去年の7月から大本山永平寺の『傘松』という雑誌に「環境問題と心の成長」というタイトルで2年間の連載をしているのですが、昨日の夜、2年目に入った13回目の原稿のために、北極の氷の状態についてネット検索してみて、改めて「うーむ、こんなに進んでいるのか」と驚きました。
「衛星画像&データ 地球が見える」というサイトの去年9月28日の記事には、「北極の海をおおう氷は、今年過去に例のない速度で減少を続け、最小面積の記録を更新し続けてきましたが……今年2007年9月24日に記録された425.5万平方キロメートルが衛星の観測史上最小面積の記録となりました。以前最小面積を記録した2005年……に比べ日本列島約2・8個分の氷が消失したことになります」とありました。
ところが、今年6月28日のCNNのニュースでは、「地球温暖化の影響で北極の氷は今年の夏、9月までに消滅する可能性が非常に高いと、米国の研究者が警告した。……米国立雪氷データセンターの研究者マーク・セリーズ博士によると……数年前までは、夏に北極の氷が消滅するのは2050年から2100年ごろと考えられていた。最近ではこの予測が2030年ごろと見直されたが、現実にはこれを上回る速度で氷が減少していると指摘している。……現在の状況が続けば、北極から氷が消滅することは避けられないという」とのことです。
つまり北極の氷は、去年は「観測史上最少」で、今年は「消滅」つまりゼロ、これ以下はないという「観測史上最少」になるかもしれないのです。
「一事が万事」ということばがありますが、この一事を見ただけでも、地球全体としての環境問題がどのくらい緊急事態にあるか想像できるはずだと思うのですが、洞爺湖サミットで議長国日本を含め世界22カ国の首脳は、緊急事態にふさわしい緊急行動をする合意・決断をしたとは見えません。「待ったなし」と口では言いながら、行動は「待った・先延ばし」です。
なぜ緊急対応ができないんでしょう?
先進国の首脳からは、環境問題の深刻さに関する発言のニュアンスの差はあっても、「経済成長を制限しても環境問題に取り組むべきだ」という発言は聞こえてきません。
そして新興諸国の首脳も、「先進国並みの経済成長をすることは自分たちの権利だ。環境問題は先に起こした責任のある先進国が取り組むべきだ」と主張するのみで、「我が国の経済成長をある程度制限してでも環境問題に取り組みたい」という発言は私の知るかぎりでは皆無だったようです。
それは、先進か新興かを問わず、リーダーたちが、経済成長という「国益」は譲れないものだ、つまり「国益優先」という価値観を強く抱いているからではないでしょうか。
「国益に反しない範囲で環境問題にも取り組む」というのが、彼らの基本姿勢のようです。
特にG8首脳に関していえば、環境の危機、とりわけ気候変動・温暖化に関する警告を発している代表的な組織IPCCが訳せば「気候変動に関する政府間パネル」であるように、政府関連の公式機関がデータを提示しているのですから、各国の政府首脳である人々は、情報がない・知らない、だから緊急度を認識できていない、だから緊急対応ができない、ということではありえません。
そうではなく、データが提供されてもそれを読み取る心が、経済成長という国益は絶対にゆずれないという価値観で枠付けられているため、さらには賢く振舞えば環境が許容する範囲の経済成長は可能だという英知を得ていないために、自分たちの価値観や思い込みに反するデータは、たとえ目にしても、十分理解しないでスクリーニングしてしまうのだと思われます。
わかりやすくいえば、「人は事実であっても見たくないものは見ようとしないものだ」ということです。
しかし私たちは、大きな方向性はすでに確認しているので、ちゃんと見て、適切な行動をしていきましょう。
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