白樺小舎便り(しらかばごやだより)

北信濃の田舎暮らしの日々

太古の原生林の中をひとり  佐武流山

2016年08月16日 10時19分53秒 | 登山

月15日。終戦記念日。

認めたくない御仁もいるようだが、日本が無謀な侵略戦争に敗北した日。

真田丸の、秀吉による朝鮮出兵の失敗と重なる。

日本が再び右傾化し、おろかな過ちを繰り返さないよう願いながら、信州の秘境、秋山郷に出かけた。

長い間、心惹かれながら、ついに訪れる機会がなかった山。

『信州側の里からも、谷からも、どこからも見えない。里の人には、全然確認されない幻の山』と、信州百名山の著者、清水栄一氏は書く。

その山の名前は佐武流山。さぶるやま、またはさぶりゅうやまと読む。

秘境秋山郷のさらに奥に登山口はある。

平家の落ち武者の里と言われる秋山郷は、確かに人里から遠く離れた、谷の奥にあり、こんな奥深いところに人が住めるのかと思うほどだ。

飢饉で、幾つかのが消えた悲しい歴史もある。

もう、何年も前に、この谷の両側にある、鳥甲(とりかぶと)山と苗場山には登った。

だが、佐武流山はもっと奥深くにある。栄村の最高峰でもある。

かつては、マタギの踏み後くらいの路しかなくて、登るのがとても困難な山とされていた。

何年か前、有志のボランティアによって、登山道が整備された。

『熊くらいしかいないのだから、せめてお盆の頃なら、もしかすればほかの登山者がいるかもしれないから』

かみさんの許可が出たので、朝5時前に出発。

登山口まで2時間半。

7時15分に登山届を書いて、ドロの木平を出発。

 

 

林の中を、熊鈴を大きく響かせながら歩く。

 

白樺の林が美しい。

 

 

林を抜けると長い林道歩きが待っている。

 

 

この山域には面白いネーミングが多い。

この岩は月夜立岩という名が付いている。

もう少しで林道歩きも終わる。

 

 

 

ここから、本格的な登山道が始まる。

檜俣川まで下る。

 

 

 

渡渉点にはロープが張られていた。

靴を脱いで、はだしで渡った。

ここから地獄の急坂が待っていた。

それでも、標高1200メートル台からぐいぐい高度を稼いで登って行った。

 

 

 

花々が迎えてくれる。

 

 

クワガタも迎えてくれる。

このクワガタは、僕の地方では見たことがない。

新種なのだろうか、それとも太古の原生林に住む古代種なのだろうか。

 

 

 

この名前も何や曰くがありそうな、物思平に到着。

ここで5分ほどの休憩。

まだまだ急坂が続く。

 

 

この辺りまで来ると、周りの山々の奥深さが一層感じられる。

山の向こうに、また山。その向こうに谷を挟んでまた山。

太古の山々の姿を独り占め。結局、今日山に入っているのは僕だけのようだ。

 

 

苗場山への分岐。ここまで来ても、佐武流山は神秘のベールに包まれたままだ。

 

 

 

坊主平。緊急時のビバーク可能地点。

 

 

10時20分。3時間5分をかけてようやく山頂に到着。

標高2192メートル。ここから、白砂山に続く路が、ある、はずなのだが、藪が深くて、とても歩く気にはなれない。

余りに山が多くて、山の名前を同定することができない。まあ、いいか。

気になって、どれくらいの時が流れたのだろう。

信州百名山は、これで68座目となった。

来た道を戻って、13時に登山口に戻った。

 

 

帰り着いて、水場で冷たい水をたくさん飲んだ。

帰路、飯山湯滝温泉に立ち寄り、手足を伸ばした。

このところ、かみさんや、義姉の同行登山で、思い切り汗を流す登山をしてこなかった。

たまには、独りで山に行くことも必要なのだと、外湯に浸かって千曲川を眺めながら思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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2 コメント

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Unknown (錫杖)
2016-08-16 13:54:00
奥峰に登られたのですね。

わたしも5年前にアタックしてます。
3時間5分 とんでもない早さですよ

わたしも記憶を辿ってみたら3時間50分

信州100名山は素晴らしいと思います。


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北アルプスより難しい (nob)
2016-08-16 20:08:18
あまり人の入らない山というのは、とてもいいのですが、北アルプスよりも難度が高い気がします。それにしても、こんなマイナーな山でも先に登って知っている人がいるというのはうれしいものですね。林道はほとんど走りましたので、まあこんなものだと思います。
錫杖さんのような写真が撮れないものかと、少し羨んでおります。
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