二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

ロコモーティブ・シンドローム対策としての高齢者スポーツ

2010年03月06日 | 鍼灸
2月28日(日)、午前中の石川県鍼灸マッサージ師会 臨時総会に引き続き、中央学術研修会が開催されましたので参加しました。

 日 時:平成22年2月28日(日) 午後1時~3時
 場 所:石川県立生涯学習センター(旧石川県庁)
 演 題:「ロコモーティブ・シンドローム対策としての高齢者スポーツ」
 講 師:北山クリニック 院長 北山吉明 先生
                   石川県体育協会スポーツ医科学委員会 委員長
                   石川県スポーツドクター協議会 理事長
                   石川県少年バトミントン協会 会長


北山先生のお話は非常に楽しく、2時間があっという間に過ぎた感じでした。老化や運動、ロコモなどを中心に、時々脱線しながら、私たちに分かりやすく、これから訪れる超高齢化社会に向けて、医療者が人生ベテランの方々にどう指導していったらいいのか!ということを説明して頂きました。


 本日、講演して頂きました 北山吉明 先生

北山先生は、形成外科(美容だけではなく、機能が失われた運動器官を再建する外科)が開業当初の専門でした。特に「手の外科」を得意とされています。その他、先生はスポーツドクターでもあります。医院をやっていると、こちらのほうが需要が高いということです。
星稜高校野球部も多くの選手がお世話になっております。
形成外科、手の外科、スポーツ医学の他に、声楽もされています。確かに講演を聴いていても、何か遠くまで通る声なんですよね。けっしてバカでかい声ではなく、いい声なんです。
声を上手に出すにはどうしたらいいか、ということで、脳研究やリズム研究も力を入れておられるということです。趣味から仕事につなげてしまうというところが、ユーモアのある先生だな~と思いました。


 座長の学術局長 中田先生

いろんな講演を聴いていると勉強になることが多いです。聴衆を退屈させない、話に惹きつけるためには、どんな話し方をすればいいのか…いやいや、私が講演会をするわけではないのですが、どんな時でも役立つかな~と、そんなことも思いながらお話を拝聴していたのでした。

内容をはしょってご紹介しますと…

○老化で体はどう変わっていくか。25歳をピークに体力は下り坂になり、年齢とともに、心肺機能などの循環器系、筋肉と神経の協調運動に障害がおきるなど神経系統、骨・関節・筋肉系統、風邪をひきやすく胃腸の調子が悪いなど免疫・消化器系統の機能が低下してきます。いわゆる体の予備能力の低下です。

○ロコモーティブ・シンドロームとは、「運動器の障害によって、介護が必要な状態になったり、そうなるリスクの高くなっていたりする状態」を言います。ロコモーションとは移動能力、ロコモーティブとは移動能力を有するという意味の英語です。Steam locomotionとは蒸気機関車のことですが、そんな力強さや前向きな感じを汲み取り、否定的でない意味で、ロコモーティブ・シンドロームと名づけられました。
現在、要介護、要支援人口は450万人。その5人に1人が、骨・関節障害によるもので、脳血管障害と共に2大原因と言われています。

○ロコモ(略)という言葉をつくった意義は、①運動器障害が要介護者の発生に極めて重要だということに気づいてもらうこと(予防)、②加齢現象により、骨・筋肉・関節・靭帯・神経などが複合的に連鎖しながら、身体全体の機能を低下させていくということを意識し訓練する、③高齢者になるほど、体のお互いの部分を協力、協調させて動かなければならない。体に関する部分的な知識を総合的に捉えて運動してもらう、④大胆に言えば、骨粗しょう症に起因する骨折、軟骨を主因とした関節疾患、脊椎管狭窄症による脊髄、馬尾、神経根の障害などが複合してみられることが多いのが高齢者の体である。これらの運動器の研究に力を注ぐ、⑤日本整形外科学会などが中心となって、「運動器の10年」と名付け、「運動器」という名前の定着、運動器が健全であることの重要性の認識、運動器疾患・障害の早期発見と予防体性の確立を目標に活動してきた。まず認識していただくことが大切、などがあげられます。

○ロコモ~チェック(一つでもあれば疑い濃厚
 ・階段を上がるのに手すりが必要である
 ・横断歩道を青信号で渡りきれない
 ・15分くらい続けて歩けない
 ・家の中でつまずいたり滑ったりする
 ・片脚立ちで靴がはけない
 ・2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(2010年から追加)
 ・家のやや重い仕事(掃除機をかける、布団の上げ下ろし、など)が困難(2010年より追加)

さ~て、あなたの体はロコモ・シンドロームになっている疑いはありませんか



○自由意思で移動することがロコモであるとすれば、自由意思=脳、移動=足腰であり、そこ鍛える運動こそ大切である。動かなければ、足腰が弱り、動こうとする意欲も低下し、脳の機能も衰える。

○ヒトの体はつくられ続け、壊され続け(新陳代謝)、同じものは何一つなく、流れる水のごとく変化していく。使わないものはなくなり、使うものは発達していく。生活の全てが、あなたの一年後の体をつくる。だから、筋肉(脳)を使うことが大切である。開眼片脚立ち、アラベスク、スクワット、四股、つま先立ち、立つ、歩行、ランニング、自分にあった運動を少しでもいいから継続して行う。

○体についての心がけは、①不便な生活を厭わず行う、昭和の生活を少し思い出す、②体の不調は歳のせいではなく、あなたの怠け癖ではありませんか、③新しい細胞をつくるための材料が食事から吸収される。バランスの良い食事を行う、④毎日、当たり前に繰り返している動作をもう一度、関心を持って見なおそう、すると新しい発見がある、⑤体を良い状態にもっていくための情報に関心を持ち実践する、そして自分にあったものを探る、⑥健全な肉体に健全な精神が宿る、逆は真にあらず。

※⑥がやはり西洋医学の先生らしい考え方です。私は健全な心を持つことで、病気や症状が改善に向かうことはあると思います。体がどんな状態でも「心」を積極的に持つことにより、思わぬ力が出てくるものです。と、私は考えています。

○心についての心がけは、①何にでも興味を持ち、新しい発見を日々行う。できれば二つ以上の趣味を持つとよい、②人の話をしっかり聴く。聴くことの忍耐力を養い、相手に関心を持つ、③物事をいろんな方向からみる。白黒で判断せずに、じっくり考えて自分の意見を話す、④二つ以上のことを同時進行するよう心がける、⑤気持ちの切り替えを素早くし、時間を細切れに使う、⑥読み、書き、そろばんなど、手指を使って細かい作業を頻繁に行う、⑦まず最初は何事も意識して行う。継続して繰り返し行うことで、無意識下でできるまで、関心をもったことを繰り返す。

○運動により脳はどう変化するか、文献からのご紹介。運動をさせた子どもの成績が上がった。運動すると35%も脳の神経成長因子が増える。運動することでストレスやうつを抑えられる。運動をすることにより5歳児のIQと言語能力には大きな差が出る。運動する人は癌にかかりにくい。運動を週2回以上続ければ認知症になる確率が半分になる。など。

○賢く老いるためには、①心血管系・代謝系の循環をよくしておくこと、②認知症などの加齢変化による病気に罹らないためには適度に運動する、③運動により、人間の高次機能を司る前頭葉、あるいは長期記憶に関する側頭葉の衰えを防ぐばかりか、新たな血管、新たな神経細胞、新たな回路が形成される、④運動は、様々な場所の成長因子を活性化し、それらは身体の老化を防ぐために働く、だから、生活の中に運動を取り入れることこそ、ロコモーティブ・シンドロームを防ぐことになる。

○知識をまず実行に移す。健康な体づくりは、まず実践することから始まる。絵に描いた餅では何の役にも立たない。


 質疑応答

先生は、私たちにも、「まず、患者さんに言う前に、治療する先生方が実践してください。ただ、運動をやれやれ言っていてもダメですよ」と話されていました。まずはお手本ということでしょうね 

確かに、運動をしましょうと言っている先生が腹が出て太っていたり、姿勢が悪かったりしたら話になりません。

今年度、最後の中央学術講習会は締めくくりにふさわしく、内容の濃いものでした。北山先生、ありがとうごさいます

中央学術研修会も無事終了し、まだまだ行事が続く2月28日(日)でした~。

二葉鍼灸療院 田中良和
コメント
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