今回ご紹介するのは「珈琲店タレーランの事件簿3 心を乱すブレンドは」(著:岡崎琢磨)です。
-----内容-----
実力派バリスタが集結する関西バリスタ大会に出場した珈琲店「タレーラン」の切間美星は、競技中に起きた異物混入事件に巻き込まれる。
出場者同士が疑心暗鬼に陥る中、付き添いのアオヤマと犯人を突き止めるべく奔走するが、第二、第三の事件が……。
バリスタのプライドをかけた闘いの裏で隠された過去が明らかになっていく。
珈琲は人の心を惑わすのか、癒やすのか―。
美星の名推理が光る!
-----感想-----
「珈琲店タレーランの事件簿」のシリーズ第三弾です。
純喫茶タレーランは京都市内、二条富小路の交差点を少し北上したところにひっそりとあります。
そこでバリスタを務めているのが切間美星。
バリスタとは珈琲を淹れる専門の職人のことです。
タレーランのオーナー兼調理担当を務めるのは藻川又次という老人で、美星の大叔父に当たります。
今作の舞台となるのは「第五回関西バリスタコンペティション」という大会。
第一回大会は全日本コーヒー協会によって定められた「コーヒーの日」に合わせ、10月1日に行われました。
第二回からは毎年11月初旬の週末に京都市内で開かれている食品関連企業の展示会の目玉イベントとして行われるようになったとのこと。
第四回大会である問題が起き、次の年は開催が中止になり、今年が第五回大会となります。
この第五回大会に美星が出場します。
会場となるのは「アーテリープラザ」という大きな施設。
大会は全四種目で二日間に渡って行われ、一日目の午前がエスプレッソ部門、午後がコーヒーカクテル部門、二日目の午前がラテアート部門、午後がドリップ部門です。
各種目における獲得点数をもとに総合成績が決まり、優勝者には賞金50万円が授与され、メディアにも取り上げられることからお店の注目度も上がるとのことです。
大会に出場するのは切間美星、黛(まゆずみ)冴子、石井春夫、苅田(かんだ)俊行、山村あすか、丸底芳人(まるぞこよしと)の6人。
黛冴子は前回大会の覇者です。
しかしその前回大会にはかなり暗い影があり、黛冴子によると色々あって最後には大会そのものがうやむやになってしまったとのことです。
そのせいか前回大会のことはどのメディアもほとんど取り上げず、黛冴子が覇者であることを知っている人も少ないようです。
第四回大会でいったい何が起きたのか、すごく気になりました。
また、かつてこの大会で伝説になったバリスタ、千家諒(りょう)の名前も興味を惹きました。
千家諒は第一回バリスタコンペティションに出場し、初代王者に輝き、さらに第二回と第三回も優勝し、三連覇を達成しています。
この千家諒と、今大会に出場している山村あすかの過去の物語が数ページずつ展開されていて、この二人は今回の物語に強く関わってくるのだろうなと思いました。
そして今大会、次々と”異物混入事件”が起こります。
バリスタの使うコーヒー豆やミルクに異物が混入され、被害に遭ったバリスタはその種目を棄権したり、大幅に評価が下がったりといった目に遭いました。
しかも異物の混入は密室の中で起きており、完全に密室トリック状態です。
さらには二年前の第四回大会でも混入事件があったことが明らかになります。
美星の見立てでは二年前の混入事件が今回の事件の引き金となっている蓋然性は高く、バリスタ達が腕を競い合う華やかな大会のはずが、非常にきな臭い大会になってきました。
注目は三連覇を果たした千家諒が第四回大会にも出場していたこと、しかし第四回大会では優勝していないこと、そして第四回大会でも異物混入事件があったことで、やはり第四回大会で起きたことが大きな鍵になっていました。
私的に興味深かったのがコーヒー豆の「フラットビーン」と「ピーベリー」について。
コーヒー豆は通常、コーヒーノキがつける赤い実ひとつにつき二つの種子、すなわち豆が入っていて、その豆どうしが接する面が平らに近くなり、そういった豆をフラットビーンと言うようです。
それに対し、赤い実にひとつしか豆が入っていない場合は丸みを帯びた形のコーヒー豆になり、それをピーベリーと呼びます。
ピーベリーは成分などの面ではフラットビーンと同じですが、焙煎の際に火が均一に通るため、フラットビーンよりも風味がよくなるとのこと。
収穫量の少なさから希少価値を付与されて取り引きされる場合も多いとのことです。
もうひとつ興味を惹いたのが山村あすかの勤務する「カフェ・ドゥ・ルナール」という店。
ルナールはフランス語できつねとのことで、境内に無数の白狐の像がある伏見稲荷大社の近くにあるため、この店名になったのだろうとのことです。
私は境内に無数の白狐の像がある伏見稲荷大社と聞いて、森見登美彦さんの作品群が思い浮かびました。
どうもその辺りの地名が出てくると森見作品が思い浮かんでしまいます(笑)
そんなわけで印象的なお店でした。
異物混入事件は、最終的に美星によって犯人が暴き出されます。
そしてこの終わり方だと第4巻も出るのだと思います。
第2巻の「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」が第1巻に比べてインパクトを欠いていて、第3巻は大丈夫かなとちょっと心配だったのですが、予想を上回る面白さでした。
早く寝るはずだった昨日の夜、面白かったためどんどん読み進め、予定より寝るのが遅くなったくらいです
第4巻を楽しみに待ちたいと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
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-----内容-----
実力派バリスタが集結する関西バリスタ大会に出場した珈琲店「タレーラン」の切間美星は、競技中に起きた異物混入事件に巻き込まれる。
出場者同士が疑心暗鬼に陥る中、付き添いのアオヤマと犯人を突き止めるべく奔走するが、第二、第三の事件が……。
バリスタのプライドをかけた闘いの裏で隠された過去が明らかになっていく。
珈琲は人の心を惑わすのか、癒やすのか―。
美星の名推理が光る!
-----感想-----
「珈琲店タレーランの事件簿」のシリーズ第三弾です。
純喫茶タレーランは京都市内、二条富小路の交差点を少し北上したところにひっそりとあります。
そこでバリスタを務めているのが切間美星。
バリスタとは珈琲を淹れる専門の職人のことです。
タレーランのオーナー兼調理担当を務めるのは藻川又次という老人で、美星の大叔父に当たります。
今作の舞台となるのは「第五回関西バリスタコンペティション」という大会。
第一回大会は全日本コーヒー協会によって定められた「コーヒーの日」に合わせ、10月1日に行われました。
第二回からは毎年11月初旬の週末に京都市内で開かれている食品関連企業の展示会の目玉イベントとして行われるようになったとのこと。
第四回大会である問題が起き、次の年は開催が中止になり、今年が第五回大会となります。
この第五回大会に美星が出場します。
会場となるのは「アーテリープラザ」という大きな施設。
大会は全四種目で二日間に渡って行われ、一日目の午前がエスプレッソ部門、午後がコーヒーカクテル部門、二日目の午前がラテアート部門、午後がドリップ部門です。
各種目における獲得点数をもとに総合成績が決まり、優勝者には賞金50万円が授与され、メディアにも取り上げられることからお店の注目度も上がるとのことです。
大会に出場するのは切間美星、黛(まゆずみ)冴子、石井春夫、苅田(かんだ)俊行、山村あすか、丸底芳人(まるぞこよしと)の6人。
黛冴子は前回大会の覇者です。
しかしその前回大会にはかなり暗い影があり、黛冴子によると色々あって最後には大会そのものがうやむやになってしまったとのことです。
そのせいか前回大会のことはどのメディアもほとんど取り上げず、黛冴子が覇者であることを知っている人も少ないようです。
第四回大会でいったい何が起きたのか、すごく気になりました。
また、かつてこの大会で伝説になったバリスタ、千家諒(りょう)の名前も興味を惹きました。
千家諒は第一回バリスタコンペティションに出場し、初代王者に輝き、さらに第二回と第三回も優勝し、三連覇を達成しています。
この千家諒と、今大会に出場している山村あすかの過去の物語が数ページずつ展開されていて、この二人は今回の物語に強く関わってくるのだろうなと思いました。
そして今大会、次々と”異物混入事件”が起こります。
バリスタの使うコーヒー豆やミルクに異物が混入され、被害に遭ったバリスタはその種目を棄権したり、大幅に評価が下がったりといった目に遭いました。
しかも異物の混入は密室の中で起きており、完全に密室トリック状態です。
さらには二年前の第四回大会でも混入事件があったことが明らかになります。
美星の見立てでは二年前の混入事件が今回の事件の引き金となっている蓋然性は高く、バリスタ達が腕を競い合う華やかな大会のはずが、非常にきな臭い大会になってきました。
注目は三連覇を果たした千家諒が第四回大会にも出場していたこと、しかし第四回大会では優勝していないこと、そして第四回大会でも異物混入事件があったことで、やはり第四回大会で起きたことが大きな鍵になっていました。
私的に興味深かったのがコーヒー豆の「フラットビーン」と「ピーベリー」について。
コーヒー豆は通常、コーヒーノキがつける赤い実ひとつにつき二つの種子、すなわち豆が入っていて、その豆どうしが接する面が平らに近くなり、そういった豆をフラットビーンと言うようです。
それに対し、赤い実にひとつしか豆が入っていない場合は丸みを帯びた形のコーヒー豆になり、それをピーベリーと呼びます。
ピーベリーは成分などの面ではフラットビーンと同じですが、焙煎の際に火が均一に通るため、フラットビーンよりも風味がよくなるとのこと。
収穫量の少なさから希少価値を付与されて取り引きされる場合も多いとのことです。
もうひとつ興味を惹いたのが山村あすかの勤務する「カフェ・ドゥ・ルナール」という店。
ルナールはフランス語できつねとのことで、境内に無数の白狐の像がある伏見稲荷大社の近くにあるため、この店名になったのだろうとのことです。
私は境内に無数の白狐の像がある伏見稲荷大社と聞いて、森見登美彦さんの作品群が思い浮かびました。
どうもその辺りの地名が出てくると森見作品が思い浮かんでしまいます(笑)
そんなわけで印象的なお店でした。
異物混入事件は、最終的に美星によって犯人が暴き出されます。
そしてこの終わり方だと第4巻も出るのだと思います。
第2巻の「珈琲店タレーランの事件簿2 彼女はカフェオレの夢を見る」が第1巻に比べてインパクトを欠いていて、第3巻は大丈夫かなとちょっと心配だったのですが、予想を上回る面白さでした。
早く寝るはずだった昨日の夜、面白かったためどんどん読み進め、予定より寝るのが遅くなったくらいです
第4巻を楽しみに待ちたいと思います
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