がありますが、この新しい基準をどう使うかは「その団体で協議してもらう」という話でした。
でも、全日本鍼灸学会の発表や、原著としての論文を作成したり、世界に論文を提出する時など公式なものに関しては全て、この新たな基準の経穴で記さなければいけないということでした。

例えば『風池(フウチ)』という経穴が後頸部にありますが、世界においてはこの経穴は『GB20』と表記されます。経穴(ツボ)を世界標準にする場合は、どこの国の人が見ても分かるようにすることは必要なことです。しかし、経穴が漢字で表記されているという所に”意味がある”という部位がたくさんあるのです。
何を言いたいかというと、経穴がただの記号となってしまうということです。その辺りも考えながら会議がなされたと思いますが…、変化してしまったのですから、これから新しい基準が臨床的にどうなのか検討されていき、さらに変化していくのだと感じます。

しかし、鍼灸治療の効果を科学的に、定量的に見出していこうとする学会報告と、臨床を行っている鍼灸師との間の解離が起きないか心配するのです。特に中医学や経絡治療など、弁証論治、経絡の流れ(流注 ルチュウ)を重視して治療を行っている鍼灸師には受け入れがたいものになるかもしれませんね。

でも、学校を卒業してくる学生とも話が合わなくなってくるわけですから、どのように経穴の位置が変化したかなどは、知識として頭に入れておかなければいけません。

経穴部位を決定する際は、①体表解剖学的、②骨度法、③同身寸法という基準で経穴の位置を決定するのですが、①②が重視され、③が補助的に使うという話がありました。①は最も重視されるわけですが、加齢や成長によって形態は変化するので、その辺りを考慮しなくてはいけないという難点もある。②も体表解剖学同様の考慮が必要であり、③は患者の指の長さや、腕の長さを基準にして、経穴の位置を決定していくわけですが、これはアバウトであり補助的に使うというものでした。しかし、実際には臨床的には③が多く使われているんではないかと思います。どの方法にしても一長一短があり、臨床ではこれらを駆使して経穴をとっていけばいいんだと思います。

日本の中でも経穴の部位には、いろんな差が出てきます。この流派ではココ、この学術団体ではココ、この先生のところではココ、などです。それぞれの先生や流派により刺激の方法が違うし、それによる臨床効果も違うので、部位も少しずつ違ってくるというものもありますが、今回の話では時代的変遷も考慮すると、経穴部位の分岐点は、①鍼灸古典が特定の一か所を示すことができない、②伝写の過程で字句が変化する(鍼灸甲乙経、千金方、素問などの書物により違う)、③現代の人の解釈法によって意味が分かれてしまう、という点を挙げていました。全体の大きな経穴の位置は古典を元にしていますが、細かな所に関しては、時間の経過において、上記のような多くの問題が出てくるので、経穴の位置に関しては古典を重要視しなかったとのことでした。それも一理ありかな…。

中国は、経穴部位に関しては『黄帝明堂経』を基本にしているという話しでした。
経穴部位に関しては、日本が細かいところまでこだわり、緻密に議論しようとしているが、中国は「この辺りでいい」とたいへんアバウトだったということでした。韓国は日本と中国の間くらいだったようです。これは鍼の治療方法にも表れています。中国・韓国は鍼を打って、ビーンと響きがあればそれでいいんだ、というスタンス。日本でもそのようなスタンスで治療されている鍼灸師もいますが、身体はそんな強い刺激を加えなくても、微妙な刺激で効果が出ることが多々あるのです。日本人の繊細な心には、繊細な鍼刺激が適度なことが多いのです。異論もあるでしょうが…。

面白かったのは「チャングムの誓い」は観た人が多いと思いますが、その鍼治療の場面の話があり、手や足など顔が分からない部分の鍼はエキストラの方に鍼を打つそうなんですが、鍼を打たれるエキストラの方の報酬は高いそうです。それは「痛いから」なんですね。その点、日本の鍼は鍼自体も細く、痛くありません。これは向上心を持って技術の練磨をしている人は…ですが。

この講習会の感想は、学会で発表したり、研究したりしている鍼灸師は知識として必要となるということです。また、臨床的には、身体の反応をきっちり診ていくことは、今までと変わりがないわけですから、考え方は従来の経穴の位置でいいのだと思います。ただ名称や位置が少し変わっただけの話です。

ここから本当に意味のある経穴部位を探っていかなければいけないのではないかと思います。これは治療する位置なんですから当然です。

中国の人、韓国の人、お付き合いするといい人がたくさんいます。本当に温かい人たちです。しかし、「国」というものが乗っかってくると、今回の経穴委員会ではないのですが、政治や経済でも、国益、国の威信、名誉、などが絡み、非常に複雑な議論になってしまいます。グローバルスタンダードなんて、どこの誰が世界に流した言葉かは分かりませんが、世界標準も大事ですが、もっと大切なものがあるように感じます。鍼灸師だけでなく、政治家も、事業家も、この真に大切にすべき人たち、真に大切にすべき精神を心の基礎におき、何事も議論して頂きたいと思いますね。
キレイごとかもしれませんが、これからの世界に必要なのは、その心からくる行動であり、それこそ真のグローバルスタンダードだと思います。東洋医学では、人体は小宇宙と捉えます。地球も宇宙の一部であり、人間はその生命体の元で生かされています。そんな謙虚な心こそ、これからの世界に本当に必要不可欠なことだと感じるのです。

長くなりましたので、講演2はパート②で 

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント
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