二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

第59回 (社)全日本鍼灸学会学術大会 参加報告①

2010年06月24日 | 鍼灸
6月11日(金)~13日(日)において大阪で開催された、第59回(社)全日本鍼灸学会学術大会に参加しました。



金曜日、土曜日と診療を休診しての学会参加ですから、何か自分に得るものを持って帰り、すぐにとはいきませんが、患者さまに還元するという気持ちが大切です。実際、いろいろ刺激になり勉強になりました。

その報告を少し書きたいと思います。

☆第59回(社)全日本鍼灸学会学術大会
 テーマ:「統合医療と鍼灸」-さらなるQOL向上を目指して-
 日 時:平成22年6月11日(金)~13日(日)
 会 場:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
         大阪市北区中之島5-3-10


朝早くの電車で金沢を出発し、大阪へ到着。大阪駅から会場まで歩いて行こうと思っていましたので、駅から外へ出ると「暑い」都会ならではの空気と暑さです。大会中、最後の日は雨でしたが、残り二日は暑い日でした。気温は30度を越え、夏を思わせるような日でしたね。大阪…夏…甲子園ですね 8月にまた、ここ大阪に来なくてはいかんな~と一人心の中で思っていたのでした。

少し早目に会場へ到着したので、会場お隣のリーガロイヤルホテルでコーヒー&ケーキを頂きながら、抄録集をもう一度読み直していました。このホテルは学会中に宿泊させて頂いたホテルでした。素敵なホテルでしたよ。

さて、学会ですが事前申し込みが3000名を越えたということですが、学生や研究者を抜いた臨床家がどれだけ学会に参加しているのかなと思っていました。医師は開業されている先生方も、病院勤務されている先生方も、専門の学会に必ず所属し、参加され最新の医療や研究を勉強されています。
同じく医療を行う、鍼灸師はどうでしょうか?私は東洋医学研究所において修行させて頂いている中で、「勉強することは当たり前だ」ということを自然のうちに身体に沁み込ませて頂きました。お金を稼いで食べていかなくてはいけないことは事実ですが、患者さまの身体を診る責任として、鍼灸の学会に所属し、参加するのは当たり前だと思っています。できれば研究発表もすることが大切ですね。



内容は、テーマにもありましたが、統合医療の一つとして鍼灸がどのような位置づけにあり、今後、どのような展開を見せるのかということです。そして、鍼灸がどのように一人の患者さまを支える医療の一員として評価され、取り入れられていくかということです。

今回の学会でも、統合医療あるいは、統合医療の中で鍼灸治療を取り入れている医療機関の例などの多くの講演がありました。鍼灸治療は統合医療の一つとして今後、さらに評価されていくと感じました。
しかし、この学会の講演でもそうですが、現在、鍼灸治療の評価は、医師や研究機関の学者が中心となり行われています。医療機関の中で全人的医療、オーダーメード医療を行う中で、鍼灸治療は価値ある治療であるかということが検討されているわけです。

単刀直入に言うと、「鍼灸治療は評価されるが、鍼灸師は評価されていない」ということです。今回の講演などでも、そのような空気を感じました。聴いてもピンと来ない人は来ないかもしれませんが、現在の鍼灸を含めた統合医療の流れを意識しながら聴くと、そう感じざるを得ないかな~と思いました。

ですから、鍼灸師は勘違いしてはいけないのです。鍼灸は医療として、医学として認められていくが、鍼灸師はそうではないのです。だから勉強し、学会に参加して研鑽し、自分の臨床能力を向上させ、そして、患者さまに最新の医療を提供できるようになっていかなければいけないのです。でなければ、鍼灸の保険診療や鍼灸師の立場自体が、差別化されてくるでしょう。

鍼灸師の中で差別化されることは、これから必至だと感じます。でも多くの鍼灸師が早く気づいて欲しいですね。良いも悪いも影響を一番受けるのは患者さまなんですからね。患者さまに、最良の、安全な、安心できる鍼灸治療を受けて頂くためには、鍼灸師自身がさらに努力しなければならない時代に来ています。今が種を蒔く時期だと私は感じます。



一般口演でも様々な分野で鍼灸治療の臨床や基礎の研究発表があり、多くの刺激を頂きました。質問なども何度かさせて頂きました。知らないことがまだまだたくさんあるな~と勉強意欲をさらに向上させ金沢に帰ってきました。

市民公開講座にも多くの一般市民の方が聴講されに来ていました。演題は「がんと鍼灸」ということで、明治国際医療大学の先生が「はり・きゅう ってどんな治療!」ということで鍼灸治療を簡単に説明され、国立がん研究センター中央病院 手術・緩和医療部長の下山先生が、がん性疼痛を和らげたり、抗がん剤、手術、放射線治療での副作用へ鍼灸治療を20年来利用されている話があり、また、鍼灸治療をがん患者へ利用する際の判断基準などのお話がありました。その他にも、抗がん剤で起きる末梢神経障害などに鍼灸治療を利用し、その研究も行っている、明治国際医療大学の先生のお話もありました。

鍼灸治療は一般の方々にもここまで理解されるまでに来ています。この公開講座の冒頭には、MBSが制作した番組である報道特集の中の「補完医療~アメリカの取り組み~」という映像が流され、不妊症やパーキンソン病への鍼治療が紹介されました。

映像っていうのはインパクトがあるな~と思いましたね。一般の方々からみると「こんな病気にも鍼灸治療が取り入れられているんだ~」と理解しやすかったと思いますね。

なんせ、この学会で感じたことは”危機感”ですかね。危機とは、危険と機会の狭間なんだろうと思います。どっちに意識を向け、どう行動するか、それは鍼灸師自身の心の在り方にかかっているのでしょう。「今」の状況を機会(チャンス)と捉えて、勉強し、研究し、活動していくことが、これからさらに必要になってくるでしょうね。

いくら患者さまをたくさん診療していても手前味噌だけでは信頼が得られない状況になっていくのではないかと感じます。患者さまを多く診療している先生ほど、たくさん勉強しなければいけないし、幅広い医療の知識を得るため診療を休んででも学会に参加するのが当たり前でしょうね。と、私は考えます。

”危機感”を再確認できただけでも、いい刺激になり、いい学会だったと思います。普段、会えない仲間とも会えて、情報交換ができ、これまたいい刺激になるんですよね

≪今回、私が聴いてきた発表≫
特別講演
 ・わが国における統合医療の現状と問題点
会長講演
 ・これからの医療の新展開 全人的統合医療を目指して
シンポジウム
 ・統合医療とは
 ・様々な立場でのトレーナー
ランチョンセミナー
 ・筋肉の痛みとトリガーポイント
市民公開講座
 ・がんと鍼灸
一般口演&ポスター発表
 ・切皮時における心拍数の変化について
 ・乾布摩擦が恒常性維持機能に与える影響
 ・大声を出し人にかみつく小児に対しての小児鍼
 ・アトピー性皮膚炎に対する鍼治療の臨床的効果-鍼治療と軽鍼刺激の比較-
 ・不妊症、排卵障害に対する鍼灸治療による基礎体温の変化
 ・体外受精から妊娠に至るレディ―スクリニックでの鍼灸師の取り組み
 ・癌骨転移による病的骨折に伴う疼痛に対する通電療法の1症例
 ・当センターの癌患者に対する鍼灸治療の実態と治療効果(第3報)
 ・がん患者に対する鍼灸治療-エビデンスに基づく鍼灸ガイドライン-
 ・がん患者に携わる鍼灸師の実践と意識(第2報) 患者の心の反応について
 ・婦人科癌術後補助療法副作用の鍼灸治療
 ・がん化学療法による末梢神経障害に対する鍼通電療法の効果(第3・4報)
 ・パクリタキセルに伴う末梢神経障害に対する鍼刺激効果の検討
 ・野球肩に対するトリガーポイント鍼治療の効果(学生ポスター発表)


東洋医学研究所グループの先生方の発表はほとんど聴かせて頂きましたが、それはパート2にて報告。

パート2へ続く…

二葉鍼灸療院 田中良和
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