塩田千春 精神の呼吸

2008年07月30日 | アート

さて、中之島の国立国際美術館では「塩田千春 精神の呼吸」展と常設展の「コレクション2 石内都/宮本隆司」が「モディリアーニ展」と同時開催されていた。

先週、新聞のアート欄で「塩田千春 精神の呼吸」展が取り上げられていた。「大陸を越えて」という作品のために靴の提供を呼びかけたところ、約2千足集まったそうだ。この「大陸を越えて」という作品はヴェルリン、ポーランドでも展示されたが(作品名「DNAからの対話」)、これほど集まったことはかつてなかったという。「靴を赤い糸で結んでその記憶の中心になるものを探って行こう、不在の中で語り続けている靴の記憶の凄みを見てもらおう」というのが作品のテーマだとか。
http://www.nmao.go.jp/japanese/home_popup/shiota/shiota_message.html

これは是非、その作品に接したい、見てみたいというのが、今回「モディリアーニ展」を見に行く動機でもあった。

国立国際美術館は1階がエントランスのみでエスカレーター、またはエレベーターで地下1階に降り、地下1階のエントランス・ホールから展示場になっている地下2階の常設展、地下3階のメインホールへと降りてゆく構造になっている。所蔵作品は現代アートの作品が多い。今回の夏の展覧会では地下3階が「モディリアーニ展」、地下2階の展示室で「塩田千春 精神の呼吸」展と常設展の「コレクション2 石内都/宮本隆司」が開催されている。
http://www.nmao.go.jp/japanese/kannai.html

そんなわけでチケットを買って、美術館の中に入ってエスカレーターで降りてゆくと、地下2階の展示室入口が見渡せる。そこで僕が見たのは、赤い糸が放射状に広がって無数の靴と繋がっている作品「大陸を越えて」だ。それは正に衝撃的な一瞬だった。見るものを圧倒する作品で、目が釘付けとなり、どうしようもなくて僕はそのまま赤い糸と靴をただ見続けることになった。



●DNAからの対話(2004年)
国立国際美術館のオフィシャル・サイトからポーランドでの展示風景。
http://www.nmao.go.jp/japanese/chiharu_shiota/works/index.html

赤い糸が壁の一点から放射状に広がって無数の靴と繋がっていた。それは情念を感じさせてどこか不気味だった。靴には提供した人のコメントが添えられていた。「学生の頃にクラブ活動で使っていた思い出の靴」だとか、「こどもが3歳くらいのときに海外旅行に連れて行って旅先で買ってやったくつ」だとか、あるいは「僕には今では重すぎる靴です」との74歳の男性からのコメントが堅牢なウィングチップに添えられていたりした。それぞれにいろいろな思いがあった。懐かしさだけでなく、ときには悲しさといった思いも綴られていた。実に様々な靴があった。こんなふうに靴が作品となるなら僕も靴を提供したかったという思いに駆られた。

塩田千春の作品はほかに「皮膚からの記憶」、「眠りの間に」、「絵になること」、「落ちる砂」、「トラウマ/日常」が展示されていた。

巨大なドレスが泥で汚れている「皮膚からの記憶」もよかったが、20数台のベッドに糸が張り巡らされて巨大なクモの巣の中にいるような感覚になる「眠りの間に」も素晴らしかった。現代アートを主に収集している美術館ならではの展覧会だと思った。

常設展の「コレクション2 石内都/宮本隆司」は塩田千春の作品とどこかリンクしているようでおもしろかった。石内都の作品「傷跡」は1月に「30年分のコレクション」展で見て、強烈な印象が残っていたので今回また見られてよかった。
http://blog.goo.ne.jp/sitedoi/e/daecd04137cbc2b96467726189bda8b2

今回はじめて見た「1906-to the skin」という作品群にも同様の印象を持った。深い皺、ひび割れた肌、実際の人間の身体の一部を撮影したものだが、まるで彫刻作品のようだった。経年褪色した感じの重い色調が素晴らしかった。

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