(コンサートで歌唱する左から菅原りこさん、辰巳真理恵さん)
8月21日、東京都中央区築地のライブハウス「BLUE MOOD」で「辰巳真理恵 菅原りこ 追川礼章 SPECIAL CONCERT」が開催されました。
コンサートは今年1月に上演された舞台「『Mogut(モグー)』~ハリネズミホテルへようこそ~」で女優・タレントの菅原りこさんと俳優の辰巳琢郎さんが共演し、その娘さんでソプラノ歌手の辰巳真理恵さんと知り合って交流が生まれ、辰巳真理恵さんによって企画されました。
新型コロナ対策で限定席数での会場席とネットのライブ配信があり、私はライブ配信で聴きました
辰巳真理恵さんは音楽大学で声楽を学んだプロのソプラノ歌手で、ピアニストの追川礼章さんとクラシックコンサートを開催することがよくあるようです。
菅原りこさんは女優・タレントになる前は新潟県を本拠地とするアイドルグループNGT48で活動しておられ、その歌唱力は
「高い」と評判を得ていました。
女優・タレントに転身後にコンサートで歌を披露するのはこの日が初めてで、ご本人も意欲を持っている「歌手活動」へのデビューとなりました
第一部
1.AKB48:虫のバラード
アイドルグループAKB48の楽曲「虫のバラード」の、追川礼章さんによるピアノソロで始まりました。
菅原りこさんもかつて歌唱したことがあり印象深いオープニングとなりました。
ピアノは儚さ、誇り高さ、力強さなどが音色から溢れていて上手い演奏だと思いました。
2.シン・エヴァンゲリオン劇場版より:Beautiful World
虫のバラードの終わり際に辰巳真理恵さんと菅原りこさんが登場し、間髪入れずに2曲目が始まり、ピアノが全く違う世界観に即座に対応していて流石だと思いました。
辰巳真理恵さんは赤のドレス、菅原りこさんはピンクのドレスで、まさにクラシックコンサートの雰囲気だと思いました
「もしも願い一つだけ叶うなら 君のそばで眠らせて」という、辰巳真理恵さんの物悲しい雰囲気のソロで歌唱が始まります。
そこから一気に高音になって歌う時、美しさとともに消え入りそうな儚さが強く表現されていて、かなり上手いと思いました
菅原りこさんも「もしも願い一つだけ叶うなら 君のそばで眠らせて」とソロで歌い、こちらは同じ歌詞でも表現を変え、「君のそばに居たい」という思いを前に出した歌い方に聴こえました。
ゆったりとした歌い方の中に思いの熱がこもっているのが感じられ、こちらも上手いと思いました
そこから二人が交互に歌いながらスピードも上がり盛り上がって行きました。
さらに二人同時での歌唱になり盛り上がりの頂点に来た時、追川礼章さんのピアノを弾きながらの「男声」も入ってきて驚きました。
三人でのハーモニーは音の層の厚さを感じました。
最後は辰巳真理恵さんと追川礼章さんのハーモニーを菅原りこさんが引き取る形での歌唱が繰り返され、しっとりと終わりました。
トークでは辰巳真理恵さんによる出演者のご紹介がありました。
しかし自身への言及を忘れて次の話題に行ってしまい、追川礼章さんに「自身の紹介がまだ」とフォローされていました
追川礼章さんは若くして非常に落ち着いていて、トークが暴走気味のお二人を様々な場面でフォローしていました。
3.絢香:にじいろ
NHK朝の連続テレビ小説「花子とアン」の主題歌で、菅原りこさんが歌いました。
菅原りこさんの歌唱は一つ一つの音の発声がはっきりしているのが印象的で、益々実力が上がっているように思いました。
「優しく、弾むように、さらにはフワフワと」といった雰囲気の歌い方になった場面もあり、表現力が豊かだと思いました。
4.オッフェンバック:オペラ ホフマン物語より 生垣には小鳥たち
「人形の歌」とも呼ばれているぜんまい仕掛けの人形のオペラで、辰巳真理恵さんが歌いました。
まさにソプラノ歌手という歌い方で、時にコミコルにも歌っていて非常に上手かったです。
辰巳真理恵さんは腹の底から声が出ているのがよく分かり、どっしりとした大樹のような響きだと思いました
歌唱時にカクカクとした特徴的な動きをしていたのは、ぜんまい人形を表現していました。
終盤、ぜんまいが切れて動かなくなったところを菅原りこさんがぜんまいを巻いてもう一度動かす演出がありました。
ぜんまいが切れる瞬間の、エコーがか細くなっていくような歌い方も秀逸だと思いました。
5.大原櫻子:瞳
第93回全国高校サッカー選手権大会の応援歌で、菅原りこさんが歌いました。
ゆったりとした安らぐ音色で、音程もバッチリ取れていて上手かったです。
情感もたっぷりでした。
「涙だって 笑顔だって がむしゃになった証だよ」の「がむしゃら」の部分を歌った時、それまでの綺麗な歌唱を維持しながらがむしゃらさも出ていて特に良かったです。
トークは菅原りこさんのキャッチフレーズについてでした。
「さくらんぼの妖精」というキャッチフレーズを持っていますが、ご本人が携帯電話で今のキャッチフレーズは何なのかを「診断メーカー(名前を入力すると自動で診断してくれる)」で調べたところ、「今世紀最大の謎」と出てきたとのことでした。
実際に謎エピソードがたくさんあるという話になり、追川礼章さんが持ってきた「どら焼きシフォン」の差し入れのうち、「こっちがこしあん、こっちがあんず」と説明があり、「こしあんが良い」と言って取ったのがあんずだったとのことです
しかしトークの雰囲気から二人に愛されているのがよく分かり嬉しかったです
また、最後に辰巳真理恵さんから今年はピアソラの生誕100周年で、2曲続けてピアソラの曲をお送りするとご紹介がありました。
6.ピアソラ:オブリビオン
日本語で「忘却」という意味で、辰巳真理恵さんが歌いました。
別れた恋人を忘れるといった意味合いの歌と言っていたとおり、悲しそうな雰囲気で始まり、冒頭から上手さを感じました。
高音の響きが良く、
音が伸びながら広がって行くのが印象的でした。
また辰巳真理恵さんは一貫してマイクをかなり遠い位置に置いていて、声楽の奏者がクラシックコンサートに登場する時はマイクなしで歌う場合が大半でもあり、おそらくなしでも全く問題ないのではと思います。
7.ピアソラ:リベルタンゴ
追川礼章さんのピアノソロでした。
「このピアノは電子ピアノ」と紹介がありましたが、音が電子ではないピアノに近い印象があり、かなり良い電子ピアノなのではと思いました。
演奏はやはり上手く、情熱の音色に聴き入りました。
低音部の演奏で情熱の雰囲気を出しながらの、高音部の躍動するような響きが良いなと思いました。
終盤は物凄い速さの演奏になっていました
第二部
第二部は辰巳真理恵さん、菅原りこさんともに衣装を替えて登場しました。
カジュアルなドレスになり、第一部よりもアクティブなステージになることが予感されました。
冒頭から一気に4曲続けてジブリ映画のメドレーとなりました
8.魔女の宅急便より:やさしさに包まれたなら
辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌い、とても爽やかな歌で、聴いていると気持ちも爽やかになりました
菅原りこさんがメインメロディを歌い辰巳真理恵さんが「ルー」とハモっていた時の、
爽やかさの中に神秘さも感じる音色が特に良かったです。
9.ゲド戦記より:テルーの唄
菅原りこさんが歌い、冒頭アカペラで始まり、やがてピアノも入って行きました。
物悲しそうに歌い上げていて上手かったです。
まるで自身が作品世界の中に佇んで歌っているように聴こえ、まだ20歳の若さで高い表現力を持っているのはここに由来する気がしました。
10.千と千尋の神隠しより:いつも何度でも
辰巳真理恵さんが歌い、とても安らかな音色で上手かったです。
気持ちも休まる歌声でした。
ソプラノ歌手ということで高音で歌っている時の声に注目しがちですが、そこよりも低めの音での歌声もかなり上手いと思いました
11.天空の城ラピュタより:君をのせて
辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌い、冒頭の辰巳真理恵さんのソロが
寂し気でなおかつ気高さも感じる音色で一気に引き込まれました。
そこからの菅原りこさんメインメロディ、辰巳真理恵さん低音でのハモりの場面も厚みのある音から冒険のワクワク感が感じられて良かったです
トークは好きなジブリアニメについてでした。
菅原りこさんは「ハウルの動く城」、追川礼章さんは「となりのトトロ」、辰巳真理恵さんは「千と千尋の神隠し」が好きとのことでした。
再びトークが暴走気味で、辰巳真理恵さんがリードしていましたが次の曲のピアノソロを忘れて2曲先に行きそうになっていました。
ここでも追川礼章さんがフォローに入り、「プリンス」というニックネームで呼ばれていますがステージ上での落ち着いた振る舞いはまさにプリンスだと思いました
12.千と千尋の神隠しより:あの夏へ(いのちの名前)
追川礼章さんのピアノソロでした。
トークの曲紹介の時に「夏の終わりのわびしさ、寂しさを感じる曲」と言っていて、まさにその通りな音色でした。
ゆったりと始まり、音がとてもしっとりとしていました
そのしっとりさこそ夏の終わりに感じる寂しさそのものだと思いました。
ゆったりとした中でこちらに迫ってくるような迫力を感じる音と、遠ざかって行くような儚げな音に分かれていて、それも夏の終わりの、猛暑だけでなく初秋の陽気の日が出始める頃に通じるものがあると思いました。
情感もたっぷりでとても上手かったです
トークはこの後4曲続けるアニメの歌についてでした。
辰巳真理恵さんが「本日は歌のコンサートだが、「檄!帝国華撃団」を歌う時に菅原りこさんにダンスを披露してもらうことにした」と言っていて興味深かったです。
13.ソードアート・オンラインより:ANIMA
菅原りこさんが歌い、力強くスピーディーな歌い出しが印象的でした。
今までの曲と声質を変えていて、ワイルドで男性的な力強さをも感じる歌声になっていて上手いと思いました。
素晴らしい表現力だと思います
14.世界名作劇場 ロミオの青い空より:空へ
辰巳真理恵さんが歌い、この歌は聴いたことがありました。
幼少期にアニメを見たことがあるのを思い出しました。
かなり上手く、儚げな雰囲気が良かったです。
超高音で歌った場面は音色から感じるものが儚さから
「美しさ、澄んだ雰囲気」へと変わり、その雰囲気はまさに青空だと思いました。
15.美少女戦士セーラームーンより:ムーンライト
辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌いました。
お客さんの手拍子の中で歌っていてノリノリな雰囲気でした
音楽の原点「楽しさ」を思い出させてくれる明るい歌唱も印象的で、「月の光に導かれ」というフレーズを二人でハモった時の楽しい雰囲気が特に良かったです。
それを引き取る形で演奏されたピアノの少しミステリアスな響きもかなり良かったです
16.サクラ大戦より:檄!帝国華撃団
辰巳真理恵さんが歌い、菅原りこさんがダンスで盛り上げました。
曲調にモダンな雰囲気があり独特な楽しさがありました。
この曲もお客さんの手拍子の中でノリノリで歌い、会場の雰囲気が最高に良かったです
トークで3人が「足を運んで頂いた皆さん、配信をご覧の皆さんありがとうございました」と挨拶していました。
次が最後の曲とのことで、映画「鬼滅の刃 無限列車編より「炎(ほむら)」」と紹介がありました。
17.鬼滅の刃 無限列車編より:炎
辰巳真理恵さんと菅原りこさんで歌いました。
三人それぞれキャラクターの羽織りものを羽織り、辰巳真理恵さんは竈門禰󠄀豆子(かまどねずこ)、菅原りこさんは胡蝶しのぶ、追川礼章さんは竈門炭治郎(たんじろう)でした。
やや悲しそうな歌い出しから次第に盛り上がって行き、ドラマチックな雰囲気になるのが良かったです
アンコール
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?より:瑠璃色の地球
ゆったりとした安らぐ音色の曲で、アンコールに合っていると思いました。
高音のハモりが特に良く、安らぎが増して行きました
コンサートを聴いて、歌手活動デビューということで気になっていた菅原りこさんは、この先超一流のポップス歌手になれる人だと思いました。
歌唱力、人を引き付ける魅力ともにあり、文句なしの逸材です。
所属しているエイベックスは歌に強いイメージもあり、歌手として老若男女問わず国民全般に広く名を轟かせる日が来ることを期待します。
コンサートのチラシに「さくらんぼ」がたくさん描かれているのは、菅原りこさんがアイドル時代に「さくらんぼの妖精」と呼ばれ、女優・タレントになった現在もさくらんぼがトレードマークな事に由来すると思います。
なので私はチラシを見て、辰巳真理恵さんの菅原りこさんへの配慮の手厚さに驚きました。
「ゲスト出演して手伝って頂く」とは全く違い、
歌唱経験に差があっても一人の歌手として尊重し、対等に扱って頂いているのが分かりました。
度量の大きな人だと思いました。
そして菅原りこさんには貴重なご縁をこれからもぜひ大事にしてほしいと思いました
私は菅原りこさんの歌手活動デビューが、プロのソプラノ歌手辰巳真理恵さんとの共演になって良かったと思いました。
この先歌唱分野での活躍も目指しているご本人にとって、得るものがかなりあったのではと思います。
また今回のコンサートを聴いて、辰巳真理恵さん、菅原りこさん、追川礼章さんによる編成は息も合っていて良い編成だと思いました。
またいつか3人でのコンサートを聴けたら嬉しいです
-------------------------
演奏者プロフィール
ソプラノ 辰巳真理恵
東京音楽大学卒業、同大学院及び二期会オペラ研修所修了。
東京二期会や東京オペラ・プロデュースなどのオペラにも数多く出演し、「第九」等でもソリストを務める。
CD「Ba,Be,Bi,Bo,Bu」他をキングレコードよりリリース。
八王子FM「辰巳真理恵のBa,Be,Bi,Bo,Bu」にてパーソナリティを務め好評。
10/23にはサントリーホールブルーローズにて、3回目となるリサイタルを開催予定。
女優・タレント 菅原りこ
新潟県出身の20歳。
2015年7月NGT48の第1期生として最終審査に合格し2017年デビュー。
デビューシングルでは、表題曲選抜メンバーに選出された。
2019年NGT48を卒業し、エイベックスに所属。
現在は、女優・タレントとして舞台やテレビなど様々なジャンルで活躍中。
ピアノ 追川礼章
1994年生まれ。
埼玉県立浦和高等学校卒業後、東京藝術大学楽理科を経て同大学大学院ソルフェージュ科を修了。
テレビ朝日《題名のない音楽会》、BS-TBS《日本名曲アルバム》等にピアニストとして出演。
現在は国内外の有名アーティストと全国的にコンサートを行い、年間公演数は100を超える。
これまでに編曲&ピアノで参加したCDの多くがメジャーレーベルから発売されている。
-------------------------
-----菅原りこさん出演作品の感想記事-----
「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」三谷幸喜
「PERSONA5 the Stage #3」(主演:猪野広樹)
-----関連記事-----
「山口真帆 1st写真集 present」
「DIVER-特殊潜入班- 第二話」
「ショコラの魔法」(主演:山口真帆)
「長谷川玲奈 1st写真集 一瞬の光」
「海辺の街でもう一度、あの日の彼女に会えたなら 〜Diary〜」
「海辺の街でもう一度、あの日の彼女に会えたなら 〜Hanabi〜」
※「コンサート、演奏会記事一覧」をご覧になる方は
こちらをどうぞ。