今回ご紹介するのは「神様のカルテ3」(著:夏川草介)です。
-----内容-----
「医者をなめてるんじゃない?
自己満足で患者のそばにいるなんて、信じられない偽善者よ」
青年医師・栗原一止(いちと)に訪れた、最大の転機!
映画も大ヒットの超ベストセラーシリーズ、2年ぶりの最新作!
-----感想-----
この作品は「神様のカルテ」シリーズの第3作目になります。
※1作目のレビューはこちらをどうぞ。
※2作目のレビューはこちらをどうぞ。
「最大の転機」というだけあって、今作は激動の展開でした。
そしてシリーズの最高傑作だったと思います。
まずは内容欄にある
「医者をなめてるんじゃない?自己満足で患者のそばにいるなんて、信じられない偽善者よ」
という言葉。
一止が勤める信州長野県、松本市の「本庄病院」に新しく赴任してきた消化器内科の女医、小幡奈美先生によるものです。
この小幡先生、12年目になるベテランの医師で、かつては一止の師である大狸先生(タヌキみたいな人なので一止はこう呼んでいます)に師事していたとのこと。
いわば一止にとって姉弟子に当たる先生です。
この小幡先生、当初は「ベテランで、気さくで、人当たりがよくて、おまけに美人」ということで、医師からも看護師からも好評でした。
歓迎会の宴席でも「お互い、信州のゴッドハンドの弟子同士というわけ。よろしくね、栗原先生」と気さくに一止に話しかけていました。
しかし、その評判に次第に不穏なものが混じるように。。。
主任看護師の東西直美さん曰く、
「なんて言えばいいのか……、そう、顔は笑っているのに、目は笑っていない感じ。気さくなはずなのに、一瞬近づきがたくなる感じ……」とのことです。
また看護師達を束ねる看護師長の外村(とむら)さんは、一止が小幡先生について
「小幡先生なら、仕事もできて快活な人ですし、看護師たちも働きやすいんじゃないですか?」
と問うた時、
「先生って意外に人を見る目ないわよね」
と意味深なことを言っていました。
そして患者達に対する診察でも、普段は隙のない完璧な処置をするのに、「アルコール依存性」の患者に対しては妙に冷たい扱いをするなど、次第に「時として冷酷になる」という問題点が見えてきます。
やがてその冷酷さが元で起きたある事件をきっかけに一止と、一止と同期で外科医の砂山次郎先生で小幡先生のもとに説明を求めに行くのですが…
そこで飛び出すのが、内容欄にあるような激烈な言葉です。
「私、栗原君には失望したのよ」
「バカじゃないかと思ってるわ」
当初の印象とは全く違う、真の姿。
小幡先生は「医者としての最新医療の研究、修得」を第一に考えていて、「医者としての良心」を第一に考える一止や砂山先生とは対極にいる人でした。
そこには「医師」というものに対する哲学の差がはっきりと出ていて、こればかりは話し合ったところでどうにもなりません。
「わかるでしょ。栗原君と私では、目的としている世界が違うのよ。そういう人に、私のやり方を理解することはできないわ」
冷たく言い放つ小幡先生に、一止は答える言葉もありません。
最強の修羅のような医者である小幡先生が示す哲学とどう向き合っていくのか、今作ではこれが大きなテーマだったと思います。
一見すると小幡先生が極悪な医者のようにも見えますが、「最新医療の追求」は医者としてとても大事なことであり、間違っているわけではありません。
日々進歩していく最新医療のおかげで救われる命もたくさんあるからです。
なので「最新医療の追求」VS「医者の良心」という哲学の激突は非常に興味深かったです。
そして今作で面白かったのが、一止を取り巻く女性看護師達の言葉。
救急部看護師長の外村さんなどはかなり存在感があって良い味を出していました
この外村さん、よく病院の外にある河原で「フィリップモリス」なる煙草をくゆらせているのですが、そこに一止が出くわし、軽く話すことがよくあります。
ここでの軽妙なやり取りが面白いです。
「なんにも聞かされていないの?」
「なんにも、という訳ではないですが、本人が秘密だと言って話しません」
「バカね……」
「全くです。ひとりで悩んでいるくらいなら、話してくれれば…」
「バカって言ったのは先生のことよ」
「女に、秘密だって言われた時は、意地でも聞きだす努力をするのが男の仕事よ」
「矛盾に満ちた注文ですが…」
「山ほど小説読んでるわりに、女心がまったくわかってないのね、先生は」
これとか、なかなか面白いやり取りでした^^
こういう軽妙なやり取りがよく見られたのも今作の特徴でした。
最強修羅の女医が大いに暴れる今作において、思わず笑ってしまうような場面がたくさんあるのは良かったです。
まあ最強修羅さんのほうも結構笑える言動があったりもするのですが、いかんせん棘がありまくりなのが難点ですね
私的には、「神様のカルテ」シリーズでは今作が一番面白かったなと思います。
シリアスさといい、随所に見られる軽妙なやり取りといい、全てにおいて充実していました。
もしさらに続編が出るようであれば、そちらもぜひ読んでみたいと思います
※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。
-----内容-----
「医者をなめてるんじゃない?
自己満足で患者のそばにいるなんて、信じられない偽善者よ」
青年医師・栗原一止(いちと)に訪れた、最大の転機!
映画も大ヒットの超ベストセラーシリーズ、2年ぶりの最新作!
-----感想-----
この作品は「神様のカルテ」シリーズの第3作目になります。
※1作目のレビューはこちらをどうぞ。
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「最大の転機」というだけあって、今作は激動の展開でした。
そしてシリーズの最高傑作だったと思います。
まずは内容欄にある
「医者をなめてるんじゃない?自己満足で患者のそばにいるなんて、信じられない偽善者よ」
という言葉。
一止が勤める信州長野県、松本市の「本庄病院」に新しく赴任してきた消化器内科の女医、小幡奈美先生によるものです。
この小幡先生、12年目になるベテランの医師で、かつては一止の師である大狸先生(タヌキみたいな人なので一止はこう呼んでいます)に師事していたとのこと。
いわば一止にとって姉弟子に当たる先生です。
この小幡先生、当初は「ベテランで、気さくで、人当たりがよくて、おまけに美人」ということで、医師からも看護師からも好評でした。
歓迎会の宴席でも「お互い、信州のゴッドハンドの弟子同士というわけ。よろしくね、栗原先生」と気さくに一止に話しかけていました。
しかし、その評判に次第に不穏なものが混じるように。。。
主任看護師の東西直美さん曰く、
「なんて言えばいいのか……、そう、顔は笑っているのに、目は笑っていない感じ。気さくなはずなのに、一瞬近づきがたくなる感じ……」とのことです。
また看護師達を束ねる看護師長の外村(とむら)さんは、一止が小幡先生について
「小幡先生なら、仕事もできて快活な人ですし、看護師たちも働きやすいんじゃないですか?」
と問うた時、
「先生って意外に人を見る目ないわよね」
と意味深なことを言っていました。
そして患者達に対する診察でも、普段は隙のない完璧な処置をするのに、「アルコール依存性」の患者に対しては妙に冷たい扱いをするなど、次第に「時として冷酷になる」という問題点が見えてきます。
やがてその冷酷さが元で起きたある事件をきっかけに一止と、一止と同期で外科医の砂山次郎先生で小幡先生のもとに説明を求めに行くのですが…
そこで飛び出すのが、内容欄にあるような激烈な言葉です。
「私、栗原君には失望したのよ」
「バカじゃないかと思ってるわ」
当初の印象とは全く違う、真の姿。
小幡先生は「医者としての最新医療の研究、修得」を第一に考えていて、「医者としての良心」を第一に考える一止や砂山先生とは対極にいる人でした。
そこには「医師」というものに対する哲学の差がはっきりと出ていて、こればかりは話し合ったところでどうにもなりません。
「わかるでしょ。栗原君と私では、目的としている世界が違うのよ。そういう人に、私のやり方を理解することはできないわ」
冷たく言い放つ小幡先生に、一止は答える言葉もありません。
最強の修羅のような医者である小幡先生が示す哲学とどう向き合っていくのか、今作ではこれが大きなテーマだったと思います。
一見すると小幡先生が極悪な医者のようにも見えますが、「最新医療の追求」は医者としてとても大事なことであり、間違っているわけではありません。
日々進歩していく最新医療のおかげで救われる命もたくさんあるからです。
なので「最新医療の追求」VS「医者の良心」という哲学の激突は非常に興味深かったです。
そして今作で面白かったのが、一止を取り巻く女性看護師達の言葉。
救急部看護師長の外村さんなどはかなり存在感があって良い味を出していました
この外村さん、よく病院の外にある河原で「フィリップモリス」なる煙草をくゆらせているのですが、そこに一止が出くわし、軽く話すことがよくあります。
ここでの軽妙なやり取りが面白いです。
「なんにも聞かされていないの?」
「なんにも、という訳ではないですが、本人が秘密だと言って話しません」
「バカね……」
「全くです。ひとりで悩んでいるくらいなら、話してくれれば…」
「バカって言ったのは先生のことよ」
「女に、秘密だって言われた時は、意地でも聞きだす努力をするのが男の仕事よ」
「矛盾に満ちた注文ですが…」
「山ほど小説読んでるわりに、女心がまったくわかってないのね、先生は」
これとか、なかなか面白いやり取りでした^^
こういう軽妙なやり取りがよく見られたのも今作の特徴でした。
最強修羅の女医が大いに暴れる今作において、思わず笑ってしまうような場面がたくさんあるのは良かったです。
まあ最強修羅さんのほうも結構笑える言動があったりもするのですが、いかんせん棘がありまくりなのが難点ですね
私的には、「神様のカルテ」シリーズでは今作が一番面白かったなと思います。
シリアスさといい、随所に見られる軽妙なやり取りといい、全てにおいて充実していました。
もしさらに続編が出るようであれば、そちらもぜひ読んでみたいと思います
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