大和町吉田地区西部、細い車道をゆるやかに下って行くと、ヤナギやハンノキが茂る湿地
があちこちに広がっています。その付近には立て看板があって、「防衛省施設局」の管理
地であることを示しています。
この辺りにはかつて嘉太神集落があって、農家や田畑が広がっていましたが、平成10年頃
に麓の三峰地区に集団移転していきました。
隣接する陸上自衛隊王城寺原演習場が、沖縄米軍の実弾射撃訓練を受入れたことで、その
砲撃音対策の一環での集団移転だったと記憶しています。
かつての畦道から湿地に入って行くと、西側の山裾まで70~80mあって、そこにはコバイ
ケイソウやウバユリの新芽が出始めています。
岸辺から湿地の中を見渡していると、浅い水に浸るかのように何かの新芽が生えています。
湿地に踏み込むと少しぬかるみますが、その新芽の辺りまでは入れそうで、傍で観察する
とミズバショウの新芽と判りました。
二枚とも2020.3.19撮影
ミズバショウには太く長い根茎があって、これを四方に伸ばして株を増やします。
秋には根茎から越冬芽が生じているようで、それが春になると写真のように地上に伸び始
めるのでしょう。その後花茎を伸ばして白い花を咲かせますが、これは苞(ほう)が変形し
たもので仏炎苞と呼ばれます。本当の花は仏炎苞に包まれた、地味な肉穂花序です。
花を咲かせた後には葉が急速に伸びて、長さは80cmにもなります。
2020.3.19撮影
サトイモ科ミズバショウ属の多年草で、北海道~近畿以北の本州に分布し、草丈は80cm。
冷涼な湿地や池沼、河川沿いなどの泥土に自生し、しばしば群生する。
根茎は多肉質で太く、これを四方に伸ばして繁茂、多数のひげ根がある。
早春、越冬芽が展開すると、各葉腋から数本の花茎を地上に出す。
葉は花後に急速に生長し、葉身は長楕円形~長楕円状披針形でさ40~100cm、全縁。
中央脈は明瞭、青緑色を帯び、ときに暗緑色の横班が散在する。
花期は4~5月で、高さ10~30cmの花柄を立てて、花茎を包む白い仏炎苞を出す。中に
円筒状の肉穂花序が付き、表面は淡緑色で、菱形の両性花を150~550個密生する。
花は長楕円形で長さ2~3mm、花被片4個、雄しべ4個で葯は卵形、花粉は黄色。
子房はふつう2室あり、1個ずつ胚珠を含む。
花後、花序は緑色になり、伸張して長さ15cm、直径5cmほどになって下方に曲がる。
果実は液果で、緑色に熟す。
種子は偏円形で褐色、長径5~6.5mm、寒天質に包まれ、落下すると水流で散布される。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます