読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
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「毛利元就 第十二回 元就暗殺指令」

2018-09-12 23:53:12 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第十二回 元就暗殺指令」です。

-----内容&感想-----
結婚初夜を別々の部屋で寝て過ごした元就と美伊(みい)は翌日の朝を迎えます。
小屋で寝ていた元就が外に出ると摘んだばかりの蕗の薹(ふきのとう)を持った美伊が来て朝ご飯に食べましょうと言います。
しかし小屋の寒さに参っていた元就はあまり相手にせず美伊は不満げになります。
そこに杉が現れ、美伊が殿(元就)は心から好いた女でなければ申し訳ないと寝所を別にし、まことに立派なお心に感じ入りましたと力説します。
すると元就が慌てて先ほどまであまり興味がなさそうだった蕗の薹を手に取って「美味そうな蕗の薹じゃなあ」と言っていたのが面白かったです。

美伊の侍女の藤野は吉川に毛利の有りようを逐一報告しようとしていたため、元就が寝所を別にしたと聞いて慌てます。
藤野は同じ床で寝れば言ってはならぬことの一つや二つ漏らすはずだという思惑があります。
「美伊様、今宵は殿を押し倒しなされ」ととんでもないことを言っていて面白かったです。

元就と美伊は毛利本家の郡山城に挨拶に行きます。
幸松丸(こうまつまる)の母で亡き毛利興元(おきもと)の正室、雪が「元就殿、心強い御方様じゃの」と言うと元就は「よお眠り、よお食べ、元就より肝が据わっております」と言い、美伊が気まずそうなのも面白かったです。

郡山城から帰った美伊と藤野がちっぽけな城だったと言い合っていると元就に聞かれて気まずくなります。
美伊が元就に私ならこの猿掛(さるかけ)城を本拠にすると言ったのは興味深かったです。
山が険しく良い構えになると言い、元就も「さすがは吉川の娘じゃ」と感心していました。

重臣の井上元兼(もとかね)が杉のもとを訪れて美伊のことが気にかかると言います。
杉も実は私もだと言い、元兼は勢い込んで大内義興(よしおき)はじきに京都を出て、尼子経久(つねひさ)を自ら叩き潰すため山口に帰ると言います。
近々戦になり、その際毛利が美伊に仕切られ尼子方に付くのではと案じられてならないと言います。
すると杉は「何じゃ、左様なことを案じておったのか」と言い、侍女の久(ひさ)が美伊は毒蛇のような女子だと思っていたのにあの目の輝きと肌の艶に杉様は驚いておられると解説します。
杉が「杉もあのようになりたいものじゃ。井上殿、何かよい方法はないものかの」と言い、元兼が「何と馬鹿なことを!」を呆れていたのが面白かったです。

重臣の渡辺勝(すぐる)が通りかかった藤野に、最近見たこともない人達が城の周りをうろついていて、吉川の間者(かんじゃ)だろうと言います。
藤野が「証拠もないのにそのようなことを申されては迷惑千万。仮に万が一吉川の間者だとしても、戦国の世の習いとして当然至極のことでござる」と強がります。
すると勝が藤野の肩を掴み「肩の力を抜いて、楽になられよ」と言い微笑みます。
放心状態の藤野は勝に恋心を抱いたようでした。

美伊が井戸から水を汲んで花に水をやろうとすると元就が来てそんなことは美伊がやらなくて良いと言います。
美伊は自身は体を動かすから丈夫で、体の弱い幸松丸ももう少し体を動かして丈夫になったほうが良いのではと言いますが元就は「余計なことじゃ。昨日来たそなたにそのようなことは言われとうはない」と言います。
ムッとした美伊が「されど美伊は、子が生まれた暁には強く丈夫に育てまする」と言うと元就は「子などできぬわ」と言い捨てて去って行きます。
この言い争いから二人はろくに口もきかなくなり、それぞれ気まずい思いを抱えながら日々を過ごします。

元就が美伊のところに来て一緒に夕ご飯を食べないかと言います。
美伊も藤野も殿と同じ席で食べるなど聞いたことがないと言っていて、この時代の食事の摂り方は今とは違うのが分かる場面でした。
美伊は自身から謝らなければならないのに殿は優しいと言い感動していました。

元就は美伊の叔母の萩は尼子経久の正室で、尼子と毛利では家の格も宝も領地も比べ物にならず美伊が気の毒だと言います。
すると美伊は「殿は生きる気合では叔父上には負けてはおりませぬ」と言い、さらに「さすれば、後は若い分、殿が勝ったようなものにござります」と言います。
「勝ったようなものにござります」は美伊の口癖で今回の話で三回も言っていました。

寝所で眠る美伊を二人の暗殺者が襲撃します。
狙いは元就の暗殺で、美伊しかいないことでしくじったと思い、一人がならば妻女だけでもと美伊を殺そうとします。
しかしもう一人が命令を受けたのは元就の暗殺だけだと言いやめさせます。
その隙を突いて美伊が逃げて助けを呼びます。
毛利家家臣達と二人の斬り合いになり、美伊の殺害をやめさせた方の暗殺者がもう一人を逃がし自身は自害しようとします。
その寸前で美伊が「小三太(こさんた)!刀を納めなさい!」と言い、元就にこの者は小三太という吉川の間者で、私が間違っていたから何卒お許しくださいと言います。
元就は「行け」と言い暗殺者を見逃しますが、実際には吉川の間者ではなく武田元繁(もとしげ)の残党だと気づいていて、美伊になぜ嘘をついたと聞きます。
美伊は暗殺者は自身を斬ろうと思えば斬れたのにそんな命令は受けていないと刀を納めたので、それほどまでに信義を守る男ならいつか必ず殿のために働いてくれると思ったと言い、元就は感銘を受けます。
元就は「美伊がここで一人で寝るのは危ない。今宵より、わしはここで寝る。よいな」と言い美伊も承諾します。


元就と美伊(画像はネットより)。

大内義興が10年間に渡る京都滞在を終え尼子討伐のために山口に帰国します。
正室の綾と嫡男の亀童丸(きどうまる、後の大内義隆)が迎えます。
京都に発つ朝はまだ赤ちゃんで軽々と抱けていたのが今は凛々しい少年に成長し、義興は「抱けぬわ、抱けぬわ」と言ってとても嬉しそうでした。

尼子経久は杵築(きずき)大社(出雲大社)を新たに建立して33年おきの遷宮を実現し、その権力と財力を全国に示します。
尼子家重臣の宇山久兼(ひさかね)は「尼子が出雲大社を造営したということは、尼子が山陰の平定を確実にしたということを世に知らしめたのでござる」と言い、重臣の亀井秀綱、正室の萩も機嫌良く笑っていました。
私は出雲大社を造ったのが尼子経久だということに驚きました。
さらに今までは「出雲の平定」だったのが「山陰の平定」とあったのにも驚き、尼子の力が大きく伸びているのが分かりました。

負けてはいない義興は伊勢神宮の御神体を分けてもらい山口に見事な伊勢神宮を造営します。
義興が「亀童丸、これは戦じゃ。血を流さずとも尼子との戦すでに始まっておる」と言っていたのがとても印象的でした。
大内家重臣の陶興房(すえおきふさ)は国人衆の多くが尼子に傾いているため今少し地固めが必要と言います。
すると義興が「水軍じゃ」と言い、密かに動いて水軍をことごとく味方につけるように言います。
この水軍は「村上海賊の娘」(著:和田竜、2014年第11回本屋大賞受賞)で大活躍した村上水軍のことで、水軍の名前が登場してかなりワクワクしました。

元就が見逃した暗殺者が元就と美伊のもとにやって来て、大内と尼子の戦が近く尼子は西国の国人衆を次々と味方につけ、大内は水軍を味方につけようと動いていると伝えます。
今回は今までにない大戦になるのは必定で、近々両軍から使いがくるからどちらに付くか心積もりをしておくのが良いと言います。
暗殺者は帰ろうとしますが元就が呼びとめ、まことの名は何と言うのかと聞きます。
答えない暗殺者に元就は「ではわしが名づけてやろう。今日よりそちは、小三太じゃ」と言います。
美伊も嬉しそうに「小三太、よい名であろう」と言い小三太は「はい」と言って微笑みます。
美伊が言っていたとおり小三太は元就のために働いてくれるようになりました。
元就は「美伊、今までにない大戦じゃ」と言い不安と覚悟の混じった表情をしていました。


今回は元就と美伊の仲が良くなったのと大内と尼子の戦が近づいたのが印象的でした。
前回から「今までにない大戦」という言葉が何度も登場しているのも印象的です。
毛利にとって巻き込まれるのは避けられない戦で、元就がどう動くか楽しみにしています。


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第十一回 花嫁怒る」

2018-09-07 19:50:10 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第十一回 花嫁怒る」です。

-----内容&感想-----
冒頭、毛利元就が初陣で武田元繁(もとしげ)を打ち破ったことで「元就の武勇は一挙に中国地方全土に広まったのです」とナレーションがありました。
ついに元就が名を轟かせて嬉しかったです

杉は元就が名を轟かせたことをとても喜び、元就に「神社に詣でても寺に参っても元就様の噂で持ちきりじゃ」と言っていました。
さらに毎日元就を褒めてくれた人の数を紙に書いていて元就に見せていました。
元就は戸惑いながらこれ以上自身の噂が広まれば毛利は危ないと言います。
盟約の国人衆は毛利が急に強くなったと思い警戒し、そうなれば毛利は動きが取れなくなると言っていて、さすがによく見ていると思いました。

出雲の月山富田城(がっさんとだじょう)では重臣の宇山久兼(ひさかね)が尼子経久(つねひさ)に盟約の国人衆への調略が順調に進んでいると言います。
一国ずつ切り崩していき孤立させれば毛利を大内から切り離すのは容易いと言っていて、早くも尼子によって盟約が弱体化していました。

月山富田城に吉川国経の娘で吉川家当主の元経(もとつね)の妹、美伊(みい)がやって来ます。
経久は美伊が苦手で到着の知らせを受けると「寒気がすると思った。あの子はどうも苦手だ」と言っていました。
普段は策略家の風格たっぷりの経久が美伊の天真爛漫な振る舞いに圧倒されてたじたじになっているのが面白かったです。
経久の正室の萩は美伊と親戚です。
とても美伊が苦手そうな浮かない顔をしていた経久ですが、美伊を元就のもとに嫁がせることを閃きます。
国経を呼び出した経久はぜひ美伊を元就のもとに嫁がせるように言い、国経が武田元繁を打ち破ったと言っても毛利にはまださほどの力はなくさらに元就は次男で、当家にとっても尼子家にとっても大した力にはならないのではと言います。
経久はそれでも構わないから元就に嫁がせろと言い、国経がなぜそんなに元就にこだわるのかと聞くとにんまりと微笑んでいて、策略を立てているのが分かりました。

毛利家に縁組の話が来て評定(ひょうじょう)が開かれます。
後ろに尼子が居る美伊と元就が縁組すれば大内は不快に思うことが予想されます。
亡き興元(おきもと)の正室、雪が毛利と大内とのつながりを知りながらこんな縁組の話を持ち出してくるとはどういうつもりかと言うと、重臣の桂広澄(ひろずみ)が尼子は既に吉川を取り込んだと考えるべきと言います。
筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)は尼子の調略が進み盟約の国人衆はもはや当てにはできない現状だと言います。

元就は家臣と雉狩りに出掛けます。
すると何とそこに尼子経久が待ち伏せていました。
「第一回 妻たちの言い分」で元就が幼少時代に遭遇して以来の再会です。
経久が「武田元繁(もとしげ)を殺したは流れ矢と言ったそうだな」と言い、元就は「はい、まことに運良く流れ矢が当たってくれました」と言いますが経久は全く信じないです。
二人の話の中で生き方についての考え方の違いが興味深かったです。
元就は「小さな国の領主として、某(それがし)は家族を守り、つつがなく細く長く生きるのが武将として最も難儀なことと思うております」と言います。
経久は「わしは太く長く生きる。60歳のわしにとって、全てはこれからだ」と言い、太く短くとせず太く長くと言っていたのが印象的でした。
そして還暦を迎えてのこの野望の持ち方は凄いと思いました。
経久は「わしと手を組まぬか」と言います。
元就は「逆らえば、矢が飛んでくるのでござるか」と言い、周囲に弓矢を構えた経久の家臣達がいるのを察知していました。
しばし無言で向き合った後経久は去って行きます。
緒形拳さん演じる経久はやはり風格が素晴らしく、こんな人が天下を狙って動けば凄いことになるという気がします。

元就は美伊との縁組を受けることを決めます。
経久に待ち伏せをされ、ひとたび合図をされれば即座に矢が飛んできて撃ち殺された状況はまさに今の毛利家のようだったと言い、尼子と毛利の圧倒的な力の差を感じていました。
その尼子が後ろにいる縁組では受けるしかないと覚悟を決めたようです。

吉川の館では縁組の噂を聞いた美伊が侍女の藤野に「立派な家の御方様になって凛々しい子供をたくさん生むのじゃ」と意気込みを語っていました。
しかし国経と元経にわずかな領地しかない元就のもとに嫁ぐように言われ怒ります。
それでも経久が縁組に関わっていると察知した美伊は経久に逆らえば吉川家のみならず萩も困るだろうと言い嫌々ながら嫁ぐことを承諾します。
国経は「今尼子の力は急速に伸びておる。吉川としてはその下に付き、安芸も出雲も石見(いわみ)もまとめたいのじゃ」と語っていて、まさに政略結婚だと思いました。

郡山城で元就と美伊の縁組が整ったことが伝えられます。
その後で元就は重臣の井上元兼と話をし、大内とのことを頼むと言います。
「毛利本家は大内殿との縁を保つのじゃ。わしは毛利分家として、吉川と尼子とつながる。毛利はな、大内とだけつながっても、尼子とだけつながっても立ち行かぬのじゃ。そこで元兼、おぬしが頼りなのじゃ」と言います。
さらに「元兼はな、大内殿より多大な信頼を得ておるであろう」と言い元兼をまんざらでもない雰囲気にさせていてこれは上手いと思いました。

元兼は京都から帰国途中の大内家の重臣、陶興房(すえおきふさ)から内々に呼び出されます。
興房は元兼に「実は、御館様(おやかたさま、大内義興(よしおき)のこと)の帰国は、尼子経久を直々の手で成敗いたすためじゃ」と伝えます。
元兼が「戦になりまするな」と言うと興房は「今までにない大戦じゃ」と凄んだ声で言います。

1518年(永正15年)、美伊が毛利家に嫁いできます。
その夜、元就と美伊の掛け合いは印象的でした。


元就と美伊(画像はネットより)。

寝所で元就が休もうかと言うと美伊が裸になり「このとおり寸鉄も帯びてはおりません。床入りの作法として父より教えられました」と言います。
これは色仕掛けで暗殺しに来たわけではないから安心してくれということだと思います。
しかし元就は美伊に着物を掛けてあげ、「わしはやはり、そなたとは同じ床では休めぬ。別の部屋で休む」と言います。
すると美伊が激怒して元就を平手打ちし、「無礼者!裸にまでなったというに、何たる無礼!帰る!」と言って出て行こうとします。
元就は必死に美伊を引き止め、「わしはな、今の今まで同じ床で休むつもりでおった。じゃがな、裸になって身の証を立てる女と分かって己が恥ずかしゅうなった」と言い、ここで美伊がはっとした表情になります。
さらに元就が「わしはかねてより惚れた女子と結ばれたいと思うておった」と言うと、美伊は「美伊も今、殿のことは好きでも嫌いでもござりませぬ。同じ床に入らずに済めば、かように嬉しいことはござりませぬ」と言います。
元就が戸惑いながら「はっきりしていてよいな!」と言うと美伊は「殿も正直でよろしゅうござりまする」とふてぶてしく言い、元就は怒りながら「ゆるりと休むがよい!」と言って寝所を出て行きます。
結婚初夜にして物凄く気まずくなりましたが、元就が出て行った後美伊は「無礼者め」と言いながらも微笑んでいました。
微笑む様子を見て元就に好印象を持ったことが分かり、夫婦仲が良くなることが予感されました。


今回は元就の正室となった美伊がとても印象的でした。
美伊は「第八回 出来すぎた嫁」で元就が言っていた「雪(聡明さ)と杉(天真爛漫さ)の二人によく似た女子を娶る」を体現してもいると思います。
まだ気まずい二人が仲良くなっていくのが楽しみです


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第十回 初陣の奇跡」

2018-08-31 23:58:36 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第十回 初陣の奇跡」です。

-----内容&感想-----
毛利興元(おきもと)の急死により毛利本家の郡山城は興元の子でわずか2歳の幸松丸(こうまつまる)を城主として迎えます。
幸松丸の母の雪は元就に後見役になってほしいと頼み元就も引き受けます。
元就が自身は初陣も済ませていない若輩者で、そんな後見人で心配ではないかと聞くと、雪は元就に頼んだのは元就が興元と全ての悲しみを共に分かち合ったからだと言い、さらに次のように言います。
「悲しみの数が多い人間ほど、強うなれると思うておりまする」
これはそのとおりだと思います。
悲しむのは嫌なことですが、悲しい目に遭った人は人の痛みを知ることができます。

評定(ひょうじょう)で筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)が元就が幸松丸の後見役になったことを伝えます。
すると重臣の井上元兼(もとかね)が「武田がこのまま黙っているとは思えず、尼子の動きも不気味だ。そんな時に初陣も済ませていない元就が後見役とは」と嫌味を言います。
揚げ足を取ったり場を白けさせることばかり言っていて嫌な人だと思います。
雪は相合(あいおう)元綱に「元就の弟のそなたには特に頼みたい。元就が幸松丸の右腕なら元綱は左腕だ。甥である幸松丸を助けてくれ」と言います。

相合の館で元綱は重臣の桂広澄(ひろずみ)に自身は誠心誠意幸松丸の左腕となって働くつもりだと言います。
さらに「毛利家は未だ強大な国人衆に囲まれその立場は磐石ではない、今こそ尼子経久(つねひさ)との絆を強くし、我等が毛利を立て直す旗頭となる準備をするべきではないか」と言います。
相合は元服したばかりなのにとても強気な元綱に感心していました。

経久の裏切りに遭った武田元繁(もとしげ)は密かに安芸制覇の準備を整えていました。
郡山城の西隣の今田に陣を張った武田の軍勢は多くの国人衆の参加により5500騎にまで膨れ上がっていました。
元繁はまず毛利吉川連合軍が落とし、毛利が吉川に譲った有田城を攻め落とし、有田城の東にある毛利分家の猿掛(さるかけ)城、そのさらに東にある毛利本家の郡山城をたっぷり恐怖させてから一突きにしてやると言います。

武田軍が有田城を包囲し、その知らせが毛利に届きます。
武田軍5500に対し毛利軍は吉川軍を入れても1500で4倍近い兵力差がありこのままでは勝ち目がないです。

出雲の月山富田城(がっさんとだじょう)では経久と正室の萩が毛利と武田の戦のことを話します。
萩が経久に「まず毛利に味方して武田を潰し、その後で毛利を攻めて城二つを頂戴しようとは考えないのか」と言っていて恐ろしい奥方だと思いました。
奥方も策略家だったのかと思いました。
経久は「今はまだその時ではない。戦においては何よりも時が肝心だ」と言い、いずれはそうするつもりなのだと思いました。

京都の大内義興(よしおき)の館に元兼からの合力(ごうりき)を願う書状が届きます。
義興は京都を引き上げると言います。
大内は毛利の援軍どころではなくなっていて、重臣の陶興房(すえおきふさ)は武田が経久に裏切られながらも大暴れしていて、すぐに帰国して大内の所領を治め直さないと危ないと言います。
義興がしみじみと「毛利も終い(しまい)か…」と言っていたのが印象的でした。

郡山城では元就と元綱が話していたところに重臣の渡辺勝(すぐる)が武田が民家に火を放ったことを知らせます。
武田軍は600騎が挑発をしに攻めてきていて、勝が出陣すると言うと元就が「無駄死にはまだ早い」と引き止めようとします。
元就が「勝の手勢は?」と聞いた時に「150」と答え微笑みながらお辞儀をし、即座に厳しい顔つきになって歩き出したのが印象的でした。
死を覚悟しているのが分かりました。
勝は150の手勢で4倍の武田軍を追い払いますが郡山城に大軍が攻め込んでくるのは時間の問題でした。

追い詰められた元就は機先を制して武田軍を撃滅しようと決意し、勝が部下達に弓矢の訓練をしているところに行きます。
元就がこの者達の引く矢で馬上の者を射殺せるかと聞くと、勝は30間(54.5455m)の距離まで近づければ必ず射殺して見せると言います。
元就が敵の大将の武田元繁をおびき出すから射殺してくれと言うと、勝は「おびき出せるはずがない。大将は常に後方にあるものだ」と言います。
すると元就は「元繁は元就など己一人の力で討ち取ってくれるといきり立つかも知れない」と言っていて、これはあるかも知れないと思いました。
元就は元繁の血の気の多い性格を読んでいました。

元就は杉のところに行き、若気の至りで辛く当たることもあったが許してくれと、明日の戦での死を覚悟した言葉を言います。
杉は元就が子供の頃奇抜な格好をしていた時に頭に結わえていた紐を保管していて、それを取り出して元就の兜に結わえて渡します。
「子供時代のように、悪さをするつもりで存分に楽しんでこい」という言葉に元就は勇気付けられます。


初陣での毛利元就。右上は大内義興、左下は尼子経久(画像はネットより)。

翌日毛利軍は吉川の援軍を加えてわずか1500の手勢で3倍以上の4800(残りの700は有田城の警固)の武田軍と向かい合います。
戦が始まり、元就の「一旦引いて敵をおびき寄せ、周りを囲んで一気に攻める」という作戦が上手く行き武田軍の有力な武将の熊谷(くまがい)元直を討ち取ります。
元繁は「こしゃくな毛利の若造め!」と激怒し周りの制止を振り切って出陣します。
毛利軍は再び一旦又打川(またうちがわ)という川の向こう側まで引き、元就は勝にいよいよ弓隊の出番だと言います。
元就は「元繁をおびき出す。川中まで来たらその時弓を引かせろ」と言い、決死の覚悟で「毛利元就見参!」と一人で武田軍の目の前に行き元繁を挑発します。
元繁は激怒して「わし一人で行って討ち取ってくれるわ!」と言い元就目掛けて突進し、そこを勝の弓隊の矢が襲い元繁を貫き討ち取ります。
元就の大活躍で圧倒的に不利だった戦を毛利軍が勝利します。
「元就のこの作戦は無謀なものでした。しかし鮮やかな結果によりこの有田城の合戦は西国の桶狭間と呼ばれるようになりました。これこそが知将、毛利元就の初陣だったのです」とうナレーションがとても印象的でした。

郡山城の評定で雪がよく戦ってくれたと礼を言い、重臣達が元就を絶賛します。
勝は今回の戦は元就の手柄だと言い、広良は敵の心の隙に付け込む戦術が見事だと言います。
元就が勝の育てた弓の達人達がいればこそだと言うと、勝は自身には到底人の心の動きは読めない、大将の武田元繁が先陣を切るとは思わなかったと言います。
福原広俊(元就の祖父)は元就の眼力に驚いたと言い、さらにたった一人で敵の大将をおびき出す勇気はとても初陣とは思えず、今に毛利に元就ありという噂が駆け巡るだろうと言います。
しかし元就は今回の元繁の死は流れ矢に当たったことにしてほしいと言い猿掛城に戻ります。
広良は元就のこの動きを初陣で元繁を討ち取ったと言われれば周辺の国人は恐れをなし早いうちに毛利を潰そうと動くため、それを阻止するのが狙いだろうと言います。
そして「早くも人の心を読んでおられる。これはまことに毛利を救う武将になられるやも知れぬのう」と言います。
「この時、志道は密かに毛利は元就に任せるべきだと確信したのです」というナレーションがあり、知将として頭角を現した元就の凄さを感じました。
この評定で元綱がずっと不機嫌な表情だったのも印象的で、元就ばかり持ち上げられることと戦で活躍できなかった自身とに苛立っているのだと思います。

元就は杉と久に「元就は嫌な人間じゃ」とぼやきます。
「人の弱いところを探し出しそこを突く。嫌な人間じゃ」と言うと杉が戦は武器だけではない、元就のような頭があればこそ大軍に勝利できたのではないかと言い、これは杉の言うとおりだと思います。
しかし元就は相手の心を読んで策略を立てる戦い方にまだ自身の心が付いていかなくて苦しんでいるのだと思いました。

経久のもとに元繁が毛利の流れ矢で死んだと知らせが来ると「何が流れ矢なものか」と言い、元就の仕業だと確信します。
そして「わしは動く。動くぞ」と言います。


今回は元就の凄さが印象的な回でした。
圧倒的に不利な状況でも策略を立てて毛利軍を勝利に導いていて、まさに知将の戦い方でした。
勝利しても浮かれず毛利が周辺の国人に警戒され潰されないように配慮していたのも印象的で、この慎重さがあるから元就は大内、尼子の大名や国人衆に囲まれた中で生き残り、やがて西国最大の戦国大名になることができたのだと思います。


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第九回 さらば兄上」

2018-08-26 19:50:01 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第九回 さらば兄上」です。

-----内容&感想-----
雪が毛利興元(おきもと)の子を身ごもります。
吉田郡山城を訪れた元就に興元が「雪はよくやってくれる。申し分なき室(正室)じゃ」と言っていて私は嬉しくなりました。
この二人の夫婦仲が良くなって良かったです。

京都の大内義興(よしおき)は盟約(国人領主連合)の勢力拡大を警戒し、武田元繁(もとしげ)を国元の安芸に帰し盟約の国人衆を抑えるように言います。
「しかしこの武田元繁こそ、尼子経久(つねひさ)と恐ろしい密約を結んでいたのです」というナレーションがあり波乱が予感されました。
元繁は家臣達にただちに経久にこのことを知らせるように言い、まずは毛利を叩き潰すと言います。

出雲の月山富田城(がっさんとだじょう)では知らせを受けた経久が策略を考えます。
経久は盟約の結束力がどれほどのものか読めないため、血気盛んに安芸の国人衆達に攻め込もうとしている元繁を戦わせて確かめようとします。
元繁と密約を結んでいても体よく利用しようとしていて、経久の狡猾さを感じました。

帰国した元繁は義興に反旗を翻し、大内方の大野河内城(こうちじょう)を攻め落とし、さらに己斐城(こいじょう)を包囲する動きに出ます。
義興は元繁を討つように興元に命ぜよと言います。
重臣の陶興房(すえおきふさ)は興元は大内を裏切って逃げ帰ったことを忘れてはいないはずで、裏切りを許すと言えば必ず動くと言います。
義興は毛利が動けば盟約の国人衆がどう出るかを見ることができ、盟約の結束の強さを確かめられると言っていました。
経久も義興も盟約の結束の強さを確かめようとしていて、安芸九ヶ国の盟約がいかに警戒されているかが分かりました。

評定(ひょうじょう)で興元は大内の命に従い武田と戦うと言います。
京都から無断で撤退したのを口実に毛利の商いの道は大内の圧力で閉ざされたままで、自身のせいで領民の暮らしが困窮しているのをそのままにはしておけないという思いがあります。
毛利だけではとても武田には勝てないため盟約の国人衆の合力(ごうりき、援軍として共に戦うこと)が欲しいところですが、大内の命に従うことは盟約に反していて、簡単には合力してもらえそうにないです。
元就が「吉川に有田城を共に攻め落とそう」と誘えば合力してくれるのではと言います。
有田城は元々吉川の城でしたが武田に取られてしまい、その口惜しさを今でも吉川は忘れていないはずというのが元就の考えで、筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)が「今回の戦は盟約を破ることにはならず、大内に借りを返すだけのため」と説得することになります。
前回に続いてここでも元就が知将ぶりを発揮していました。


毛利興元(画像はネットより)

興元が元就を呼び出し、武田との戦で元就は留守を守っているように言います。
「わしの思い、分かるな」と言っていて、元々は兄が大内に無断で京都から逃げ帰ったことが招いた戦で、そんな戦で弟を危ない目には遭わせられない、そしてもし自身が死ぬようなことがあったら後を頼むと言っているように見えました。
雪が元就の帰り際を引き留め、なぜようやく立ち直ったばかりの興元を戦に行かせるのかと言います。
元就は「大内の命に従うことで、兄上は裏切りから解き放たれる」と言っていました。
「お家は潰され、殿は死ぬ…」と悲観している雪に元就は「必ず吉川を説得し、合力を取り付ける。決して兄上を死なせるようなことはしない」と言っていましたが、今回のタイトルは「さらば兄上」で、とても印象的な場面でした。

重臣の桂広澄(ひろずみ)が重臣の渡辺勝(すぐる)に手を組まないかと話をします。
広澄はかねてから尼子経久と気脈を通じていることを打ち明けます。
一旦は刀を広澄の首に突き付けた勝ですが広澄の言葉を聞くうちに刀を納め、広澄が尼子に通じるのを黙認したことが分かりました。

元就と広良が吉川家当主の吉川元経(もとつね)とその父、国経を説得しますが動こうとしないです。
杉の「命がけの思いが人を動かすのじゃ」という言葉を思い出した元就は自身を人質に取りもし興元が約定を破った場合は首をはねてくれと言い、涙ながらに幼い頃から自身を育ててくれた兄興元に恩を返したいという思いを語ります。
元就の心からの言葉を聞いた国経が「あい分かった。吉川全軍をあげ合力致す」と言い、吉川の合力を取り付けることに成功します。

毛利吉川連合軍は有田城に兵を進めます。
しかしこれは武田元繁の読み通りで尼子との挟み撃ちにして全滅させようとして動きます。
興元は撤退を決断しかけますが勝の「今撤退しても退路を断たれて全滅する。我らが生き残る道は尼子が動く前に有田城を落とすしかない」という言葉を受け有田城に攻めかかり、狙い通り落とします。

毛利吉川連合軍が有田城を落とした知らせを受けた経久は「戦はやめた」と言います。
盟約の結束の強さに感心していて、兵は動かさず調略で盟約を尼子に抱き込む方針に変えます。
尼子の出陣がなかったため戦局は一変し武田軍は兵を引きます。
毛利吉川連合軍が勝利し毛利軍は吉田郡山城に凱旋します。
興元は死ぬと思っていたので生きて凱旋したのは意外でした。

雪は無事に長男の幸松丸(こうまつまる)を生み毛利家は二重の喜びに包まれます。
陶興房が郡山城にやってきて義興が今回の毛利の戦ぶりをとても喜んでいると伝え、京都から勝手に帰国したことを許してくれます。
毛利に明るい兆しが見えて嬉しかったです。

広澄と勝が二人で話をします。
勝は今回経久が動かなかったのは盟約の力を計りたかったからで、盟約の力を認めた今経久は盟約に取り入ろうとするに違いないと言い、広澄も「そのとおりじゃ」と言います。
そして勝は「経久殿は面白うござる。それがし、手を組む」と言い、ついに勝も尼子方になります。

1516年、吉川元経と相合(あいおう)の娘、松姫の縁組が成立します。
吉川と毛利の結びつきは一段と強くなりましたが、その裏には毛利家中での力の拡大を図る広澄の思惑が働いていました。
松姫の兄、月夜丸も元服を済ませ、相合元綱(もとつな)となり広澄にとって頼りになる武将に成長していました。

興元が父と同じ酒の害で24歳の若さで急死します。
元就は涙を流しながら興元の死を悔やみ、一人ぼっちになってしまったと言っていました。


最後にあった「兄の死は気楽な次男坊である元就の運命を大きく変えていくのです」というナレーションが印象的でした。
兄を失った元就はやがて毛利家を背負って立つ存在になります。
経久が盟約の国人衆を調略しにかかるのも予想され、これからの話がかなり楽しみです


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第八回 出来すぎた嫁」

2018-08-25 11:34:16 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第八回 出来すぎた嫁」です。

-----内容&感想-----
大内の負けを見越して勝手に帰国した毛利、吉川、高橋の三家は今後の対応をどうするか話し合います。
元就が安芸の主な国人衆に働きかけて盟約を結ぶのが良いのではと案を出すと、「安芸の国人衆は一筋縄ではいかない者ばかり。特に大内から目をかけられている天野は簡単に盟約に応じるとは思えない」といった意見が出ます。
元就が「逆に一番厄介な天野を盟約に入れることができれば、他の国人衆も後に続くのでは」と言うと、吉川と高橋が「その役目を果たせるのは興元(おきもと)殿しかいない」と言います。
しかし興元は不安そうで、そんな興元を元就は心配そうに見ていました。

元就が自身も精一杯兄上をお助けしますと声をかけた時、興元が印象的なことを言います。
「この世の中、最後に頼りになるのは、身内だけじゃのう」
これを見て、家族の存在の大きさと大切さを強く感じました。

興元と志道広良(しじひろよし)が天野家当主の天野興次(おきつぐ)に盟約の話をしにいくと嫌味なことを言われて断られ、さらに大内義興(よしおき)から「ただちに毛利を討て」という書状が届いていることが明らかになります。
毛利には一刻の猶予もなくなっていました。

評定(ひょうじょう)で対策を話し合いますが行き詰る中、元就が興元に策があると言います。
元就は高橋家当主の高橋元光に会い、娘の雪殿に惚れたので毛利家に輿入れしてほしいと頼みます。
最初は「10年早いわ」「ひよひよの赤子が」とあしらっていた高橋ですが、元就が兄の興元の正室になってほしいことを言うと興味を示します。
元就は今高橋家と毛利家が親戚になれば天野は必ず恐れると言います。
高橋は既に安芸の国人、石見(いわみ)の国人と手を結んでいて、毛利は備後(びんご)と手を結んでいます。
両家が親戚になれば安芸、備後、石見と国の枠を超えた絆が整い、天野がその中で孤立を良しとするはずはないので、そのために三国の架け橋として雪に毛利家に嫁いでほしいというのが元就の考えです。
すると高橋も「やるのお、ひよひよ」と言って元就を見直していました。
二人の前に現れた雪に高橋が「毛利興元殿へ輿入れせよ」と言うと全く嫌がらずに「分かりました」と言い、盟約のための輿入れなのを分かっていて切れ者の予感がしました。


雪の方(写真はネットより)。

元就は雪と二人になると興元が心を病んでいることを打ち明けます。
隠してはおけない、輿入れを断られても仕方ないと言っていて、これは誠実だと思いました。
雪は「左様なことに胸を痛めるお方こそ、信じられまする」と言います。
雪の優しさを感じた場面でした。

1512年2月、雪は興元の正室になります。
評定(ひょうじょう)の場で福原広俊や興元が雪に「思っていることは何でも言ってくれ」と言うと、物凄い力を発揮します。
天野を盟約に加えるには両家の婚儀が整った今を逃してはならない、元就はただちに天野と話をし、みなで手分けして時を同じくして他の国人衆とも話をまとめてもらう、そうすれば大内の成敗も難しくなり、さらに家臣の皆には日頃どんな務めを任されているのかを話してもらいたい、無駄があれば無くし、さらに力を発揮してもらえるように洗い直したいと言います。
そんな雪を見て元就は呆気に取られていました。
間もなく天野を始め安芸の主な国人衆が次々と盟約に加わり協力な同盟が出来上がります。

義興に重臣の内藤興盛(おきもり)が安芸九ヶ国の国人衆が集まり盟約を結んだことを伝えます。
興盛は激怒し自身に毛利を討たせてくれと言いますが義興は成敗は一時取り止めにすると言います。
納得いかない興盛はたとえ盟約を結ぼうと安芸の国人などねずみのようなもの、自身にまかせてくれと言いますが義興は「ならん!」と重ねて言います。
重臣の陶興房(すえおきふさ)が「ねずみのごとき者どもこそ、追い込まれた時には必ず猫を噛むものじゃ」と言っていてそのとおりだと思いました。
義興は盟約を「いずれ丸ごとこちら側に引きずり込む。今は捨て置け!」と言い、怒りに任せて突進はしないところが流石だと思いました。
元就の大活躍で大内の成敗を取り止めにすることができ、早くも知将ぶりを発揮していました。

広澄が月夜丸の妹の松姫を吉川家に嫁がせると言います。
広澄はいずれ尼子の世になると見ていて、尼子経久(つねひさ)の奥方は吉川の出身のため、尼子の世になれば吉川を重く扱うようになると読んでいます。
こちらも政略結婚の策略が凄いと思いました。

雪が成敗の心配もなくなった今こそ手を打たねばならないことがいくつもあるのではと言うと、興元が元就と相談するから心配ないと言います。
その時に雪がとてもがっかりした幻滅の表情をしていて、本当は自身に相談してほしいのだと思いました。
雪が広澄が松姫を吉川家に嫁がせるのを急ぐのは何かあるはずで、尼子経久の奥方は吉川の出身でもあり、私なら表立たずに調べられるから働かせてほしいと言うと、興元は雪が生けていたさざんかの花の話をして全く噛み合わないです。
言いたいことをぐっと堪えて興元に話を合わせ、さざんかの花の話をする雪がかなり可哀想でした。

興元と雪が上手く行っていないという噂が聞かれるようになり、縁組を勧めた手前気まずい元就は郡山城に行かなくなります。
そんな元就に杉と侍女の久が郡山城に行きましょうと言うと元就は嫌じゃと言いながらぼやいていて、ぼやきぶりがどんどん板についてきています。
杉に連れられて元就が郡山城に行くと興元は一気に喜んで明るくなります。
雪と居る時の表情のなさとの差が印象的でした。

四人での酒の席になると雪がせきを切ったように話し出します。
盟約を結んで間もないのに毛利と吉川が縁組すれば他の国人達から抜け駆けしたと思われると言うと、元就はそんなことはない、盟約の深まりを感じるはずだと言いますが、雪は元就は若いのでそう思うのも無理は無いと言います。
元就はむっとしたようで、雪はまだ毛利の人間になりきれていない、高橋のことばかり考えていると言います。
この言葉に雪も怒ると、興元はもうよいと言って出て行ってしまいます。
雪が心から毛利のために働きたいと思っているのだと言うと元就は自身の間違いに気づき謝ります。

興元は酒のとっくりを割り破片を腕に差します。
「痛い」と言いながら弱々しく笑っていて、痛みを感じるのが嬉しそうにも見え、内面を病んでいるのがよく分かる場面でした。
一度猿掛城に帰った元就と杉も戻ってきて三人で興元の身を案じます。
興元は「死のうとしたのではない。おのれがまことに生きておるのか、確かめたかった」と言っていて印象的な言葉でした。
涙を流しながら興元の手を握る雪を見て、必ず興元の支えになってくれると思いました。

杉が元就に雪のような妻を娶られませと言うと、元就は雪と杉の二人によく似た女子を娶ると言っていました。
雪の聡明さ、杉の天真爛漫さ、両方揃うとかなり魅力的だと思います。


今回は働かせてもらえずに嘆く雪の姿が特に印象的でした。
ただし雪は最後、働くのは何も策略を考えたりするだけではないのを悟ったのではと思います。
辛い内面になっている興元のそばにいて寄り添うことも立派な働きだと思います。


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第七回 われ敵前逃亡す」

2018-07-31 22:42:37 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第七回 われ敵前逃亡す」です。

-----内容&感想-----
松寿丸(しょうじゅまる)が元服して毛利元就になった直後、兄の興元(おきもと)が突然京都から帰国しました。
評定が開かれ、興元とともに京都に行っていた重臣の福原広俊(元就の祖父)によって、興元は大内義興の形勢不利を見越して見切りをつけて帰ってきたことが明らかになります。
興元は疲れきった目で「戦というものは地獄じゃ。勝たねばさらに地獄じゃ」と言っていました。

その夜、元就は興元に大内の負けを見越して何と言われようと領民や御家(おいえ)のために帰国したのはまさしく勇気の成すところと労います。
相合(あいおう)の子(元就の異母弟)の月夜丸(つきよまる)も弟であることが誇らしいと言います。
興元が二人の労いにほっとした表情を見せながら印象的なことを言います。
「とにかく世間では親兄弟同士が殺し合う。毛利だけはそのようなことのなきよう、兄弟三人力を合わせていこうぞ」
しかし後に毛利もそうなるのが分かっているのでこの言葉は寂しく聞こえました。

興元が杉に幼き弟をよくここまで育ててくれたと礼を言います。
そして元就からぜひ杉に褒美をやってくれとせがまれていると言い、杉のかつての侍女、久を呼び戻して再び杉に仕えさせてくれます。
杉は大喜びしていてその様子を見て興元と元就も微笑んでいました。

その頃京都では誰も予想だにしなかったことが起こります。
かなりの劣勢だった大内義興が船岡山の合戦で奇跡的に勝利し再び京都を奪回します。
義興の館では征夷大将軍の足利義稙(よしたね)が「よお戦ってくれた。戦というもの、終いまで分からぬものじゃと、此度(こたび)ほど思うたことはない!」と言います。
義興が「御所様、早う具足を解かれ、まずはごゆるりとお休みなされませ」と言い義稙が去ると、重臣の陶興房(すえおきふさ)と内藤興盛(おきもり)が大内に無断で帰国した高橋、吉川、毛利への怒りを爆発させます。
興房はいかなる厳罰を与えても足りないと言い、興盛は特に毛利興元は元服の烏帽子親を頼み義興の一字を貰っているのに許せないと言います。
義興も「容赦はせん」と言っていて一気に緊迫した雰囲気になりました。

この知らせはただちに毛利にも届き、評定が開かれますが興元がなかなか現れません。
元就が呼びに行くと興元はのん気に寝ていました。
興元は「大内が勝利したからとて、何も慌てることはない。打つ手は考えてある」と寝たまま言いますが、その枕元に酒が置いてあるのを見て元就は本当に信じて良いのかという表情になります。
中村橋之助さんは嬉しそうな表情も不審げな表情も雰囲気をたっぷり出していて演技が上手いと思います。
評定に現われた興元は「案ずるな」「わしに策がある」と言うばかりでどんな策があるのかは言いません。
重臣達がこの窮地を脱する策を考えねばと言ってものらりくらりとかわしていて、大内が激怒しているのになぜそんなにのん気にしていられるのか分かりませんでした。

杉が久に私は母親らしく見えるかと聞きます。
久は元就と杉は昔はあんなに仲が悪かったのに今ではどこから見ても実の母と子に見えると言い、私は杉は喜ぶものと思いました。
ところが杉は「そのようなことは聞いてはおらぬ。見た目が母親臭くなってはおらぬかと聞いておる」と言い、「見た目は独り身のようでいて、元就様が姿を現した時に初めて「まあっ、このようなご立派なお子があるようには見えませぬ」と言われるのが女としてあるべき姿じゃ」と言います。
久は呆れながら「何も変わられませぬなあ」と言い、久しぶりにこの二人の掛け合いが見られて面白かったです。

そんな杉と久のもとを元就が訪れて、兄上はいつからああなってしまったのか、何を考えているのか見当がつかないと言います。
「兄上は何をお考えなのか分からぬ、元就に手立てはない、もうどうしてよいか分からぬ。何やら気持ちがしおしおとするばかりじゃ」とかなり悩んでいました。
元就が話したら少しは気が晴れたと言い去っていくと久が「ぼやきの多い男にござりまするな」と言います。
毛利元就は知略の他にぼやきの多さでも有名で、第一回から見てきて初めてぼやきの多さへの言及があったのでこの先どうぼやきが有名になっていくのか楽しみになりました。


相合の方(写真はネットより)

相合の館では桂広澄(ひろずみ)が月夜丸に思い詰めた様子で「月夜丸様、早う元服を済ませ、わしの力になって下さりませ」と言います。
月夜丸がなぜ急にそんなことを言うのかと聞くと「闇夜にあっては、誰しもきっと月を待っておる」と言いこれは良い台詞だと思いました。
「闇夜の毛利にきっと月夜丸様は必要になる」と言っていて、興元が率いる現在の毛利に光がないと考えていることも分かりました。
相合が大内のことを早く手を打たなければ大変なことになると言うと、広澄はおのれの命を引き換えにしても手を打つと言います。
「あの殿にはもう任せておけぬ。わしがやらねばまこと毛利は闇に葬り去られる」と言い覚悟を決めていました。
そんな広澄を見て相合は「分かりました。思うたとおりになさりませ。腹を決めた男を送り出すのは、女の気持ちを酔わせるものにござりまする」と言い送り出します。
この大河ドラマはよく女の人の気持ちが描かれているのが印象的です。

広澄は尼子経久(つねひさ)のもとを訪れ、自身のことを信頼してくれていると思ったのに尼子と武田が手を組む動きを何も知らされていなかったと言います。

さらに真っ先に京都から出雲に帰ったことも、今後の動きも、何を目指しているのかということも聞かされていないので教えろと迫ります。
経久は備後、安芸、瀬戸内と物にしさらに天下を我が物にすると言います。
本心を見せた経久は改めて「桂殿、手を結ばぬか」と言い手を差し出し広澄もその手を取ります。

興元のもとを井上元兼(もとかね)が訪れ、福原広俊自身が言うように広俊の首を差し出して大内に許しを乞うしかないのではと言います。
すると興元が激怒して刀を抜き元兼を斬ろうとします。
そこに元就が駆けつけて何とか怒りを鎮めます。

興元と元就二人での話し合いになります。
興元は元就がいつも不安そうな目で興元を見ていることに触れ、今度そんな目で見たら元就にも刃を向けると言います。
すると元就は刀を差し出し、死を覚悟して興元は本当は何も手立ても考えもないのだろうと言います。
元就が「兄上が一人でお苦しみになるのを見てはおられませぬ。何をお苦しみなのか、元就にお話しくだされ」と迫るとついに心の内を話します。
興元は何もかも虚しくなって京都から逃げてきました。
広俊は興元に大内を見限るように勧めたのは自身だと言っていましたが、実際には京都から逃げようとする興元に大内を裏切るなと何度も言っていたことが明らかになります。
「元就、わしは人間のクズか。領民のためを思い、国のためを思い、家のためを思い、熱い使命感に燃えて京都に上がった。されど、京都で見たものは戦の地獄じゃ」という言葉がとても印象的でした。
戦国武将は勇猛な印象がありますが中には興元のように挫折する人もいると思います。
「わしはこの世に生まれてきとうはなかった」とまで言っていて悲しくなりました。

元就が杉に「兄上はお心に深い傷を負われておる。我等は兄上をお助けせねばならぬ。今の兄上はお心の傷を治すことが先じゃ」と言います。
私はこれを見て元就の思いやりのある心に胸を打たれました。
これもまた後に中国地方の覇者となる毛利元就の姿につながっていくのだと思います。


少しずつですが元就は後の中国地方の覇者としての片鱗を見せています。
今回初めてぼやく姿が見られたことで戦国時代きっての知将として調略に長けた姿も見たくなりました。
人間味のある面白い描かれ方をしているので元就と周りの人との掛け合いを見るのも楽しみです


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第六回 恋ごころ」

2018-07-20 21:45:17 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第六回 恋ごころ」です。

-----内容&感想-----
兄の興元(おきもと)の文が松寿丸(しょうじゅまる)に届き、京都では民も辛い目に遭っていることが分かります。
猿掛城の評定(ひょうじょう)では筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)が他国の多数の民が瀬戸内の豊かな港町を目指し移動し始めていると言います。
彼らは武田の領地を通って宮島や廿日市(はつかいち)に行くつもりですが、武田が関(せき)を厳しく封じて入国を許さないため、行く手を阻まれた者達が毛利の領地に溢れ始めていて、寺や神社に寝泊りしています。
渡辺勝(すぐる)もそれを案じていて、今に領民との揉め事が起きるかも知れず、さらに尼子の間者が紛れ込むことも容易いと言います。
京都で一族の者が何人も討ち死にした井上元兼(もとかね)は「構わぬ、他国の者は皆殺しじゃ」とやけになって言います。

松寿丸(しょうじゅまる)は平民の服装になって満願寺(まんがんじ)に様子を見に行き、そこで子供達と合唱をしている夏という女の子に出会います。
夏は海のある町に行くと言い、名前を聞かれた松寿丸は「しょうじゅま…」と言いかけて松吉(まつきち)と言い直します。
この様子を見て○○丸という名前は位の高い人の名前なのだと分かりました。

興元に文を書く松寿丸の元を杉が訪れます。
「杉にござりまする」と挨拶し、松寿丸も「入れ」と言い、夕飯をほとんど食べなかった松寿丸を杉が心配していて、二人は自然に話すようになっていました。
杉は松寿丸が食べ物が喉を通らない訳を分かっていて、食べるものもない他国の者達を思うと胸が苦しくてとても喉を通らないのでしょうと言っていました。
自身のことを分かってくれた杉に松寿丸も嬉しそうに「それなのじゃ」と言っていました。
「民を考えるお気持ち。大人になられましたなあ。杉は、嬉しゅうござりまするぞ」
この言葉を見て、第ニ回で奇抜な格好をして暴れていた頃と比べるとかなり殿様らしくなってきたのを感じました。

大内義興(よしおき)に無断で京都から舞い戻った尼子経久(つねひさ)は驚くべき早さで出雲の平定に乗り出し、近隣諸国を次々に制圧していきました。
経久は萩の方に「大内の先は見えた。大内の料理の仕方、京にいてしかと分かった」と言います。
この時経久は魚に瀬戸内の甘い塩を振りながら話していて、塩の振り忘れと振り過ぎに萩の方が突っ込む二人の掛け合いは面白かったです。
「大内を攻める。まず瀬戸内に出る。この甘い塩、直接わが手に入れるんだ。焦ってはならん。じっくり、じんわりと攻めてやる」
二人の話で瀬戸内に甘い塩があることに興味を持ちました。
山陽に住んでいるのでぜひ甘い塩を使った食べ物を食べてみたいです。

おにぎりのような食べ物の入った袋を持って慌てて城を出て行く松寿丸の後を杉が追います。
満願寺では僧侶が南無阿弥陀仏と念仏を唱えれば極楽浄土に行けると言っていて、これは「村上海賊の娘」にも登場した一向宗(現在の浄土真宗あるいは真宗)だと思いました。
松寿丸は夏に食べ物の入った袋を渡し、杉はそんな松寿丸を微笑ましく見ています。
杉が物音を立てて存在に気づかれ、夏が松寿丸に「母ちゃんか?」と聞いた時に杉がすかさず「姉ちゃんじゃ」と言っていたのが面白かったです。

夏は松寿丸に母は戦の火に巻かれて死に、父はここに来る途中で死んだと打ち明けます。
松寿丸が「俺も父も母もいない」と言うと「まことか?戦のせいじゃろう?戦は嫌だ。侍は大っ嫌い」と言っていて、毛利分家の殿の松寿丸は寂しそうでした。
二人で天の川を見て松寿丸が「あれが彦星、あれが織姫」と教えてあげると夏は「夏も死んで星になったら、父ちゃんや母ちゃんに会えるかなあ」と言います。
松寿丸は「死ぬなどと申してはならぬ」と言っていて印象的な場面でした。

桂広澄(ひろずみ)が武田に関を開けてもらうために交渉をしますが武田はなかなか承諾しないです。
自身の領民と他国の者が水を争って怪我人が多数出たことに激怒した元兼が評定でもはや我慢も尽きたと言います。
広良や勝がなだめますが元兼は「桂殿には任せておけない」と言い出て行こうとします。
すると広良が「井上殿!桂殿の交渉を待つ!これは家中の総意でござる!」と言い抜刀の構えをし、勝も抜刀の構えをします。
広良が「井上殿。お分かりじゃな」と言っていて、これは家中の総意を無視して勝手なことをする者は切り捨てるということだと思います。

松寿丸は急いで夏のところに行き、「早く海の町に行くがいい。ここにいると切られるぞ」と言います。
広良と勝が夏達のところにやってきて、「向かってくれば容赦はしないが、この先諍いがなければ一切のおとがめはない」と言います。
広良は満願寺の僧侶に「御坊が先導して下されば、武田も安心して関を開き、他国の者達を通させることができまする」と言い僧侶も引き受けます。

松寿丸が広良のもとを訪れ「他国の民、一人残らず追放致すのか?」と聞くと広良は「さようにござります」と言います。
松寿丸は「京都におられる殿も、申されておった。気の毒な者達じゃと」と一人残らず追放するのは可哀想ではと言います。
すると広良が印象的なことを言います。
「城主は、多くの人の生き死にを担っている者にござりまする。おのれの情に任せて動くことは許されません」
「他国の民に、退去せよと決めたる以上、おのれの情は切り捨てて頂きます。人の上に立つ者の、定めにござります。二度と、お忘れなきよう」

殿様が情に任せて動けば家の存亡に関わることもあると思います。
偉そうにしていれば良いわけではないのがよく分かる言葉でした。

松寿丸は杉のもとを訪れ、小袖を貸してくれないかと言います。
夏に一度だけ着せてやりたいと言っていて、夏のことが好きなのは明らかでした。


(画像はネットより)

松寿丸は杉に借りた小袖を夏に渡します。
着物を着た夏に松寿丸は「ここに残るがいい」と言い、情に流されているように見えました。
松寿丸は「今決めた、松吉が元服したら、すぐにともに暮らそう」と言い、夏が「松吉、元服なんかするの?」と言うと「元服する年頃になったらという意味じゃ」と言っていました。
「夏、そなたは身寄りもおらぬゆえ、ずっと松吉とともに生きていこう」と言うと夏も微笑みながらうなずいていました。
「明日、これを着て寺で待っておれ。迎えに来る。海は、海はいつか、必ず連れていくからの」

翌朝、広良とともに松寿丸は殿様の格好で民達のところに行きます。
広良は松寿丸に「よーくご覧なされ。みな、戦が招いた災いにござりまする。戦がなければ、肥えた土地に作物を作り、先祖からの国を離れずに済んだこと。松寿丸様、民にこのような痛みを負わしてはなりませぬぞ」と言っていました。
松寿丸は領民を守る思いを強くしたのではと思います。

僧侶がやってきて先導を始め、やがて夏が現れます。
夏は小袖は着ずにいつもの服を着ていて、二人は目が合いますが夏は何も言わずに寂しそうに顔を伏せて歩いていきます。
そして道端の花を摘んで松寿丸のもとに持ってきてくれ、松寿丸は受け取ります。

夏は「松吉という名の方に、とても親切にして頂きました。子供達と、一緒に参ります。毛利のこと、毛利のこと…忘れません」と言いおじぎをして去っていき、その目には涙がありました。
夏は松吉が毛利の殿様だと気づいていました。

「思うがままに生きられぬことを知った時、人は大人になるのかも知れません」というナレーションがとても印象的でした。
1511年(永正8年)、元服を済ませた松寿丸は毛利元就と名乗ることになります。
ここでついに中村橋之助さんが登場します。
ある朝「南無阿弥陀仏」と念仏を唱える元就のもとを杉が訪れ元服のお祝いを言います。
ここでの杉の陽気な振る舞いは面白かったです

元兼が京都にいた興元が帰ってきたことを知らせ、元就は興元のもとを訪れご無事で良かったと言います。
しかし興元の表情は暗く、「兄の暗い眼差しは、京都で起こった大事件を予感させるものでした」というナレーションが気になりました。


今回の最後、ついに松寿丸が元服して毛利元就になりました。
まだ安芸の国の国人領主、毛利家の分家の殿ですがやがて中国地方10ヶ国、120万石の大名になります。
知将として有名な毛利元就の活躍を楽しみにしています


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第五回 謀略の城」

2018-07-10 21:14:20 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第五回 謀略の城」です。

-----内容&感想-----
京都では大内義興(よしおき)、細川高国(たかくに)らの大軍勢が将軍足利義澄(よしずみ)の追放に成功していました。
先の将軍足利義稙(よしたね)は再び征夷大将軍に返り咲き、大きな功労のあった義興は左京大夫(さきょうのだいぶ)に任じられ、右京大夫(うきょうのだいぶ)の細川高国とともに事実上の連合政権を打ち立てます。

しかしその影では、尼子経久(つねひさ)と武田元繁が不穏な動きを見せ始めています。
義興が京都から動かない間に尼子と武田で手を結び、安芸の国を挟み撃ちにして奪ってしまおうとしています。
経久がまず備後(びんご)を落とすとし、その西にある安芸の攻略は元繁が行うと言います。
安芸を押さえるには毛利の郡山城を落とさねばならず、武田家には毛利家から芳姫が嫁いでいて病がちで床に臥せることが多く、毛利家からは幾度も見舞いの使節が来ているため、礼を出すという名目で郡山城に探りを入れようとしています。

京都の義興の館に尼子家重臣の亀井秀綱がやってきて、国元の出雲において京極家の残党が兵を上げ、一国を争う事態のため尼子経久が出雲に帰国したと言います。
重臣の内藤興盛(おきもり)が声を荒らげる中、義興は「よお分かった!」と言い、尼子経久の帰国を許します。
重臣の陶興房(すえおきふさ)がお屋形様が京都に居る間に何か始める気だ、留守を狙うのは京極ではなく経久本人だろうと言います。
秀綱の言葉が嘘と分かっていても平然とそれは一大事だ、行くがよいと言う義興は大物感に満ちていて、尼子経久役の緒形拳さんとともに大内義興役の細川俊之さんの大物感もかなり魅力があります。

松寿丸(しょうじゅまる)と杉の関係は徐々に良くなり始め、杉が重いものを運ぼうとしてバランスを崩しているのを見て心配していました。
重臣の井上元兼(もとかね)が納屋に様子を見に来ますが、落ち込んでいるのではと期待した杉が元気一杯なのを見てがっかりして帰っていきます。
杉はもし元兼がそんな素振りを少しも見せずに帰っていけば大した男だと思うものをと言い、さらに「いかに上手い嘘をつくかが男の価値にございまするぞ」と言います。
この場面は印象的で松寿丸もはっとしていました。
この場合の嘘はあるものをないと言ったりするような露骨な嘘とは違い、心の内を表に出さない気配の嘘だと思います。

芳姫の病気見舞いの返礼として武田の家臣団が郡山城を訪れます。
毛利家は尼子の不穏な動きに備えるために城の詳しい見取りを教えろと言われ、城が丸裸にされそうになります。
ここでも元兼が杉に嫌がらせをし、武田の家臣団との宴会に出るように言い杉は嫌々引き受けます。
宴会で杉は酒をつがず舞もせず歌も歌わずに座っているだけだと言い、武田の家臣団が激怒するのではとハラハラしましたが大島という男が杉を気に入ったと言い驚きました。

渡辺勝(すぐる)が松寿丸と杉の納屋を訪ねてきて杉に話があると言います。
すると松寿丸も勝に話があると言い、尼子と武田が裏で手を結んでいるような気がしてならないと言います。
この勘の鋭さには後の中国地方10ヶ国、120万石の大名毛利元就の片鱗を見ました。
勝も勘の良さに驚いていました。
そして勝が杉に話そうとしていたのも同じことで、尼子と武田が手を結び郡山城の備えを探りに来たに違いないと言います。
勝は杉に大島に取り入って手がかりを掴んでくれないかと言い杉も引き受けます。
松寿丸は自分にやらせてくれと言いますが勝に止められます。
松寿丸は戦に長け大内にも尼子にもその名を知られている勝に褒められたいと言っていて、勝も気持ちはよく分かったと言いますが子供の手に負えることではないため杉に頼みます。
杉は松寿丸に「明日はこの杉が二刻(4時間)ほど武田の侍集をもてなしましょうぞ。誰一人として、この杉のそばを離れられぬほど、面白おかしくもてなして、武田の部屋を空っぽにしてみせましょうぞ」と言います。
これを見て杉は松寿丸が武田の部屋に忍び込めるようにしてあげているのだと思いました。
松寿丸も杉の意図を察していました。

裏で尼子に通じている重臣の桂広澄(ひろずみ)は尼子と武田が手を結んだことを聞かされてはいないです。
広澄はそのことで悩み、相合(あいおう)に「不要の者と思われたかの」とぼやきます。
すると相合が「私、今初めて、桂様のお役に立てた気が致しまする。弱音を吐いてくださった。男に弱音を吐いてもらえぬ女子は、女子としての価値がござりませぬ」と言います。
ひぐらしの鳴く夕方に二人で縁側に座ってのこの場面は良いと思いました。

杉と毛利家の重臣達、そして武田家臣団の宴会が始まります。
松寿丸はその隙に武田の部屋に忍び込みます。
しかし大島が京都で手に入れた美しい小袖を持ってきているので杉に着せてあげると言い家来が部屋に戻ります。
杉の様子から松寿丸が部屋に忍び込んでいると察した勝はいざとなれば家来を斬るつもりで待ち伏せます。
松寿丸は間一髪隠れて見つからずに済み、さらに大島達が郡山城を探っている証拠の見取り図を見つけます。

松寿丸の大手柄に筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)は「お見事」と感心します。
勝は「されど松寿丸様、今後二度と一人で動いてはなりませぬ。武士の戦は一人ではできませぬ」と言っていて良い言葉だと思いました。
松寿丸も「すまぬ。二度とせぬ」と言い勝の思いを分かっていました。
三人が話す部屋にやってきた杉が「良かった」と言って松寿丸を抱き締め、心底心配していたのが分かりました。
広良は「囮の砦を本物の砦と見間違っているところも多々あり、この図面なら持ち帰られても問題ない。それなら武力の上で遥かに勝る武田方と今すぐに事を構えるのは得策ではない」と言い、松寿丸も納得し「そのとおりじゃ。よう分かった。されど、これ以上探られてはならぬ」と言います。
その様子を見て勝は頼もしそうに「仰せのとおりにござる。志道殿、松寿丸様はよき武将になられまするぞ」と言います。
今回は松寿丸が大活躍していてとてもワクワクしました。
杉は松寿丸にご褒美をあげるべきだと言い、「毛利の城を狙う武田の謀略を食い止めたお手柄に報い、今日を限りに土居からお出し致す!文句はございませぬな!」と言います。
この剣幕には広良も勝も圧倒されていました。

真っ二つに切られた絵図面を見た大島達は表立って抗議することもできず翌朝すぐに帰っていきました。
広良が「松寿丸様、厳島神社に赴き、神に御加護を賜った御礼を申し上げねばなりませぬぞ」と言います。
さらに杉にもご褒美をあげると言い、松寿丸とともにゆっくり参拝してくるように言います。


(画像はネットより)

松寿丸と杉は宮島の厳島神社に参拝します。
私は厳島神社が好きなのでこの場面はとても良かったです。


(画像はネットより)

松寿丸は長い間願っていて、杉が「何を、長いことお願いされました?私は、松寿丸様が一国の主になれますようにと、お願い致しました」と言うととても印象的なことを言います。
「杉殿、天下の主になろうと考えて、やっと一国の主になれるものじゃ。初めから、一国の主になろうと考えておっては、何にもなれぬ」
この子はとてつもない武将になるのではという思いが杉の胸に広がっていきました。


今回の最後、松寿丸は初めて杉のことを「杉殿」と呼んでいて尊重するようになったのが分かりました。
二人がついにお互いのことを尊重し合うようになったのを見て嬉しくなりました。
厳島神社から見た海に浮かぶ大鳥居、そして瀬戸内海が毛利元就の大活躍を表しているように見え、この先の物語がとても楽しみです


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第四回  女の器量
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第四回 女の器量」

2018-06-13 21:50:08 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第四回 女の器量」です。

-----内容&感想-----
松寿丸(しょうじゅまる)は重臣の井上元兼(もとかね)によって城から追い出され、納屋に閉じ込められて過ごします。
元兼は「松寿丸様には物事を深く考え、人を慈しむという気質が欠けている」と言い、源氏物語を読むように言います。
「腰砕け男」が主人公の源氏物語を読ませて松寿丸を腰砕けに教育して元兼の思うがままの城主にしようとしています。


松寿丸(画像はネットより)。

杉は侍女の久(ひさ)に「私はこんな同じ毎日を繰り返して、死んでいくのかのう」と言い、毎日に楽しさがないと感じています。
久が「井上様が館を建ててお迎えしたいと申しておりましたぞ」と言うと「ありがたいとは思うが、面白うはない」と言い、気が乗らないようです。
杉は亡き弘元との日々に思いを馳せ、「あれは面白い日々じゃった。松寿丸と憎しみ合って立ち回りをして、相合(あいおう)と激しくお方の座を争って、嫌なことばかりなのに、今になるとみんな面白かった」と言い、さらに次のように言います。

「嫌なことを、何とか良い方向に変えようともがくことこそ、生きる面白さじゃのう」

この言葉は印象的でした。
私は嫌なことは起きてほしくなくて、面白さも感じられないですが、杉のように考えられると人生にどんな波乱があっても楽しめるだろうなと思います。


杉の方(画像はネットより)。

先の将軍足利義稙(よしたね)を奉じて京都に上洛した大内義興(よしおき)は現将軍足利義澄(よしずみ)との戦を前に酒宴を開く余裕を見せます。
松寿丸の兄、興元(おきもと)も参加していて、緊張でがちがちになっていました。
安芸の旧守護、武田元繁はかつては大内に対抗できる力がありましたが今では牛耳られていて、元繁はそのことを苦々しく思っています。


大内義興(画像はネットより)。

周防(すおう)、長門(ながと)の国人領主のみならず安芸の国人もこぞって義興に従い上洛していて、出雲の尼子経久(つねひさ)は「安芸におけるお力、見せ付けられた思いが致しました」と義興を褒め称えます。
さらに「此度(こたび)は、大内殿にその戦ぶりを教えて頂きたく、勇んで上洛を致した次第」とお世辞を言います。
そんな経久を見て重臣の亀井秀綱が「大内の力を見て、怖気ずきましたのか!」と言うと、経久が狙いを語ります。
経久が京都に上った理由は二つあり、一つは大内の勢いを見ること、もう一つは武田の顔を見ることです。
武田が大内への憎しみを隠すのに必死の顔だったことから、経久は武田を利用できると考え、手を組もうとします。
出雲一国さえまだ平定できない尼子が、安芸に進み、瀬戸内をものにし、大内に対抗しようなどと誰が気付くものかと考えています。

「人間、力がないうちだからこそ、やれることがある」

経久のこれは印象的な言葉でした。
大内の力に圧倒されているように見せかけて、その裏では虎視眈々と勢力拡大を狙っています。


尼子経久(画像はネットより)。

筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)と、裏で尼子に通じている重臣の桂広澄(ひろずみ)との話で、広澄が「井上殿は金と、後見人という立場と、杉殿と、要所要所を抜かりなく手を打って、大内に接近している」と言います。
広澄が「我らは別の道を考えてなくて良いのか」と言うと広良が「大内から鞍替えして、尼子にでも付きまするか」と言い二人とも大笑いします。
しかし二人とも目にはただの笑いではない雰囲気がありました。
広良は広澄の心の内を知っていて言っているように見え、広澄は面と向かって尼子の名前が出てきたことで気まずさを誤魔化すために笑っているように見えました。

武田は最初経久の「尼子が北から攻め、武田が南から攻め、安芸を挟み撃ちにして攻めよう」の誘いを断ろうとしていましたが、経久の言葉を聞いて考えが変わります。
「安芸の名族、武田氏が滅びるなら、それはそれで華の余韻を残すと考えるが、今の武田氏は大内に見くびられた扱い。見くびられて永らえることの、どこに華を見出しまするか!」
相手の心を巧みに操っていて、やはり経久は調略が上手いと思います。

蔵に閉じ込められている松寿丸に毛利家家臣の子、平太郎と次郎が会いに来ます。
次郎は平太郎の弟です。
松寿丸は「弓を引かせてくれないか」と頼みますが二人は「井上殿に見つかったら大変だ」と断ろうとします。
しかし松寿丸は強引に二人を連れて戦道具のある櫓(やぐら)に忍び込みます。
その帰り道に警護に見つかってしまい、平太郎が飛んできた矢に当たり殺されてしまいます。

知将と呼ばれ安芸の国の小領主から中国地方10ヶ国、120万石の大名に上り詰める毛利元就が子供の頃はこんなに浅はかに描かれるとは意外です。
しかし子供の頃のいくつもの苦い経験が後の知略に長けた毛利元就に繋がっていくのだと思います。

元兼が「平太郎は死んだが、弟の次郎への罰として野田家は取り潰し」と言い、広良、広澄、渡辺勝(すぐる)もそれしかないと言います。
広良が「古人いわく、泣いて馬謖(ばしょく)を斬る。心で泣いても、厳しい処分をせねば、統率がつきませぬ」と言っていて印象的な言葉でした。
次郎は「地の果てに行こうと、一生、松寿丸様を恨む」と言います。
翌朝次郎の姿は消えていて、「後に瀬戸内の水軍に拾われた次郎が、凛々しい海の武将となって元就と劇的な再会を果たすのは、ずっと先のことになります」とナレーションがありました。

元兼は杉のために屋敷を建て、迎え入れようとしていました。

当初杉は元兼の屋敷を建てての迎え入れを気が乗らないながらも受けると言っていましたが、広良、広澄、勝、元兼での話の中で、広良から杉が断ったことが伝えられます。
広澄が心にもない様子で「わしが女子なら一も二もなく井上殿のお側に上がる(側室になる)」と言っているのが面白かったです。
久が杉に「何ゆえお断りになられた」と聞くと「良い暮らしは、飽きるということに気付いた」と言います。
「良い暮らしはしたいが、良いだけの暮らしも飽きるもの。困ったものよのお」と言っていましたが、私は良いだけの暮らしがしたいです。
久の「杉様、この先どうなるか分かりませぬぞ」の言葉には「先が分からぬほうが、生きていることは面白いではないか」と言っていました。

松寿丸は自身のせいで平太郎が死に、野田家が取り潰しになったことでショックを受け、何日も高熱を出して寝込んだままになります。
元兼が杉に、松寿丸が閉じ込められている蔵に一緒に住んで世話をするように言います。
側室になるのを断られたことへの仕返しでした。
杉も意地で「お引き受けします」と言い松寿丸の世話を始めますが、侍女が運んできた夕膳を杉が寝込んでいる松寿丸のそばに置くと、「そちが触ったものはそばに置きとうない」と言いひっくり返してしまいます。
二人はかなり険悪な雰囲気でした。
また久は元兼によって暇を出され、国に帰ることになります。

高熱にうなされた松寿丸が誰かに助けを求めるように天に手を伸ばしているのを見て、杉はその手を掴みます。
「殿!しっかりなさいませ!」
松寿丸は無意識でしがみついてきます。
杉は「大丈夫ですぞ。一人じゃありませぬぞ」と優しく声をかけます。
松寿丸の孤独を杉は初めて感じ取っていました。


松寿丸に酷く嫌われ喧嘩ばかりしていた杉ですが、助けを求めるかのような手を見た時は迷わずその手を掴んでいました。
喧嘩ばかりしていても助けたい思いが自然に湧いていたのは杉の持つ優しさだと思います。
これまで仲の悪かった松寿丸と杉がこれをきっかけに打ち解けていくことが予想され、その様子を見るのが楽しみになりました


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第三回  城主失格
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋

「毛利元就 第三回 城主失格」

2018-04-26 23:05:25 | ドラマ
今回ご紹介するのは大河ドラマ「毛利元就 第三回 城主失格」です。

-----内容&感想-----
急逝した父、毛利弘元の後を継ぎ、松寿丸(しょうじゅまる)が10歳の若さで猿掛城主になります。
毛利本家の郡山(こおりやま)城主の兄、幸千代丸(こうちよまる)は元服の日を待っていますが、烏帽子親を依頼した大内義興からは未だに返事が来ないです。

弘元の遺言により重臣の井上元兼(もとかね)が松寿丸の後見人になります。
松寿丸は元兼とともに猿掛城主になった挨拶をしに郡山城に行きます。
義興から返事が来ないことから、裏で尼子と通じている桂広澄(ひろずみ)が大内との関係を見直し尼子に付くべきだと言います。

その夜、幸千代丸と松寿丸が二人で話をしていて、幸千代丸が次のように言います。
「父上は酒も浴びたし、杉や相合(あいおう)にうつつも抜かした。けれど、不思議なものよ。頑張っている父上の姿ばかりを思い出す」
これは私も祖父母が亡くなり同じように感じています。
故人を思い出す時、自然と良かった部分のほうがたくさん思い出されます。

弘元が亡くなり傷心している杉に久(ひさ)が「少しでも良い殿御(とのご)のところへ側室に上がりませ」と言います。
杉が「亡き大殿が良い。他の男は嫌じゃ」と言うと、久が凄いことを言います。
「よろしいか。大殿に死なれたお方様など、家中の邪魔者、穀つぶし、目障り、はよ死ねの女でございまするぞ!」
杉も「お黙り!ようそこまで言えるわ」と言い、この二人の掛け合いは面白いです。
久はさらに「そのような女が、家中の者を見返すには、大殿より何十倍も良い殿御のもとへ上がる、これしかござりませぬ。よろしいか、お方様を追い出しては聞こえが悪いゆえ、誰もがしぶしぶ置いておるだけ。そのような屈辱に耐えられる女は、単に頭が悪いだけでござります」と言います。
これは杉の頭が悪いと言っているように見えます
しかし杉はなおも「他の男は嫌じゃ。大殿に、もう一度、会いたい」と涙を流しながら言っていて、よほど弘元のことが好きだったのだなと思いました。

松寿丸は元兼と毛利の領地を見て回ります。
すると第二回で一緒に奇抜な格好をして遊んでいた子達に再会し、松寿丸は焼き芋を食べさせてもらいます。
一緒に遊んでいた子達が「昔と変わんねえな」「おいら達と悪さしてた頃と同じだ」と言うと元兼が「変わられましたぞ。松寿丸様は今、おのれのことより領民のことを考えるようになられた」と言います。

1507年(永正4年)、当時の京都は親子、兄弟が殺し合う権力争いが続いていました。
混乱を極める京都で足利義澄(よしずみ)は将軍職にありましたがその力は揺らいでいました。

義澄に京都を追われた先の将軍足利義稙(よしたね)は大内義興を頼り山口(周防の国)に留まっています。
義興は「この義興、八方の国人領主に上洛を命じましたところ、次々と受諾の返事が届いております。御所様が再び将軍になられることは、もはや火を見るよりも明らかにござります」と言います。
義稙は「そおか、やっと義澄に仕返しができるのう」と悪そうな顔で言っていました。
義興の正室の綾の方が「御所様が京都に上られる頃には、ややが生まれまする」と言うと義稙は縁起が良いと喜び、「この戦、勝ちが見えたの」と高笑いします。
義興は穏やかに微笑みますが、実際には将軍職に戻りたい義稙の野心を利用し、大内家のさらなる勢力拡大を狙っていると思います。

出雲の尼子経久(つねひさ)にも義興から上洛の命が下ります。
尼子は大内にも脅威を与える大名ですが、あくまで西国一の大名は大内だという意識が感じられて興味深かったです。
家臣が京都の件をどうするかと言うと経久は何と「行く」と言います。
経久には大内と戦う日のために、「大内義興が捨て身で勝ちを狙う戦ぶり、しかと見せてもらおう」という狙いがあります。
将来の戦いに備えこの場では大内に従う決断をしていてしたたかだと思いました。

幸千代丸の元服について大内家重臣の内藤興盛(おきもり)が、義興が烏帽子親を引き受けることを伝えに来ます。
それとともに、「御屋形様はこの暮れには京都に上られます。足利義稙公を再び将軍職にお就せするための戦にござる。京都が混乱しておる今こそが、義澄を倒す二度とない好機。お分かりでしょうな」と、毛利も大内と一緒に戦うように言います。
毛利家は一緒に京都に行くかどうかで多いに荒れますが、筆頭重臣の志道広良(しじひろよし)が今さら義興の申し出を断れるわけがないと言い毛利家も京都に行くことにします。
山口の大内の館で幸千代丸の元服の儀が執り行われ、大内義興から一字を与えられ、この日から毛利興元(おきもと)と名乗ります。

大内家重臣の陶興房(すえおきふさ)と内藤興盛から強引に頼まれ、毛利家は全兵力九百のうち七百を出すように言われます。
しかし七百も兵を出せば留守が危なくなるため何とか三百にしてもらうように頼むと、残りの四百の代わりにお金を出すように言われます。
毛利家にそんなお金はないため興元と重臣達が途方に暮れていると、元兼がお金を用立ててくれます。
さらに毛利の領民への臨時の税と金のある商人に借りる役目も引き受けてくれます。
しかし元兼は裏で自身の領民に圧政をし、税を厳しく取り立てていました。
元兼の「世の中大抵のことは金で黙るもの」という言葉は勢いがあった頃のホリエモンこと堀江貴文氏を思わせるものがありました。

広澄が相合の館を訪ねます。
第一回と第二回では野心に満ちていた相合は月夜丸(つきよまる)を城主にすることをすっかり諦めていました。
「この子も大殿のお子ゆえ、つい大きな夢を見た、私が間違うておりました」という言葉に意気消沈した寂しげな雰囲気がありました。
さらに「私には、誰も寄りかかれる人がいない。そう思いましたら、心が寒うて、致し方ございませぬ」と言い涙を流します。
すると広澄が「それがしに寄りかかってくだされ」と言います。

興元が京都に行く日が近づきます。
「死ぬやもしれぬ」と言う興元に松寿丸は「死ぬなどと口にしないで下さい。私は本当に一人ぼっちになってしまいます」と言います。
興元が「もしわしが死んだら、そちが毛利を継ぐのじゃ」と言っていたのがとても印象的で、やがて毛利元就になり毛利本家を継ぐ姿が思い浮かびました。

興元が毛利の軍勢を連れて京都に出発します。
重臣の中では福原広俊が一緒に行きます。
大内義興とともに、諸国の大名や国人領主達が続々と京都に向かいます。

松寿丸のもとを武造(奇抜な格好をして一緒に遊んでいた子達の一人)が訪れ、飲まず食わずで働いても臨時の税が払えないことを聞かされ、元兼が領民から過酷な取立てをしていることを知ります。
武造の家は夜逃げをすると言い松寿丸は衝撃を受けます。
元兼を問い詰めると、何と自身の部下のせいにして部下を切り殺します。
松寿丸は「十分調べもせず、正式な手続きも踏まずに家臣を責めた」という理由で元兼によって城主失格の烙印を押され猿掛城を追い出され納屋に閉じ込められてしまいます。
「この時の過ちは、後の元就に大きな影響を与えることになる」というナレーションがありました。
そして元兼はかなりのくせ者で手に負えない厄介な家臣という印象を持ちました。


毛利元就の子供時代は酷い目に遭ってばかりだなと思います。
5歳で母を亡くし、酒の害で正気を失った父に切り殺されそうになり、10歳で父を亡くし、酷すぎる重臣の元兼に城を追い出されます。
しかし酷い目に遭ってばかりの元就が後の中国地方の覇者になるので人生は分からないものだと思います。
早く元服して毛利元就になった姿が見たくなってきました


各回の感想記事
第一回  妻たちの言い分
第二回  若君ご乱心
第四回  女の器量
第五回  謀略の城
第六回  恋ごころ
第七回  われ敵前逃亡す
第八回  出来すぎた嫁
第九回  さらば兄上
第十回  初陣の奇跡
第十一回 花嫁怒る
第十二回 元就暗殺指令
第十三回 戦乱の子誕生
第十四回 巨人とひよっこ
第十五回 涙のうっちゃり
第十六回 弟の謀反
第十七回 凄まじき夜明け
第十八回 水軍の女神
第十九回 夫の恋