山肌の田んぼにはなにか近代的なリズムを感じさせる区切りがあります。これに対して、時折出現する谷あいの平地はというと、こちらはとても気ままに区切られていて、先に境界線を引いた者が勝ち、というような無秩序さがあって、逆に懐かしさのような感じがします。
それにしても、入り組んだ山肌の等高線を丹念にトレースしするようにして水田を造る情熱を持った民とは一体どんな人たちなのでしょうか。聞くところによると、農家は米作りがほとんどで、子供は学校にもゆかず、この国では一番貧しい暮らしをしている地域のようです。
ツアーバスは休みなく走るので窓外の風景でしかわかりませんが、時々見る地元の人はカラフルな衣装を着ています。普通観光地では祭礼とか観光イベントで民族衣装をまとうのですが、こちらは民族衣装が普段着そのものと改めて理解しました。
国境の町ラオカイからさらに120Km離れた山奥の村サパへ向かいます。急な曲がりくねった道路を約3時間半の行程です。かっては地元の人以外は、物好きな人たちによる小規模のツアーぐらいしかありませんでした。ラオカイまでのハイウエイができて事情は一変。秘境「サパ」は観光地化しているそうです。