読書日和

お気に入りの小説やマンガをご紹介。
好きな小説は青春もの。
日々のできごとやフォトギャラリーなどもお届けします。

マメゾンのあんかけスパ

2016-11-30 21:34:29 | グルメ


あんかけスパ専門店の「あんかけスパ マメゾン」に行きました。
あんかけスパとは「あんかけスパゲティ」のことで、名古屋名物の一つとのことです。
私は愛知県に来て初めてあんかけスパの存在を知りました。
味噌カツ、味噌煮込みうどん、ひつまぶし、きしめん、手羽先、小倉トーストなど、名古屋には個性的な食べ物が色々あると思います

私は「カントリー」のMサイズにホウレン草をトッピングしたものを注文しました。
Mサイズは麺300gで、S、M、Lのどれか好きなのを選べます。
カントリーの具材は玉ねぎ、マッシュルーム、ピーマン、コーンです。
トッピングのホウレン草には大き目にカットされたベーコンも入っています。

食べてみると、あんかけソースがピリッとしてスパイシーなのが印象的です。
「ソースは牛肉や野菜をじっくり煮込んだ」とあり、少し酸味もあることからトマトが入っているのかもと思いました。
そしてあんかけなのでとろみがあり、太麺のスパゲティによく絡みます。

食べてみて、スパゲティで麺300gはちょっと多いなと思いました
スパイシーなあんかけが美味しくて食を進ませてくれるのですが、300gだと後半でやや飽きてきます。
なので私的にはSサイズの麺200gにして、代わりにトッピングでハンバーグなどの肉類を載せるような食べ方のほうが良いかなと思いました。

あんかけスパも名古屋の名物ということでいくつもお店があり、メニューも豊富なようです。
機会があれば他のお店のあんかけスパも食べてみようと思います。

もみじ寺 寂光院の紅葉

2016-11-29 21:17:25 | フォトギャラリー
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有楽苑の紅葉を見た後はもみじ寺の寂光院(じゃっこういん)に行きました。
ここはお寺の本堂が山の中にあり、たくさんの石段を上っていきます。
本堂に行く途中でも本堂でも、素敵な紅葉を楽しませてもらいました
※写真は全てクリックで拡大されます。


---------- もみじ寺 寂光院の紅葉 -----------


寂光院の麓にやってきました。
有楽苑から歩いてきたのですが結構距離があるので、犬山遊園駅から出ているシャトルバスがお勧めです。
ここから石段をたくさん上って寂光院本堂を目指します。


もみじの木が約1000本あり紅葉で有名なことから「もみじでら」とも呼ばれるとのことです


そして大きなもみじの木が多く紅葉も見ごたえがあります。




山の中にある大きなもみじの木の紅葉はまた一味違った雰囲気になっています


あと300段石段を上ると寂光院本堂という地点に来ました。
お母さんからそのことを聞いた男の子が「えー!300段!?」とうんざり気味に言っていたのが面白かったです(笑)


というわけで、300段を上ります。


幟に書いてあるように、「継鹿尾(つがお)観音 寂光院」と言うようです。


寂光院本堂に到着しました


「織田信長の眺めた 尾張・美濃」とある展望台。
愛知と言えば尾張、岐阜と言えば美濃で、この辺りは「尾張の大うつけ」から天下統一にあと一歩まで迫った織田信長と縁が深いです。




燃えるように赤い紅葉
もみじの木の、一年通してのクライマックスだと思います。




寂光院本堂。
参拝する人の列ができていました。
私もしっかり参拝しました。




既に西日の時間帯で、刻一刻と太陽の位置が下がってきています。




特に秋や冬の西日の時間帯は切なくもの悲しい気分になります。


紅葉も、昼間の太陽の光を浴びている時は明るく晴れやかな気分になるのに対し、西日を浴びている時は切なくなります。


同じ紅葉でも時間帯の差で受ける印象が大きく変わるのが興味深いです。

というわけで、寂光院の紅葉も楽しませてもらいました
犬山城、有楽苑、寂光院と一気に三ヶ所の紅葉を見て回ることが出来て良かったです。
やはり紅葉は良いと思いました


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日本庭園 有楽苑の紅葉

2016-11-28 21:24:26 | フォトギャラリー
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犬山城の紅葉を見た後は日本庭園の有楽苑(うらくえん)に行きました。
日本庭園らしく色々な緑に囲まれた中、素晴らしい紅葉を見ることができました
※写真は全てクリックで拡大されます。


---------- 日本庭園 有楽苑の紅葉 -----------


有楽苑にやってきました。
犬山城から徒歩で行ける距離です。


さっそく素晴らしい紅葉に出会いました


もみじも黄色になるのだということを意識する色付きです。




太陽の光が紅葉を際立たせてくれます
見ているほうも明るい気分になります






緑と紅葉がよく合っています。
緑も紅葉も、秋の太陽に照らされて凄く明るくて陽の気に満ちていました




竹ともみじの紅葉の組み合わせも良いなと思います


温かさに身を包まれるような景色でした。
自然と門の向こうに行きたくなります。




明るい緑色のもみじもありました。


明るい緑には生命力を感じます


重要文化財、旧正伝院書院。
最初は「国宝茶室 如庵」かと思いましたが如庵は写真の右端に少し写っている部分です。
二つの建物がつながっているようです。






「茶花園」という場所に来ました。


生い茂る緑に紅葉が彩りを添えています







太陽の光に輝く緑と紅葉。

というわけで、犬山城に続き有楽苑の紅葉を楽しませてもらいました
日本庭園の緑と紅葉が凄くよく合っていたと思います。
次は「もみじ寺」の寂光院の紅葉を見に行きます

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国宝犬山城の紅葉

2016-11-27 15:00:39 | フォトギャラリー
昨日、愛知県犬山市に出掛けました。
犬山市は愛知県の紅葉スポットとのことで、紅葉の名所がいくつかあります。
私は国宝の犬山城、日本庭園の有楽苑、もみじ寺の寂光院の三ヶ所を散策しました。
まず最初に行った犬山城のフォトギャラリーをお楽しみください
※写真は全てクリックで拡大されます。


----- 国宝犬山城の紅葉 -----


名鉄の犬山遊園駅からしばらく歩き、「三光稲荷神社末社 銭洗稲荷神社」にやってきました。
ここに犬山城に行く道があります。


このずらっと並ぶ朱の鳥居を抜けていきます。


坂道を上っていきます。


この坂道の紅葉が良かったです


天気も良く、青空によく映える紅葉を見ていると自然と気分が明るくなります


犬山城に着きました


天守閣に登れるようなのでさっそく登ってみることにします。


犬山城の中は土足禁止なので靴を脱いで袋に入れ、天守閣に行くために次々と急な階段を上って行きます。
結構な急こう配で上る人と下りる人が同じ階段を行き来するので手すりをしっかり持って歩かないと危ないです。


天守閣に出ました
混雑しているので天守閣では立ち止まらずに歩いてくださいとのことだったので、歩きながら景色の撮影をしました。


広大な川は木曽川です。
木曽川にかかる橋はライン大橋、そして左奥に見える山は伊木山です。


青空に薄い雲がすらーっと棚引き、なんて爽やかな空なのだろうと思いました
ゆったりとした水面も良いです




次は地上に下りて紅葉を見て行きます。


紅葉はピークを過ぎていて、もみじの葉っぱが枯れ始めている木が多かったです。
その中でもみなさん頑張って良い写真を撮ろうとしていました。
私も良い景色を探して歩いてみました。


もみじの紅葉は緑色から黄色、橙色、赤色と、段々と赤色になっていくようです。
それらが混在した木は色彩豊かになっています。






すごく主張している葉っぱなのにどこか切なさがあるのがもみじの紅葉の魅力だと思います


晩秋の日差しを浴びながら紅葉している木々の間を歩くとかなり気持ちがリフレッシュします




逆光の太陽がもみじの葉の間から顔を覗かせています
少し撮る角度を変えると、


ワインレッドの色合いになります


イチョウの黄色が入ると一気にカラフルな色合いになりますね
もみじは紅葉、イチョウは黄葉と書き、どちらも「こうよう」と読みます。


まるで桜の花のように、小さなもみじの葉っぱが色付いています。




というわけで、犬山城の紅葉を楽しみました。
次は日本庭園「有楽苑」の紅葉を見に行きます

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「想い出あずかります」吉野万理子

2016-11-26 23:35:08 | 小説
今回ご紹介するのは「想い出あずかります」(著:吉野万理子)です。

-----内容-----
海辺に住む不思議な女性と女子高生の、切なくも幸せな出会い―。
嬉しいのに涙が出て、傷ついても信じてみたい。
自分にそんな感情があることを、初めて知ったあの日。
こんなに大事な想い出も、人は忘れてしまうもの?
毎日が特別だったあの頃が、記憶の海からよみがえる。

-----感想-----
鯨崎町という海辺の町の崖の下に魔法使いが住んでいます。
魔法使いは「おもいで質屋」と言う店をやっていて、想い出を話すとその想い出を預り、想い出の価値に見合ったお金を貸してくれます。
20歳になるまでにお金を返すと思い出も返ってきますが、お金を返さなかった場合その想い出は流れてしまい二度と帰ってきません。
また、20歳になると質の想い出が流れると同時に、想い出質屋に通った記憶も消えてしまいます。

冒頭、芋川大和と遥斗の兄弟がおもいで質屋にやってきます。
小学五年生の兄、大和は既に何度か想い出を質入れしていますが、小学一年生の弟、遥斗はこの日初めて想い出を質入れしに来ていました。
魔法使いはローズピンクのマントにバンダナのような帽子、銀色の髪をくるくると縦ロールにした風貌です。

魔法使いに想い出を預けると、「想い出質屋に預けた」という記憶だけは残りますが、その想い出がどんなものだったかは頭の中から消えてしまいます。
そして魔法使いによると大抵の子が20歳になるまでに思い出を取りに来ないとのことです。

魔法使いから人生最初の想い出には一律で8880円払うと聞いた遥斗は覚えている限り最初の思い出を差し出します。
それは初めて幼稚園に行った日の母の三津子に関する想い出で、何かにつけて「遥斗ったらあの時~」と蒸し返してくる母に遥斗はムカついていました。
なのでそんな想い出なら預けたまま質に流れても良いくらいの気持ちで預けていました。
遥斗はその後その思い出を取り戻そうと思うのか、またそうなった時に取り戻せるのか気になりました。


二年が経ち、遥斗は想い出質屋の常連になっていました。
もっぱら母にムカついた想い出を次々と質に入れています。
ある日、遥斗が想い出質屋にいると、鯨崎中学二年の永澤里華がやってきます。
里華はこの秋から新聞部部長になっていて、「おもいで質屋の魔法使いに直撃インタビューをし、鯨崎中学新聞で記事にする」と意気込んでやってきていました。
里華は魔法使いが想い出質屋をやっているのが気に入らないようで、「お金を貸す代わりに想い出を取ってしまうなんて酷い」と言っていました。
魔法使いは冷静に「20歳になるまでにお金を戻しに来れば想い出は流さずにちゃんと返すと説明している」と言っていて、何とかして魔法使いに「想い出質屋がやっていることは酷い」と認めさせるんだという意気込みが言葉の端々に表れていた里華ですが最後には言い負かされてしまいました。
私的にはお金目的で想い出を質入れしに来ている時点で、その想い出はその人にとって自分の胸の内に留めておくほどの価値がないということなので、酷いのは質入れをしに来るほうなのではないかと思います。

里華は新聞記事を書くのですが、顧問の先生は当然そんなものは信じないです。
ならば他の部員に聞いてみろと言う里華に対し、おもいで質屋のことを知っているはずの他の二年生女子部員三人がなぜか「そんなものは聞いたことがない」と言い、里華は顧問の先生から空想癖の強い人扱いされて憤慨します。
やがてあさ美、美乃里、佐奈江の三人がなぜ「そんなものは聞いたことがない」と言ったのか、依頼を受けた里華のクラスメイトの相沢雪成が里華に伝えに来ます。
雪成に頼んだ理由が「揉めた時、女同士だと感情的になってうまく言えないから」なのは、たしかにその傾向はあるかもと思いました。
ただ男同士でも感情的になっていることがあり、これは男女問わず感情型の人と感情型の人が揉めた時にその展開になるということで、さらに女性には比較的感情型の人が多い傾向があることから、「女同士だと感情的になってうまく言えない」になるのだと思います。

雪成のおばあさんは交通事故に遭って入院しています。
何となく仲良くなった里華と雪成がおばあさんのお見舞いに行った時、雪成が「おばたあさんは事故ではなくひき逃げかも知れない」と言っていました。
事故にしては不自然な点があったのです。
しかしおばあさんは認知症になっていて事故当時のことも忘れてしまっていて話すことができません。
雪成は魔法使いに頼んで忘れてはいても脳には残っているはずのおばあさんの記憶を出してもらおうと考えます。
それは魔法使いがやっている「おもいで質屋」の仕事とは違うのですが、雪成は里華に案内してもらい魔法使いのところに行き交渉しようとします。
雪成の態度はとても人にものを頼む態度ではなく傲慢そのもので、まだ中学生なのを差し引いても酷い男だなと思いました。
何とかして魔法使いを説得しようとする雪成に里華が良いことを言います。

「想い出は、その人だけのものだよ。他の人が、勝手に開けたり取り出したりしちゃいけないんだと思う」

雪成は「おまえには聞いてない」などと言っていましたが、これは里華の言うとおりだと思います。
本人の意思に関係なく勝手に取り出すのは明らかに間違いです。

「いきなり押し掛けてきたオレを嫌いになったのか?」という雪成に対し、「魔法使いには、好きとか嫌いとか、そういう感情がもともとないの」と言っていました。
さらに雪成が帰った後は里華に「わたしの基準は『面白い』か、『つまらない』か、それだけだから」と言っていました。
この辺りは人間とはだいぶ違うようです。


里華は清川高校の一年生になります。
雪成も清川高校に入っていました。
小学五年生になった遥斗は相変わらず母への不平、不満を質に入れ続けています。
里華のほうは一度たりとも想い出を質に入れていなくて、遥斗と里華は対照的です。
いつか里華も想い出を質入れする時が来るのか気になりました。

ある日、魔法使いから「あなたの学校にいじめはある。現に、うちに毎日夕方来る子がいるの」と驚くべきことを聞いた里華。
その子は毎日いじめの記憶を質入れしているとのことです。
里華は誰がいじめられているのか1年2組のクラス内を探していきます。
それは白土(しらと)芽依という里華が心の中で「自由美人」と呼んでいる超越的な人でした。
とにかく行動が自由で、遅刻が多く、授業中も携帯をこっそりいじっていたり、三時間目はいたのに四時間目は消えていたりするとのことです。

芽依は同じ清川高校の違うクラスの一年生女子4人に因縁を付けられていました。
この女子4人は性格の醜悪さが滲み出ていました。
一部始終を見てしまった里華は芽依を助けるために奮戦することになります。


遥斗は小学六年生、里華は高校二年生になります。
里華と芽依は友達になっていて二人揃ってよく「おもいで質屋」に行っています。
遥斗は生意気な口を利くようになっていて、二人を「おばさん」呼ばわりし、ふざけた口調で色々言っています。
お母さんのことが嫌いだと言い、さらに「おばさんたちは嫌いじゃないの?」という遥斗に対し、里華は「好きとか、嫌いとか、考えたことない」と言っていました。
そして次のように言っていました。

「だって、もし赤の他人だったら、好きならもっとそばにいればいいし、嫌いなら離れればいい。でも、親って、どうやっても縁は切れないんだよ。そばにいたって、遠くにいたって、一生会わなくたって、親だっていう事実は変わらないんだよ。だったら、好きかどうかなんていちいち考えない方が楽ちんじゃない?」

さらに芽依は想い出について次のように言っていました。

「あたしは、里華に教えてもらったの。想い出の大切さ。自分の想い出は、他の誰でもない自分だけのもの。他人には譲れない。遥斗くんも、そろそろそういうこと、考えてもいいんじゃないの?」

お母さんのことが嫌いだと言い、お母さんの想い出を次々と質入れしている遥斗ですが、そろそろその行為について考える時が近いことが予感されました。

芽依をいじめていた四人組はしぶとく暗躍していました。
里華に事実とは違うことを吹き込んで芽依への不信感を持たせようとしていて、この四人組は本当に酷いなと思います。
ただ里華は里華で肝心なところで芽依を信じ切れずに不信を抱いてしまいます。
それと雪成はとことん最低だなと思いました。
そしてついに、里華が想い出を預けることを決意する場面がありました。
ちなみに雪成は自分が彼女に対し傍若無人に振る舞ったり邪険にしたりするのは良いが、その反対に彼女から「こんな人どうでもいいや」と扱われるのは我慢ならないらしく、どうしようもない人だなと思いました。

やがてついに、遥斗もお母さんの想い出を次々と質入れしていた行為、そして自分の心と向き合う時が来ます。
正直あんな形で向き合う時が来ることになるとは思わなかったので驚きました。
その原因は完全に遥斗にあり、取り乱しぶりが哀れでした。


最後、里華は大学二年生になっていました。
東京の大学に行っている里華は芽依に会うためと実家に帰省するために地元に帰ってきました。
20歳の誕生日を2日後に控えた里華は記憶が消えないうちに、最後に魔法使いに会おうとします。
お別れが予感される会話は言葉にも雰囲気が乗り、読んでいて寂しい気持ちになります。

ファンタジー小説ですが扱っているものが「想い出」なだけに人の感情や心について描かれていて、色々な人間ドラマがありました。
里華が「きっともう会うことはないのだ」とお別れを受け止めて、寂しさの中に夏の晴れた日に見える水色の空のような綺麗な心境を見出していたのが凄く良かったです。
想い出質屋を経て里華も、そして辛い経験をした遥斗も、この先良い想い出をたくさん作っていってほしいと思いました。


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寒い一日

2016-11-24 22:05:22 | ウェブ日記
今日は朝起きた時に雨が降っていました
通勤の支度をして外に出ると静かに雨が降る中空気がひんやりとしていてだいぶ寒かったです。
手がかじかむほどではなかったですが、傘を差す手に手袋があれば助かるなと感じたのでだいぶ冬に近付いていると思います。

会社でも一日寒く感じました。
そして帰り道も寒かったので速攻で家に帰りました。
この秋初めて衣装ケースからパーカーを出しました。
布団も既に厚く掛けるようになってきているし、こうして着実に冬に向かっていくのだと思います。

今日は関東甲信地方では朝から雪が降り続いたとのことです
そして東京都心や横浜、甲府では54年ぶりに11月の初雪観測となりました。
さらに東京都心では1875年の観測開始以来、初めて11月に積雪を観測したとのことです。
雪を巡る歴史的な一日になったようです。
電車の運休が相次ぎかなり混乱したようですし、今日の関東甲信地方の人は大変だったと思います。

今日はコンビニで夕ご飯を買って帰ったのですが、寒かったので豚汁を買いました。
寒い日は豚汁、鍋、味噌煮込みうどんなどで温まると良いと思います
11月も今週で終わり来週の後半には12月になり冬に入っていくので、寒さで風邪を引かないように気を付けたいと思います。

「ユング心理学入門」河合隼雄

2016-11-23 21:45:56 | 心理学・実用書


島本理生さんの「夏の裁断」という小説がこの本を最後まで読む力を与えてくれました。
今回ご紹介するのは「ユング心理学入門」(著:河合隼雄)です。

-----内容&感想-----
興味のあったこの本をついに読んでみました。
しかし内容は今まで読んできたユング心理学の本よりも大幅に言葉が難解になりしかも抽象的でさらに文章量も多かったです。
これまでにユング心理学の本は次の4冊を読んでいました。

「ユング名言集」カール・グスタフ・ユング
「面白くてよくわかる! ユング心理学」福島哲夫
「ユング心理学でわかる8つの性格」福島哲夫
「ユング心理学へのいざない」秋山さと子

「面白くてよくわかる! ユング心理学」

この本は見開き2ページのうち右側に文章、左側にイラストという形を採っていて、ユング心理学初心者にも分かりやすくて読みやすかったです
「ユング心理学でわかる8つの性格」も同じくイラストが豊富で文章も分かりやすく、楽しく読むことができました。

「ユング心理学へのいざない」

この本になると文章がやや難解になってきます
しかしとても丁寧な語り口でイラストや写真も入れて理解をしやすくしてくれていて、ユング心理学の本を3冊読んで基本の考え方を理解していたので無事に最後まで読むことができました。

そして今回の「ユング心理学入門」です。

なにこれ…と思いました
カエル_どん引きの絵文字を思わず使うくらいぎゅうぎゅうに詰め込まれた文章にどん引きしました。
しかしこの本を読むとユング心理学のことをこれまで以上に詳しく知ることができるだろうと思い読んでみました。

最初の第一章はかなり抽象的な書き方になっていて、言葉の意味を理解するのが大変でした。
第一章の中で著者が「二章から読んで、一章は最後に読んだほうが良いかも知れない」と書いていて、たしかにそうだなと思いました。

心理学では、ジークムント・フロイト(精神分析学を創始)、カール・グスタフ・ユング(分析心理学を創始)、アルフレッド・アドラー(個人心理学を創始)の三人が心理学三大巨頭と呼ばれています。
第二章ではフロイトとアドラーが取り上げられていて、両者の違いが書かれていました。
フロイトは一つの症状に対して、その症状について何か思い出すことはないか、あるいは、その症状が初めて起こったときについて何か思い出さないかと患者の過去について尋ねるのに対して、アドラーは、今悩んでいる症状がもしなかったら、何をしたいと思いますか、と未来に関する患者の態度をよく尋ねたとのことです。
これは「嫌われる勇気」(著:岸見一郎 古賀史健)というアドラー心理学の本でも書いていました。

第三章の「タイプ」は私がユング心理学の中でもかなり好きな部分です。
日本でも馴染みのある「外向」と「内向」という言葉はユングが初めて使ったとのことです。
ただし「あの人は外向的だから良い、あの人は内向的だから駄目」というような、日本社会で段々と形成されていった意味とユング心理学での意味には差があることに注意が必要です。
ユング心理学では心のエネルギーが外側に向かうか、それとも自分の内側に向かうかで外向、内向を考えています。
そして学校や企業では外向を良し、内向を悪しとする風潮があるのに対し、ユング心理学ではどちらも個性として認めています。

四つの心理機能(思考、感情、感覚、直観)の考え方はユング心理学の中で最も興味深いです。
「思考、感情、感覚、直観タイプテスト」という記事を書いているので、興味のある方は参考にしてみてください。
四つの心理機能それぞれに外向型と内向型があるので、人間の性格は大きく8つのタイプに分かれることになります。
「外向感情型の女性はパーティに欠かせない」とあり、たしかにそうだなと思いました。
場を盛り上げ楽しい雰囲気にしてくれる貴重な人です。
ただし感情機能のみで突っ走るとまずいことになり、それは他の機能についても同じことが言えます。
例えば思考機能のみで突っ走ると相手の感情を無視して合理性のみを追求することになり猛反発を買います。
また思考型は男性に多く感情型は女性に多い傾向があるとのことです。


この図は思考、感情、感覚、直観の関係を表した図です。
自分の属する機能が「主機能」で、その両隣は比較的相性の良い「補助機能」であり、対面にある機能が「劣等機能」で最も苦手としている機能です。
私の場合は感覚型なので両隣の思考、感情とは比較的相性が良く、対面にある直観が苦手機能となっています。
「ある個人はその主機能をまず頼りとし、補助機能を助けとしつつ、その開発を通じて、劣等機能をも徐々に発展させてゆく。このような過程を、ユングは個性化の過程と呼んでいる」とのことです。
私も主機能をメインの機能として生かしつつ、補助機能はもとより苦手とする劣等機能も生かせるようになるのが理想だと思います。

コンプレックスという言葉を最初に使ったのはユングとのことです。
内向、外向もユングが最初に使った言葉ですし、心理学用語がごく普通に社会に浸透しているのは、これらの言葉にそれだけ心を捉えるものがあるのだと思います。

フロイトは無意識を単に抑圧されたものと扱ったが、ユングは無意識を肯定的に見ていたとのことです。
これが「原型」の考え方へとつながっていきます。
無意識という言葉も、ユング心理学によって日本でも馴染みのある言葉として使われるようになったようです。

子供を過保護にすると神経症になることがあるというのはかなり興味深かったです。
世話を焼きすぎ、近所の子達と遊ぶことも「危ないから駄目」と言っていたりすると、その子供が自我を成長させる妨げとなり、やがてその抑圧されたものが神経症として現れるとのことです。

ユングは人間の心をまず意識と無意識に分けて考えました。
次に無意識について、個人的無意識と普遍的無意識(集合的無意識)に分けました。
個人的無意識はその人自身の無意識ですが、普遍的無意識は人類全体に共通する無意識のことで、この考え方もかなり興味深いです。
全世界的に太陽を見れば神のイメージを持ち、大地を見れば偉大なる母のイメージを持ったりするのが普遍的無意識です。
例としてギリシャ神話ではアポロンが、日本神話では天照大神(あまてらすおおみかみ)が、太陽の神となっています。

「われわれの自我の制御力が弱まるときに、普段の性格とは逆の性格が現れることがある」とありました。
お酒を飲んだ時に普段とは違う人格になる人が例として挙げられていてなるほどなと思いました。
理想的な自分であろうとし、普段は自我の力で抑え込んでいるものがお酒によって抑え込む力が弱まり、普段とは全然違う性格として姿を現すようです。

夢には「夢物語だ」と否定的なニュアンスと「若いひとに夢を持たさねばならない」と肯定的なニュアンスの、両面性があるとありました。
また夢は相補的に作用し、暗い現実に晒されている時は明るい夢を見たりすることがあるようです。
そして夢は意識と無意識の相互作用で形成され、一見現実で直面したことを夢で見ているような場合にも、よく見ると登場人物が微妙に違っていたりし、そしてそれには自分の無意識が作用していたりします。

「ペルソナの形成に力を入れすぎ、それとの同一視が強くなると、ペルソナはそのひとの全人格をおおってしまって、もはやその硬さと強さを変えることができなくなり、個性的な生き方がむずかしくなる」とありました。
ペルソナは社会で生きていくためには必要ですが、飲み込まれてしまってはいけないなと思います。
教師の人が家に帰っても教師的な発言をしているような場合はペルソナによって本来の人格が覆われてしまっているので注意が必要です。

アニマ(男性の中にある女性的な部分)とアニムス(女性の中にある男性的な部分)についても詳しく書いてありました。
「アニマの特性が他人との協和であるのに対して、アニムスの特性はその鋭い切断の能力にある」とありました。
アニムスを発達させようとする(個性を際立たせる)女性が男性から敬遠される傾向にあるというのはたしかにそうかも知れないと思いました。
そしてアニムスがあまり発達していない女性のほうが男性から愛されたりちやほやされたりするとあり、私はおバカキャラの女性が男性からちやほやされるのはここに由来するのではと思いました。

ユング心理学では「自己(セルフ)」が核心をなしています。
自我が意識の中心であるのに対して、自己は意識と無意識とを含んだ心の全体性の中心とのことです。
西洋人が自我が強いのに対して東洋人は自己が強く、西洋と東洋で明確な差があるとのことです。
なので西洋人であるユングが東洋に来た時、自身が見つけ出した自己(セルフ)の概念を東洋人がごく普通に感覚的に身に付けていることに驚いたとありました。
これは日本から見ると、無理に西洋的な自我の強さを身に付けようとするより、自己(セルフ)に長けているという良さを上手に生かしたほうが良いのではと思います。

この本ではフロイトとアドラーの名前がよく出てきて、特にフロイトの名前はかなりたくさん出てきました。
「フロイトが研究者であり開拓者であるのに対し、アドラーの本質は教育者たることにあった」というのは興味深い言葉でした。
フロイトにも功績があるとあり、島本理生さんの「夏の裁断」という小説の根底にはフロイトの考えが流れていそうなので、フロイトの心理学の本も簡単なものを少し読んでみようかなと思いました。


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移民政策について

2016-11-21 21:12:00 | 政治
昨年くらいから世界的な話題になっている移民政策についての問題。
ヨーロッパではフランスが最も移民を受け入れている国なのですが、近年は移民達の素行の悪さによる治安の悪化が社会問題化し、移民政策を見直すべきという意見がフランス国民から噴出しています。
安心して暮らせないので、迷惑な人達は自分の国に帰ってくださいという意見です。
これはドイツやスウェーデンの難民についても同様のことが言えます。

日本でも近年は国会で「移民を受け入れるかどうか」の議論がされたり、「日本も移民を受け入れよう」という報道がされたりしています。
日本では妙な現象があり、テレビも新聞も、移民政策に反対すること自体を許さないかのような報道が非常に多いです。
「とにかく移民は受け入れるべき。これに反対する人は極右」としています。
これでは反対の意見を持っていたとしても言いずらくなってしまうと思います。

ここで気になるのは移民難民による犯罪が多発していることです。
中でも婦女暴行犯罪の多発が気になります。
そういったことがあり、不安を感じて移民政策に反対するのを「極右だ」とするのは論理構成に無理があると思います。

「移民に反対する人は極右」と言っている人達は、自分達が「移民に寛容な良識派」という立場を得るためなら、移民を受け入れた結果日本人女性がどうなっても構わないと言っているのと同じです。
リベラルや左翼の人達の、こういうところが信用できないのです。
常に良識派的な立場を取ることしか考えておらず、その結果日本人女性が危険に晒されることなど全然考えていません。

私は日本に住む日本国民なので、まず第一に日本国民が安心して暮らせる日本であってほしいと思います。
良識派的な立場を得たいがために自国民の安全をないがしろにしたのでは本末転倒です。
日本人女性をヨーロッパで起きているような危険な目に遭わせないためにも、私は移民政策に反対します。

※「スウェーデンで起きたこと ー移民政策についてー」の記事をご覧になる方はこちらをどうぞ。

アメリカ大統領選 2対57の衝撃

2016-11-20 15:52:06 | 政治
先日行われたアメリカ大統領選挙、日本のメディアもアメリカのメディアもヒラリー・クリントン氏が勝つだろうという報道でしたが、結果はその予想に反しドナルド・トランプ氏の勝利でした。
特に印象的だったのがアメリカのメディアで、国内日刊紙の発行部数上位100紙のうち57紙がクリントン氏支持の記事を書き、対照的にトランプ氏支持の記事を書いたのはわずか2紙でした。
2対57の多勢に無勢のリンチのような状態で、メディアの報道だけ見るとヒラリー・クリントン氏の圧勝でした。

しかし結果はドナルド・トランプ氏の勝利。
この結果が意味するのは既存マスコミの完敗です。
アメリカ国民はテレビ・新聞が作り出す「ヒラリー・クリントン氏を勝たせましょう」という世論操作には乗りませんでした。

これがインターネットのない時代であれば、有権者同士が大規模なつながりで意見交換するすべがなかったため、テレビ・新聞の報道を鵜呑みにする形でヒラリー・クリントン氏が勝っていたかも知れません。
しかしネットの台頭により今はブログ、ツイッター、フェイスブックなど色々なSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及したことにより、有権者同士が気軽につながれるようになりました。
これにより有権者同士が意見交換し、テレビ・新聞の報道(例えばヒラリー氏は最高です、そしてトランプ氏は最悪です一辺倒の報道)と自分達の意見との間にかなりの差があることに気付くようになりました。
そして「偏向報道(特定の意見に偏った報道のこと)」の実態を知るようになりました。
なのでネットが台頭した結果テレビ・新聞の既存マスコミの偏向報道の実態を知る人が増え、従来のようには偏向報道を駆使した世論操作、世論誘導が通用しなくなってきています。

ゆえに最近は「ネットの情報は信用できない」と恨み節のようなことをよく言うようになってきています。
それでいて自分達がネット以上に嘘や偏向にまみれた報道をしていることは絶対に言いません。
私的にはネットの情報は確かに玉石混交で見極める目が必要になりますが、一方的で偏向した報道ばかりしているテレビと新聞よりはだいぶ有効だと思います。

既存マスコミは岐路に立たされていると思います。
日刊紙の57対2に代表される圧倒的有利な報道を仕掛けても勝てなかったのは、既存マスコミによるヒラリー氏持ち上げがそれだけ信用されていないということです。
この完敗を真摯に受け止め、自分達の報道姿勢を反省し、まともな報道をして国民から信用されるように務めるべきなのではと思います。
ところがトランプ氏から「報道が偏向している」と抗議されたら「言論弾圧だ!トランプはマスコミを弾圧しようとしている!」と、自分達が明らかな偏向報道を行っているのは棚に上げて被害者のふりをしようとしています。
散々偏向報道をしておいて抗議されると被害者のふりをするという、日本の既存マスコミと似たようなことをしています。
こういうところが既存マスコミが嫌われ信用されない原因なのだと思います。
ヒラリー氏とトランプ氏どちらが良いかはさておき、既存マスコミによる世論操作、世論誘導が通用しなかったという点で凄く興味深い大統領選挙でした。

「夜を守る」石田衣良

2016-11-19 20:28:51 | 小説


今回ご紹介するのは「夜を守る」(著:石田衣良)です。

-----内容-----
今度の舞台は、アメ横だ!
失踪した相棒を捜すダンサー。
嫌がらせに悩むヤクザ。
ひきこもりでシンナー中毒のイケメン。
商店街をおびやかす“ハイカラ窃盗団”。
アメ横の平和を守るため4人のガーディアンが今夜もガード下に全員集合!

-----感想-----
アメ横商店街をパトロールする青年達の話で、池袋ウエストゲートパークと似た雰囲気を持つ作品です。
物語は次のように構成されています。

プロローグ
アメ横の女
グリーンハウス
Xペリエンスの姫
夜のジャングルクルーズ
雨に踊れば
夏の自警団
アメ横ランナバウト

「プロローグ」
物語全体の語り手でもある川瀬繁は昼はレンタルビデオ屋でアルバイトをしていて、夜はアメ横に行きます。
私大を出て就職をせずに4年になる26歳です。
繁が「福屋」というJRの高架下にあるさびれた定食屋に行くとそこには共にアメ横でパトロール活動をしている橋本直明と服部要が来ていました。
三人は地元の上野中学の同級生で、揃いの青いフライトジャケットを来てアメ横のパトロール活動をしています。
直明は身長180cm、体重100kgの巨漢で、実家はアメ横で「ブルックリン」という古着屋をやっていて直明もそこで働いています。
あだ名は香港映画の大スターからサモハンです。
要は中肉中背で福祉関係の専門学校を出た後は隣の文京区役所で福祉課の仕事をしています。
あだ名はヤクショです。
繁にはあだ名はなく、いつも静かで頭脳は明晰、都立の進学校から私立大学に進んだものの、卒業しても就職はしなかったとのことです。

この場にはもう一人、誰とも視線を合わせずおどおどとしている謎の男がいました。
店主の真奈美によると男は繁たちの仲間になりたがっているとのことです。
この男は「のりすの家」という様々な障害者が力を合わせて暮らす生活支援施設の人で、一方的に仲間になりたがる男を三人とも煙たがっていました。
やがて男が「お友達になってください」と話しかけてきて、名前は岡田由紀夫だと名乗ります。
帰れと言っても引き下がらない由紀夫に対し、繁は「今晩中にアメ横通りにある全ての放置自転車をきれいに片づけられたら仲間にしてやる」と無理な条件を言って追い払います。
そして三人は夜のアメ横のパトロールに出掛けて行きました。

やがて三人は24時を過ぎた真夜中のアメ横で老人とともに放置自転車の整理をしている由紀夫を見かけます。
この姿を見て繁は由紀夫を仲間として迎えることにしました。
繁は昼間にもこの老人に会っていて、思わぬ形で再会して老人の話を聞くことになりました。
老人は4年前の12月にアメ横で当時大学生だった一人息子の増井信を殺されています。
増井老人は毎晩犯人を追いながらこの街をひとりで片付けていました。
街の片付けをすることについて興味深いことを言っていました。

「この街には理不尽な暴力を許してしまうような荒んだ雰囲気がある。あの放置自転車もそうだし、あのむやみにうるさいネオン看板や呼びこみもそうだ。信を殺した犯人はなかなか見つからないかも知れないが、この街の空気をちょっとでもいいものにするのはすぐにできることだ、そうわたしは思った」

四人はこの言葉に感銘を受けて、増井が犯人探しに区切りをつけて故郷の福島に帰るまでの一週間、増井を手伝うことにします。
繁は心の中からやる気が湧いてきて、次のように思っていました。
大学を卒業して四年。自分から進んで何かをやりたいと思ったことは今回が初めてだった。ひと晩で新しい目的が見つかったのだ。ちいさなころから親しんだこの街の空気をよくする。この街の夜を守る。


「アメ横の女」
福屋で集まるところから物語が始まります。
基本的には福屋が四人の集合場所になっています。
青いフライトジャケットに続き、四人揃いの青いベレー帽もでき、本格的なアメ横のガーディアン活動が始まります。
繁はぼんやりとアメリカの都市から始まって世界に広がりを見せるガーディアンエンジェルのことを思い浮かべていました。
それぞれのストリートネームが決まり、由紀夫は施設での呼び名をそのまま使って「天才」、直明と要は元々のあだ名のまま「サモハン」と「ヤクショ」、繁は「アポロ」に決まります。

福屋にプロローグでも登場していた、アメ横のカジュアルな格好とは違う雰囲気の丸の内官庁街のOLのような雰囲気の女が現れます。
天才がこの女と知り合いで、名前はレイカで新宿の会社で働いていると教えてくれます。
しかしヤクショが話しかけると酷くそっけない対応で追い払われてしまいました。

四人がアメ横のガーディアン活動をしていると、レイカが中央通りのABAB(アブアブ)のシャッターにもたれて立っているのに遭遇します。
レイカの本名は早川真由子といい、昼間は新宿の住宅会社のショールームでコンパニオンをしていますが夜の顔も持っていて娼婦活動をしています。
夜の顔を見られたレイカは衝撃を受けていました。


「グリーンハウス」
四人がアメ横でガーディアン活動をしていると70歳くらいの派手な格好をしたおばあさんが声を掛けてきます。
このように、活動していると声を掛けてくる人がいてそこから話が始まることもあります。
おばあさんはかなり大きな業務用冷蔵庫を運ぶのを手伝ってくれと言っていました。
近くと言っていたわりにかなり距離があり、湯島まで運ばされました。
その家はどこも明るい緑のペンキで塗られていて、そこらじゅうに電気製品が積み上げられていました。
ヤクショによると「湯島の緑の家」として、いわゆる汚屋敷として役所でも有名とのことです。
そんな汚屋敷も電気製品が安く手に入るということで外国人向けの観光案内に載っていて、観光名所になっていました。
ただヤクショの勤める文京区役所は湯島を管轄していて地域住民から苦情が寄せられているとのことで、やはり汚屋敷は他の住民にとっては迷惑だと思います。

アポロがガーディアンについて胸中で語る場面がありました。
夜のガーディアン活動は、実際には地味で体力をつかう仕事ばかりである。この定食屋でのひとときがもっとも安らげる時間なのだ。
ガーディアン活動と聞くと派手なイメージがありますが、実際にやっていることはゴミ拾いや自転車整理、酔っぱらいの介抱など、地味で体力を使うものばかりです。
それでも四人の中の誰一人として離脱せずに続けているのは偉いと思います。
定食屋「福屋」では口の悪いヤクショがよくサモハンやレイカを怒らせるようなことを言って軽い喧嘩になっていて、その掛け合いも面白いです。

福屋に汚屋敷のおばあさんが現れます。
名前は内藤サキと言い、緑の家が明日の朝に強制代執行で電気製品を片付けられてしまうため助けてくれと頼んできます。
四人にとってかなり長い夜になりました。


「Xペリエンスの姫」
レイカが友達の相談を聞いてほしいと頼んできます。
「Xペリエンス」という上野でも一、二を競うキャバクラで働いている春美という子です。
問題は春美が付き合っているミノルという男で、四人はミノルと会って話を聞くのを頼まれます。
ミノルはシンナーに手を出していました。

ファミリーレストランで四人とレイカが待っていると潮崎春美とその彼氏の児島稔が現れます。
ミノルは東京に出てきてからすっかり自信を失ってしまい、シンナーに手を出してしまいました。
ただし今は晴美と約束しやめているとのことです。
そして自信を取り戻すため、ミノルもハヤテというストリートネームでガーディアン活動に加わります。
しかしガーディアン活動が始まると、ハヤテは誰かを怖れているようでした。


「夜のジャングルクルーズ」
花見の時期が終わり、アメ横の喧騒もようやく普段の賑わいになった頃。
四人がガーディアン活動をしていると、城東天童会というヤクザの一団が歩いてくるのに遭遇します。
四人の活動はアメ横で有名になっていて、このヤクザの人達も知っていました。
その中のボス格の人物から「ちょっと顔を貸してくれないか」と言われた四人。
洒落たバーに連れて行かれました。
現実のガーディアン活動でこのような人達から声を掛けられることはあるのかなと気になりました。
ボス格の男は永沢秀美といい、城東天童会若頭補佐とのことです。
永沢によると天童会がアメ横に出している16店舗の風俗店に最近嫌がらせをする奴がいるとのことです。
そこで四人がアメ横をパトロールする際、天童会の風俗店にも注意を向けてくれないかと頼んできます。
永沢は比較的穏健派の人物で犯人を捕まえても亡き者にまではしないと言っていて、嫌がらせをしている犯人を見つけたら永沢に連絡することになりました。
しかし四人がパトロールをしていると天童会渉外部長の田神輝夫という男が出てきて、犯人を見つけたら永沢より先に教えるように脅してきます。
こちらは物凄く暴力的な人物で犯人は捕まったら命はなさそうでした。
四人は両者の板挟み状態になり、簡単にはいかない展開になりました。
また、お調子者のヤクショが永沢から報酬を出すと言われた際にすぐに乗り気になっていたのと違い、アポロとサモハンは慎重でした。
特にサモハンは他の話を見ても、見た目と言動は大ざっぱでもなかなか勘が鋭いと思います。
何かに対してヤクショは気付かなくてもアポロとサモハンは気付くということが何度かありました。


「雨に踊れば」
上野駅前のマルイシティのショーウインドウの前でダンスをしている二人の女に遭遇します。
こういう光景は他の街でも見ることがあり、夜になると鏡張りの建物の前でダンスの練習をしている人を見たことがあります。
二人はミサリサというダンスチームで、ショートヘアの奥原理沙(リサ)、ドレッドヘアの清水美佐子(ミサ)のコンビです。
調子の良いヤクショがナンパしていましたがあっさりあしらわれていました。

それでも後に四人とミサリサは「福屋」で飲み会をすることになりました。
飲み会の数日後、リサからアポロに電話がかかってきます。
ミサが四日前から姿を消してしまったと言うのです。
ミサは男五人組ダンスグループ「シャングリ・ラ」のリーダー、アキヒロと付き合っていました。
しかし付き合ってしばらくするとアキヒロが暴力を振るうようになります。
ミサは飲み会で天才が言っていた「ぼくたちは明日のためじゃなく、今日のために生きている。今日が楽しくなくちゃ、明日なんてない」という言葉に感銘を受け、自分も勇気を出してアキヒロと別れると言っていたとのことです。
天才は知的障害がありますがたまに凄く良いことを言います。
そして常に「はいっ」と手を挙げて「⚪⚪であります」と軍隊員のように言うのが面白いです。
アポロを隊長、サモハンを副長と呼んでいるのに対してヤクショのことはなぜか二等兵と呼んでいて、そのヤクショとの掛け合いも面白いです。

シャングリ・ラが真夜中に上野恩賜公園で練習をしていることから、四人とリサは話を聞きに行きます。
夜の上野恩賜公園は危ないらしく、女性であるリサはかなり怖がっていました。
私はお花見の時期以外で夜の上野恩賜公園を歩いたことがありますが、そこまでの無法地帯ではなかったと思います。
ただ非常に広い公園なので奥のほうなど場所によっては危険なようです。
やがてシャングリ・ラを見つけて話を聞くと、何とアキヒロも四日前から姿を消していました。
別れようとしたミサがアキヒロによって連れ去られた可能性が高くなりました。


「夏の自警団」
アポロにサモハンから電話が来てご飯を食べに行きます。
サモハンはアポロに「コズミック」という雑貨屋の店長をやってみないかと誘ってきます。
店長の相良浩介が既に60歳を過ぎ子供もいないため、誰か後継者はいないかと探していました。

アメ横では現在、外国人窃盗団による被害が相次いでいます。
どの被害に遭った店でも値打ちのある物だけが盗まれ、しかもかなりの目利きでないと値打ちが分からない物まで盗まれていることから「ハイカラ窃盗団」と呼ばれています。
アメ横に詳しく、かなりの目利きの日本人が手引きしているのではとサモハンは言っていました。
実は「コズミック」の店長、相良からサモハンは「窃盗団を捕まえなくても良いからしばらくアメ横の商店街を守ってほしい、そしてできればコズミックから盗まれた物を取り返してほしい」と頼まれていました。
その結果を見てアポロに店長を任せるか決めるとのことです。
相良と会って話をしてみると、何と相良は手引きをしている犯人に心当たりがありました。


「アメ横ランナバウト」
アポロは「コズミック」で働き始めていました。
こころところこの店がガーディアンメンバーのたまり場になっています。

四人がガーディアン活動を初めて一年になり、再び冬の年末を迎えていました。
その夜のパトロールもいつもと同じことの繰り返しだった。それが一年たって、まだ空しくならないのは、わずかだが誰かのために役立っているという気分のせいかもしれない。
大それたことはしていなくても、ほんの少し誰かのために役立っているという実感があれば、継続する力になると思います。

増井のおじいさんが再び登場します。
増井に「事件の全てを知っている」という人から手紙が来たのです。
増井は初めて事件の核心に迫れるかも知れないという手応えを得ていました。
四人は増井のためにアメ横に事件の情報提供を呼び掛けるチラシを配ることにします。

そんな折、永沢からアポロに電話がかかってきます。
永沢が田畑という事件について何か知っている人を紹介してくれるとのことです。
5年間見つからなかった犯人に少しずつ近づいていました。


上野のアメ屋横丁を舞台に、一話完結型の話で四人の活躍が描かれているのは読みやすくて良かったです。
一話完結型の構成は池袋ウエストゲートパークと同じで、池袋ウエストゲートパークの舞台が上野になり、中心人物達が武闘派ではなくなったという印象です。
そしてこんなガーディアン活動をする人達が飲みの喧騒などで乱れがちな街並を整えるために活動してくれる街は幸せだと思いました。


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