読書日和

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夏の終わりと秋の訪れ

2020-09-20 09:35:35 | ウェブ日記
9月も後半を迎え、最近は朝晩目に見えて涼しくなりました。
朝起きて窓を開けた時に入って来る空気が印象的で、真夏の時期は外の空気を入れつつ冷房もつけていたのが、昨日や今日は外から入って来る空気の涼しさだけで快適に過ごせました
最高気温も真夏日(30度以上)にならない日が続くようになり、すっかり秋だなと思います。
空にも秋らしく薄い雲が高い位置に出るようになりました。

6月下旬に今年初めて聞こえたニイニイゼミの小さな鳴き声も、7月30日の中国地方梅雨明けの日、それまでより遥かにたくさん鳴いたクマゼミの鳴き声も、今ではすっかり聞こえなくなりました。
かろうじて鳴いているツクツクボウシも数は少なく、鳴き声も心なしか元気がないように聞こえます。
既に空は秋色で最高気温も下がって来ているため、「夏の名残りの最後」のようにも見え寂しく感じます。

8月の半ば頃から目立つようになった秋の虫の鳴き声は今、爽やかになった空気に乗り朝晩をより涼しく感じさせてくれています。
そんな秋の虫も10月になり寒さが目立つようになると一気に数が減ってくるので、鳴き声のピークは初秋の9月のうちなのではと思います。
たくさん鳴き声が聞こえる期間もあと少しと思うとセミと同じで寂しく感じ、それと同時に本格化する秋を意識します。

今年は十五夜が10月1日、十三夜が10月29日で、どちらも10月にあります。
その頃には今よりさらに空気も澄んで、晴れればとても綺麗な月が見られると思います
そして中国地方も十三夜の頃には紅葉が見られるようになっていると思います
秋の虫、綺麗な月、紅葉と魅了されているうちにどんどん秋は進んで行くのだなと思います。
はっきりと顔を現した「秋」の進みに置いて行かれないように、しっかり付いて行きながら楽しみたいと思います

「長谷川玲奈 1st写真集 一瞬の光」

2020-09-13 19:28:33 | ウェブ日記


今回ご紹介するのは「長谷川玲奈 1st写真集 一瞬の光」(著:長谷川玲奈)です。

-----内容-----
アイドル活動を経てアニメ・ゲーム・外画の吹き替え等で活躍中の新人声優・長谷川玲奈初めての写真集。
光のように過ぎ去る10代。
非凡なる光をまとい、表舞台を走り切った彼女は今、新たな艶を帯び一段と彩光を増す。
10代最後の一瞬を焼き付けた400枚の永遠がここに。

-----感想-----
一般的に長谷川玲奈さんという名前を聞いて、どんな人物かすぐに分かる人はまだ多くはないのが実情ではと思います。
長谷川玲奈さんは、昨年1~5月にかけて大々的にテレビなどでも取り上げられ世間の注目を集めた、新潟を拠点とするアイドルグループNGT48の山口真帆さん暴行事件において、一貫して山口真帆さんに味方し、暴行事件を山口真帆さんのせいにしたい人達と戦ってくれた人です。
最終的に、被害者でありながら半ば追い出される形でグループを卒業することになった山口真帆さんとの友情・義を貫き、自らのアイドル生命が絶たれることになっても一緒に卒業する道を選びました。


(2019年5月18日の卒業公演後、三人で手をつなぐ左から長谷川玲奈さん、山口真帆さん、菅原りこさん。
アイドルとして最後の日でした。)

舞台「罪のない嘘 ~毎日がエイプリルフール~」の感想記事で同様のことを書いた時、菅原りこさんについて「義に厚い戦国大名上杉謙信が思い浮かぶくらい大変感銘を受けた」と書きましたが、”越後の龍”上杉謙信はもう一人居て、それが長谷川玲奈さんです。
グループ卒業後はクロコダイルという声優事務所に移籍し、アイドルから声優に転身して活動することになりました。


(抱き締め合う左から長谷川玲奈さん、山口真帆さん、菅原りこさん。
この姿に並々ならぬものを感じました。)

まるで上杉謙信のような立ち居振る舞いがとても印象的だったことから、私は長谷川玲奈さんという人個人にも興味を持ちました。
そして今回初の写真集が発売されることになり、元々モデル適性も高い気がしていたのでこれはぜひ見てみようと思いました


写真集全体の印象
長谷川玲奈さんの見せる表情がとても豊かです
天真爛漫な印象で、どの表情にも魅力があります。
写真集には「一瞬の光」というタイトルが付いていますが、その中でさらに「Ivory Light(白系色の光)」と「Ebony Light(黒系色の光)」があります。
撮る写真のテーマごとに章になっていて、それぞれの章が「Ivory Light」か「Ebony Light」の写真で形作られるという凝った作りになっています。


Ivory Light last summer(morning sea)
朝の海をテーマにした章で、白のタンクトップにブルーのデニムショートパンツという衣装です。
冒頭の砂浜で座って遠くを見ている写真が良かったです
髪を後ろに流していて、前髪も同じように流し、そうすると爽やかさと凛々しさを併せ持ったかなり格好良い雰囲気になり、その姿に希望も感じました。
この章では白のシースルーの羽織ものを羽織っている写真もあります。

浜辺での写真が次々登場し、打ち寄せてきた波を蹴ったりもしてとても躍動感がありました。
何より本人が明るく楽しそうで見ているこちらも楽しくなります

浜辺での写真の最後、唐突にしっとりとした雰囲気になるのが印象的でした。
横からの構図で、体育座り(三角座り)で顔をこちらに向けていました。
それまでの無邪気さから一転し、大人の雰囲気が顔を覗かせたように見えました。


Ivory Light last summer(riverside)
水の傍をテーマにした章で、白のタイトスカート、ベージュのキャミソール、白のシャツという衣装でした。
長谷川玲奈さんは脚が長くて美脚という特徴があり、1枚目の鉄塔をバックにすらりと立っている全身写真の脚の長さが際立っていました


(昨年7月、ホテルのロビーにある椅子に座って微笑む長谷川玲奈さん。
この時にとても美脚だなと思いました。)

衣装コーディネイトがかなり似合っていて、スカート、キャミソール、シャツともに目立つ模様や刺繍などもなくシンプルでしたが、そのシンプルさが知的な雰囲気を醸し出していました。
こういったコーディネイトは長谷川玲奈さんのモデル適性の高さがあるから引き立つのではと思います

時折見せるはにかんだ笑顔が良かったです。
田んぼで帽子を被ってしゃがんでいる写真のくしゃっとした笑顔も良く、無邪気さを感じました。
また、アスファルトにできた水溜まりにしゃがみ込む写真には本人も水に心を寄せているような穏やかさを感じました。


Ivory Light last summer(white night)
冒頭の写真集表紙の写真と同じ衣装で、白キャミソールで髪をカジュアルなお団子にしています。
1枚目のナチュラルな笑顔が良く、明るく平和的な印象を受けました。

左手をつっかえにしてこちらを見て穏やかに頬笑む写真も良く、アーモンド形の目に引き込まれました
穏やかな笑顔がとても優しい雰囲気の人だと思います。
思いっきり笑っている写真もあり、屈託がなくて無邪気で良いなと思いました。
他にもはにかんだ笑顔、いたずらっぽい笑顔などもあり、笑顔が印象的でバリエーション豊かで天真爛漫さがあります。
そして時折見せる胸に秘めたものがありそうな表情も良かったです。


Ivory Light last summer(appointed day)
真っ白なドレスを着ていて、ウエディングドレスのようにも見えかなり似合っていました
「撮影協力」に名前の載っている新潟県胎内市(長谷川玲奈さんの出身地)の「ロイヤル胎内パークホテル」での撮影で、写真集表紙の写真の髪型に小さな可愛らしいティアラ(冠)を載せていました。


(ガオーッのポーズをする長谷川玲奈さん。ドレス姿でこの椅子に座っている写真もありました。)

新緑のもみじの木の下にたたずむ写真が良かったです。
黄緑色のもみじの葉が日差しを浴びて輝き、白のドレス姿の長谷川玲奈さんに高潔感がありました

田んぼをバックにトラックの荷台に立つ写真も良かったです。
微笑みながら前方を指差していて、田んぼ、トラックとドレスの組み合わせがシュールでした。
前方を指差すような躍動感のあるポーズは、天真爛漫さのある長谷川玲奈さんによく似合うと思います。

トラックの番号が「れ 03‐15」で長谷川玲奈さんの名前と誕生日(3月15日)になっているのが面白かったです。
とうもろこしを食べながらはにかんでこちらを見る写真も良く、いたずらっぽい雰囲気が出ていました。


Ivory Light last summer(private secrets)
新潟県胎内市にあるJR中条駅を中心に撮影していて、高校の制服の衣装でした。
白の半袖シャツにグレーのスカートで、かなり似合っていて昨年の春先まで高校生だったので違和感がないです。
髪型は学生らしくシンプルに後ろで一つに結んでいて、スクールバッグを大きく振りながら歩く様子はまさに活発な少女でした。

1枚目の写真が良く、正面からの構図で左肩にスクールバッグがあり、右手で押えそこに左手を添えていて、駅を歩く女子高生の姿です。
長谷川玲奈さんが持つ雰囲気によって、その姿には威風堂々や清心という言葉が思い浮かびました

最後のページの写真は夜の神社と思われ、灯籠のオレンジ色の光を浴びていました。
スクールバッグを両手で前に持ちこちらを見ている写真には今を精一杯生きる人がふとした時に見せる静寂の心を感じました。
両手で頬杖をついて物思いに耽っている写真もあり、学校帰りにはそうしたい日もあると思います。


Ebony Light next summer(old light)
神社での撮影で、赤いショート丈のワンピースと赤いヒール姿で、髪は下ろしていてワンレングス(パッツンと同じ長さに揃える)のストレートになっていました。
神社の緑色の草木や焦げ茶色の木の幹、苔むした階段の中にあって赤色はとても目立っていました。
あまりに周囲と違う色に一瞬合成ではと思うほどで、しかし間違いなくそこに存在しています。
そしてこれが構成の狙いだと思いました。
静謐な神社の雰囲気の中にあって、非現実的な雰囲気の長谷川玲奈さんに強烈に引きつけられます。

神社に向かって階段を上りながらの見返り美人の写真が良く、クールビューティーな雰囲気でした。
もう一枚印象的な見返り美人の写真があり、そちらは目に情感が宿り何かを言おうとしているように見えました。
神社で手を合わせる写真も良く、横からの構図でこちらを向いて軽く微笑んでいて、とても神聖で品があると思いました。
神聖さや品とは違うタイプの衣装でも写真を見る人にそう思わせるのは凄いことで、本人が持つ素養です


(今年6月にツイッターにアップされた、美容室で髪を切った時の写真。
品があると思います


Ivory&Ebony Light this summer(vacation)
家で夏休みをくつろいで過ごすのを中心にした章です。
白のノースリーブタンクトップに猫の柄入りのピンクのショートパンツという衣装で、髪はトップをお団子にしてそれ以外は下ろし、サイドにはウェーブがかかっていました。


(長谷川玲奈さんの写真集PR公式ツイッターの写真。
うちわを持ち、この写真にも夏休みの雰囲気があります

1枚目の写真に驚き、まるで別人のような表情で上品なギャルという言葉が思い浮かびました
とても大人びて見え、こんな表情もできるのかと思いました。

かき氷器でかき氷を作って食べていく様子の写真がたくさんあり、かなり楽しそうで見ている方も楽しくなりました
見開き2ページで寝そべりながらこちらを見ている写真は一転してじっと見つめてくる表情になっていて、かき氷の楽しそうな写真からの変化が印象的でした。

この章だけIvory&Ebony Lightになっているという特徴があり、途中でピンクのハーフパンツはそのままで、上が襟元が四角に開いた黒のタンクトップに変わります。
1枚目が右手で右頬に触れながら膝を抱えて座りこちらを見つめている写真で、一気に大人びたシックな雰囲気になりました。

左からの横顔写真が特に印象的で、肩から上のアップの構図でこちらを見ていて、その目力が凄かったです。
こんなにシリアスな表情にもなるのかと驚きました。

外を歩く写真ではカジュアルでシンプルなサンダルを履いていて、その場面では笑顔を見せていました。
笑うと一転して家の近所を楽しそうに歩く少女の雰囲気になるのが印象的でした。


Ebony Light next summer(sweetroom)
黒のキャミソールワンピースで髪型はゴージャスなお団子で、ロイヤル胎内パークホテルの一室での撮影です。
1枚目は壁に寄りかかってこちらを見ているとてもシックな雰囲気でした。

白いカーテンにくるまって遊んでいる写真があり、そのカーテンを開いて登場する時の顔が印象的でした。
笑顔ですが何だかすまなそうな雰囲気もあり「泣き笑い」の表情にも見え、これも天真爛漫さを彩る良い表情だと思います


(この章の衣装が写真集の裏表紙になっています。)

見開き2ページでベッドに横になってこちらを見る写真が3回ありました。
1回目はシリアスにこちらを見ていて、2回目はやや魅惑的に見ていました。
3回目は何とも言えない表情をしていて、表情がないように見えてその顔は何かを言おうとしているように見え、こちらの心の奥底を覗き込むような目が印象的でした。

寝そべった状態でカメラから視線を外した写真が印象的で、どこか寂しさを感じました。
同じ雰囲気の写真がたまに登場していて、私は良いと思います。

ベッドにダイビングする写真もあり、連続のコマ送りのような撮り方をしていました。
とても楽しそうにダイビングしていてこちらも楽しくなります

ベッドに寝ているのを横から撮る構図で、ここでも全く別人なのではという雰囲気の写真がありました。
無邪気さとは対極のシリアスな雰囲気で、黒い衣装がその雰囲気を一際引き立てていると思います。


Ebony Light next summer(sunset)
最後は黒のへそ出しのトップスに黒のショートパンツで、黒のシースルーの薔薇の刺繍入り羽織ものを羽織っていました。
髪はナチュラルなストレートですが前髪を分けているので雰囲気が変わり、大人な雰囲気に見えました。

砂浜で海を背後に左斜め前からの構図で、長谷川玲奈さんが左斜め上を見上げている全身写真がとても良かったです。
夕方の時間帯で景色はセピア色のようになっていて、もの悲しくもありますが美しさを感じます。
写真全体の構図も良く、下側は砂浜、真ん中は海、上側は空で、それぞれのセピア系色が良いグラデーションになっていました

写真集の冒頭と最後がどちらも浜辺での撮影なのは印象的でした。
冒頭は白の衣装で朝の浜辺でしたが最後は黒の衣装で夕方の浜辺で、対極になっています。

背後からの構図で長谷川玲奈さんが海を見ている写真も印象的でした。
広大な海に長谷川玲奈さんの可能性が無限に広がっているように見えました。

海で水浴びをしているのがとても楽しそうで、楽しそうな表情がとても生き生きする人だと思います
海に向かって水切りの石を投げる連続写真も楽しそうに笑いながら投げていました。

浜辺で体育座り(三角座り)を崩した状態で左腕を左脚に載せて遠くを眺めている写真が良く、ストレートの髪が風でなびき表情にも風格があり、大人の顔だと思いました。
やや濡れ髪状態で右横からの上半身アップの構図でこちらを見つめている写真も良く、しっとりとした雰囲気で本当に表情が多彩だと思いました。

最後は正座を崩した座り方で両手を前についてこちらを見ている写真でした。
最後の1枚を長谷川玲奈さんの特徴である生き生きとした笑顔にしなかったのは印象的でした。
表情を見ると無邪気さやもの悲しさ、楽しさなどがないまぜになった、「浜辺で遊んでいてふとこちらを見て、何かを言おうとしている一瞬を収めた写真」のように見えました。
後ろから打ち寄せる波の雰囲気ともよく合っていて、この写真集がまだまだ続くのではと思わせてくれる良い終わり方だと思いました


巻末のインタビューでは、母親に「自分がされてイヤなことを人にしてはいけない」と言われて育ったとあったのが印象的でした。
長谷川玲奈さんの上杉謙信を思わせるような立ち居振る舞いを形作ったのではと思います。
事務所がサポートをしてくれて声優のレッスンをたくさん受けることができたとあり、良い事務所に入れて良かったと思いました。
マルチに活動できる声優になりたいとも語っていて、もしかしたらこの先舞台に登場したりすることもあるかも知れないと思い楽しみになりました。
そして「あなたにとっての永遠の光でありたい」という言葉が印象的で、ずっと輝き続けるという決意表明にも見えました。


終わりに
「一瞬の光」には興味深い特徴があり、Ivory Lightの章には「last summer」、Ebony Lightの章には「next summer」というタイトルが付いています。
last summerは過ぎて行った夏のことなので、明るさや無邪気さといったこれまでの等身大の自身を表現し、next summerはこれからの夏のことなので、シックな大人の雰囲気になった自身を表現しているのかなと思いました。
そして一つだけあった「this summer」は今年の夏(今)で、Ivory LightとEbony Lightが両方あったことから、今は無邪気さと大人っぽさが混在しているということではと思います。
タイトルが示すように、10代後半の青春時代は一瞬で過ぎて行きます。
写真集を通してそんな一瞬の中に居る長谷川玲奈さんの様々な姿を見ることが出来て嬉しく、またこれから先の歩みで新たな一瞬の光を見せてくれるのも楽しみにしています



-----長谷川玲奈さん登場作品の記事-----
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「海辺の街でもう一度、あの日の彼女に会えたなら 〜Hanabi〜」


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「サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」」(ピアニスト:森嶋奏帆)

2020-09-05 16:47:08 | ウェブ日記


(森嶋奏帆さん。写真はネットより)

今回ご紹介するのは「サン=サーンス ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」」(ピアニスト:森嶋奏帆)です。

-----曲調&感想-----
フランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスの曲の演奏を、私は2018年12月の「エリザベト音楽大学 フルートオーケストラ 第30回記念演奏会」で初めて聴きました。
その時に聴いたのは「動物の謝肉祭」という曲で、演奏とナレーションが交互に進む変わった曲でもあったことから、作曲者に興味を持ちました。
どんな人物なのか調べてみると、勲章も受章して葬儀が「国葬」で行われたほどの物凄く偉大な人だということが分かりました。
また、エリザベト音楽大学では2016年にサン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」が演奏されたことを知り、どんな曲なのか興味を持ちました。
一番最初に聴いた森嶋奏帆さんというピアニストによる演奏が良かったので、その演奏動画を元にご紹介します。


(ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」。ピアニスト:森嶋奏帆さん、オーケストラ:洗足学園ニューフィルハーモニック管弦楽団)


曲全体の印象

とても爽やかな曲です
音色に清涼感があり、暑い時期にBGMとして流しておけば風鈴代わりになる曲だと思います
サン=サーンスがエジプト滞在中に作曲し、曲調にも随所にエジプトのアラビアンな雰囲気が見られます。
また「エジプト風」という愛称が付いていて、その愛称のとおり風が吹いているような音色が特に印象的で、派手さよりも「流れるような美しさ」で魅了する曲です



第1楽章(~13:07)

冒頭、ピアノのとても可憐で優しく美しい音色で始まります。
クラシック音楽で「主題」と呼ばれるメロディで、しばらくするとまた登場する、その楽章の中心となるメロディです。
ピアノに続いてヴァイオリンも主題演奏をし、こちらは特にフワッ、フワッと風がそよいでいるように聴こえます
美しさが前面に出た音色がしばらく続きます。

オーボエ、ファゴット、クラリネット、フルートの管楽器によるアラビアンな響きの演奏があります。
それを合図にピアノ中心の高音のゆったりとした演奏になります。
何かの物思いにふけっているようにも聴こえ、安らぎとともに少し寂しさを感じるのが印象的です。

ピアノが「タン、タタタ、タン」と華麗に舞踏を舞っているかのような雰囲気の演奏をします。
その後束の間、力強く情熱的な演奏になり、「華麗に舞踏」から「情熱のステップ」に変わった印象を受けます。

やがて冒頭の主題の演奏がもう一度登場します。
今度は演奏の仕方を変え、フルートを中心に管楽器が牽引し、ヴァイオリンを中心に弦楽器が呼応し、ピアノは伴奏のような演奏になります。
そこからピアノが主旋律、管楽器と弦楽器が伴奏のような演奏に回って主題演奏を繰り返していて、これらの変化によって冒頭の時よりも音色が多彩に聴こえます。

全体が管楽器を中心に少し物憂げでミステリアスな音色になります。
ピアノはしばらく「ポロロロロー」という風のそよぎのような演奏をしていき、その音色の中に濃淡があり風の吹き方が変わっています。

最後はそよいでいた風が止むかのように優しくそっと終わります。



第2楽章(13:24~25:34)

迫力とミステリアスさ、さらにはドラマチックさもある音色で始まります。
ピアノの音色が高音からどんどん下がって行くところがミステリアスさを増していて良いと思います

やがて淡い雰囲気で夢見心地のような、静かな音色になります。
その時のピアノの音色がまるで静かに木琴でも叩いているように聴こえるのが印象的です。
しばらくの間、ミステリアスさが顔を覗かせながら静かな音色が中心になります。

曲全体の中でも特に良い音色になる場面を迎えます。
穏やかに風が吹いているような爽やかで優しい音色で、気持ちが安らぎます。
同じ音色をピアノ中心、ヴァイオリン中心、ピアノ中心の順に演奏して行き、その次のヴァイオリン中心の時に一番雄大で良い音色になります
高音がとても綺麗で、風がフワーッと吹き抜けて行くようです。
気持ちを爽やかに、そして明るくさせてくれる音色だと思います。

圧倒的な爽やかさの余韻に浸るような音色の後、また静かめでミステリアスさの漂う音色になります。
ヴァイオリンを中心に弦楽器が小刻みな演奏をしてミステリアスさを際立たせます。
そのミステリアスな雰囲気のまま、静かに第2楽章が終わります。



第3楽章(25:37~31:29)

ピアノの明るくスピードのある演奏で始まります。
そこからさらに明るくなり、陽気で楽しそうな雰囲気の音色です

弾むようなリズミカルさが特徴の主題の音色が登場します。
「タッタッタータ タータタタッタッター」のリズムが特に印象的です。
最初はピアノがそのリズムを演奏しますが、その次にフルートなどの管楽器が演奏する時、ピアノはハープを高速で奏でているような柔らかい音色で伴奏をしていて、その雰囲気が良いと思いました。

「蛇使い」が思い浮かぶようなアラビアンな音色になります。
オーボエが大活躍していて、フルートなどに比べるとくぐもった響きの音色がアラビアンな雰囲気を出すのに向いている楽器だと思います。

曲の終わりが近付き、主題が再び演奏される場面を迎えます。
管楽器が次々とリズミカルに演奏をして行き、その最後をピアノが引き取って、ピアノで主題演奏をします。
ピアノの後はヴァイオリンなどの弦楽器を中心に大音量での主題演奏になり、迫力が凄いです

最後は大迫力の中、「タッ、タッ、タッ!!」で突然切るように終わるのが印象的です。
終盤で吹いた強い風がピタッと止むのが表現されているように思います。


サン=サーンスのピアノ協奏曲第5番「エジプト風」はまだ生演奏を聴いたことはないです。
派手な音色や迫力のある音色になる場面が少なくても魅了される音色の美しさが印象的で、もしこの曲が演奏されるとなればぜひ聴きに行きたいです。
きっと演奏会場に爽やかな音色の風が吹き、聴いている人もとても爽やかな気持ちになるのではと思います。
いずれどこかの演奏会で聴けることを楽しみにしています



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